鍼1本で全身治療が可能です

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 東洋医学では様々な治療がありますが、東洋医学の考え方では基本的には鍼1本で全身を治療することが可能です。

 東洋医学の考えでは、生きているという状態は、身体があるということだけではなく、心と身体が統一体として存在するとしています。そして人が存在するというのは気によって成り立っていると考えています。気に関する話はこちらのブログも参考にしてみてください。

「だから気って何だよ」

「気は見えるのか」

「気には分類がある」

「生命現象と気―気の作用」

 

人の生命を考えるときには、気であると言えますが気ということだけだとイメージがつかないのですよね。そこで人の生命現象を一つの池として考えてもらいます。ちょっと強引になるのですが、頑張ってイメージをしてみてください。

 

 その池は湧水と雨水によって成り立っていると考えてもらうと一人の人間と考えることができます。何故、湧水と雨水が必要かというと、水は循環をさせていないと腐ってしまうので、水が出たり入ったりするという状況が必要になります。

 

 水の中には、小さな魚が泳いでいると考えてもらうと、この池が人の生命として考えられます。人という存在は、精神や身体の臓器によって成り立っているので、中の物が無くなってしまえば、それは人という形だけになってしまうので、人として成り立たなくなります。

 

 人の治療をするときには、症状が出ている場所だけを使うことも可能ですが、魚もいる池が人としての本質になるので、どこかに刺激を入れれば、その波紋が他の部位にまで波及をしていきます。バケツなどに水を入れて、石を水の中に落とせば、表面には目に見える波紋が広がり、石という刺激は水の底まで到達します。

 

 鍼の治療も同じで、身体のどこかのツボに鍼をすると、その刺激は波紋のように全身に広がっていくと考えられます。どのように伝わるのかというと実態としては見えないのですが、伝わる経路として経絡と考えることができます。

 

 経絡は身体の中にある臓腑と繋がり、経絡同士は全て繋がっているので、一つのツボ刺激は全身隅々まで波及していくと考えます。もちろん、全てが見えるものではないので、どこまで伝わっているかという波紋として見ることは出来ないので、響きという感覚や症状の変化で確認をしていくことになります。鍼の響きはよく聞く言葉なのですが、意味が分かりにくいものになるので、過去のブログの中で何回か書いています。

「鍼の響きは何か?」

「鍼のひびきとは?」

「鍼の響きが出る深さ」

 

 これが鍼1本で全身を治療できると言う考え方になるのですが、1本で完璧な効果を出すというのは非常に難しいことですし、誰でもすぐに出来るのかというと難しいと言えますね。ただ、どんな人の治療でも1本でも鍼をしたら、何かしらの影響が身体のどこかに発生をしているはずなので、そういう見落としをしないようにしていくと、1本の鍼の効果がよく分ると思います。

 

 1本の鍼で全てが治るのであればそれでもいいのでしょうが、大きく変化を出すと言うときには足りないのではないかと言えますね。たとえば、先ほどの話で出てきた池で考えてもらうと、小さな石を1つだけ入れた場合よりも大きな石や複数の石の方が大きな変化が起こるのは確実ですね。

 

 例えば、池の中の1匹の魚が問題だとしたら、その魚に石を当てようとしてもなかなか当たらないですよね。池の水を全部出してしまってから、問題の魚を捕まえるという方法は道具などの技術が必要になるので、現代医学的な考え方になるとも言えますね。

 

 鍼治療では1本の鍼で治療を行う人や場合もありますが、効率などを考えると、1本よりは多い鍼の数を使うことが多いです。

 

 1本の鍼を使って治療するという考え方には、1本の鍼を使って全身の刺激をしていくという考え方をすることもできるのですが、現在の鍼はディスポーザブルであり、一度でも身体に触れてしまったら廃棄をするので、1本の鍼で全身に行っていくのはリスク管理の面からは止めた方がいいと思います。

 

 接触でしか鍼を使わないというのであれば、ディスポーザブルの概念からすると、鍉鍼を使った方がいいのだろうなと思います。鍉鍼や刺さない鍼である接触鍼に関しては過去のブログでも書いているので参考にしてみてください。

「てい鍼(鍉鍼)を治療で上手く使うコツ」

「刺す技術と刺さない技術―治療効果が違う」

 

 私は鍉鍼での治療をするときもありますし、少数の鍼で治療をすることもありますが、1本の鍼だけというのは、ほとんどやっていません。1本の鍼でも治るという可能性はあると思っていますが、扱うには、余程の技術か信頼関係が必要だろうなと思っています。

 

 1本の鍼治療をするところに行ったという人を治療することがありますが、そういう方は、そこには二度と通っていないので、合う人も合わない人もいるのが当然だなという気持ちもあります。人の身体の治療で100%の正解はないので、自分と患者さんの身体の中での正解を探していきたいと思っています。

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