治らなかった症例

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 過去には劇的に治った症例を書きましたが、治療の中ではよくならなかった症例も多いです。

 今回はその中でも他にもやりようがなかったかを考えるために書いてみたいと思います。

 

 患者さんの細かいことは忘れてしまいましたが、確か骨盤内手術をした60代の男性で、元気な方でした。

 

 骨盤内手術後に陰部の不快感が生じてしまい、いつも排尿をしたい感じが続いて辛いということでした。手術した病院で話をしたところ、神経にも問題が生じていないし、原因も今後に改善するかも分からないということでした。

 

 人間の身体については全て解明されている訳ではないですし、ちょっとした変化で痛み、しびれ、不快感が生じてしまう場合もあるので、手術が原因なのかというのもはっきりとはしないので、病院の分からないという言葉は適切なのですが、患者さんはよくならないかもと感じてしまい、精神的に辛かったようです。

 

 手術後に生じたので、原因が手術かどうかは分からなくても、手術をしたからだと思うのは当たり前ですし、平均余命からしたら20年近くも感じ続けると考えると辛い状況ですよね。

 

 患者さんと話をしているなかで、とにかく陰部不快感を改善して欲しいと強く訴えていました。

 

 肩こりなどでは似ている症状などもあるし、多くの方が来院するので慣れていますが、こういった症例は対応したことがないので、完全によくなるかは分からないけど、少しは軽減する可能性があるかもと伝えました。

 

 今から考えれば、継続して治療を続けていたら、改善したかもしれないかなという思いと、改善しなかったら申し訳ないしなという思いは今もあります。

 

 その患者さんの治療は3回やらせてもらったのですが、劇的な改善はありませんでした。

 

 最初の治療は、尿と関係をしているので、東洋医学的には腎で考え、骨盤内に異常が出ているので、下腹部と仙骨はみていかないと考えて治療をしました。

 

 治療直後の状態は10だった不快感が6程度まで改善をしたということで、治療は終わりにして様子をみるということして、2回目に来院したときに、治療後の経過を聞いてみました。

 

 患者さんが言うには、治療後はよいかもという感じがしたようですが、変化はないということでした。よいかもという状態がどのぐらい続いたのかについてを確認しようと思っていたのですが、治っていないという結果と夜にも起きないという状態が続いているからか、やや怒りを露わにしながら変わっていないという断定の言葉が出てきてしまいました。

 

 問診の仕方によっては、情報を聞き出せたのではないかという思いもあったのですが、感情的になってしまった場合は落ち着くまでは話を聞き出すことが出来ないので、先に治療に入ることにして、治療をしながら質問を変えながら状況確認しました。

 

 どうやら、10が6に改善した感じがあったけど、その日のうちに8ぐらいには戻ったのかなという感じがあり、次の日には効果が分からなくなったようでした。

 

 10と6なら違いが分かることが多いですが、10と8では違いが分かりにくいので、その後に9になったとしてもいつかがつかめていないようでした。

 

 今であれば、主訴以外の症状や身体の状態もしっかりと理解してもらっていれば分かるようになったかなと考えるのですが、身体の感覚は鍛えるのに時間がかかるので、もう少ししっかりと誘導するべきだったのかなと思っています。

 

 2回目の治療が終わり、前回よりも刺激量も増やしたのですが、同じように6ぐらいということでした。6だと前回と同じなので、患者さんからしてみたら、また同じだと感じたらしく、1回目の治療後よりも元気がない状態でした。

 

 今から考えれば、この時には諦めが出てしまっていたのでしょうね。

 

 3回目に治療に来た時には、もう諦めが出てきてしまって、最初から変わりませんという言葉が出てきて、他の情報を得られませんでした。

 

 身体を触った感じでは、微妙な変化は出ていたので、本当に少しでも改善があったのではないかという思いがあったのですが、信頼関係が崩れてしまった以上、情報を言葉として得られませんでしたね。

 

 3回目が終了した時点で恐らく6ぐらいだったのでしょうが、6では変わらないという思いがあったようで、治療後は変わりませんという言葉で終わりました。

 

 もちろん、治療後に予約を取ることもなく終わったので、これが最後の治療になったのですが、もう少し何か出来なかったのかを考えることになりましたね。

 

 原因不明で数ヶ月生じていた症状なので、もう少しは治療を続けないと効果がなかったのではないかと思っているのですが、この症例での大きな失敗は治療だけではなく信頼関係の構築が足らなかったのだなと思います。

 

 どうやったら、信頼関係をより強固に作れるのかは、自分の技術と会話で作っていくしかないので、話をよく聞くのと同時に、身体が変わっていく過程をしっかりと説明をしておくのが重要だったのではないかと思います。

 

 例えば、1回目で確認した圧痛が2回目でも出ていなければ、治療の効果が続いている可能性があると伝えられたのかなと思います。その時もやっていたと思っていたのですが、伝わってなかったのでしょうね。

 

 結論としてはすぐに治らなかったというのが問題なのですが、人間の身体は部品を変える訳にはいかないので、もう少しやりようと言い様がなかったのかなと考え続けています。

 

 今回は病態自体が難しい症例でもあるのですが、腰痛、肩こりなどでもよくった症例、よくならなかった症例はあります。

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