運動鍼(うんどうしん)は運鍼(うんしん)とも言われる方法ですが、特殊な鍼を使わずに、簡単にできる方法なので多くの鍼灸師が治療として使っていますが、いろいろな人の話を聞いてみると危険なこともあるので、どういったものなのかを書いてみたいと思います。
運動鍼が対応になるのは運動器疾患であり、首肩こり、腰痛に対しても使っていくことが出来る方法なので、治療時間がない時にも使えるし、仕上げの一つとしても使えるので絶対に身につけたい治療方法になります。ただし、用語としても技術としても統一されているものがないので、やり方としてまとめていきます。
運動鍼と呼ぶ定義を考えてみると、鍼をして動かすというのは全て運動鍼と呼ばれると考えて間違いがないと思います。それだけ?と思う人がいるかもしれないですが、本当にそれだけなのです。
鍼を刺して動かすというだけなのですが、どれぐらい刺入をするのか、どこに行うのかという点が人によっても大きく違ってきます。
刺入に関してですが、浅い物と深いもので分けられます。浅いやり方は接触と切皮程度になります。深いやり方は、切皮後に刺入をしていくもの全てです。
運動鍼は、鍼をして動かすという方法なので、浅いやり方である接触と切皮程度であれば動かしても問題が生じることは少なく、低リスクで高リターンになるので、私はこちらのやり方で使っています。ただ、切皮で痛みがある場合や動かすと痛みがある場合は、場所を変えた方がいいので、痛みが出ないかを確認しておくことが必要になります。
深いやり方は、話に聞くことはあるのですが、私は使っていません。理由としては、鍼を刺入した状態で身体を動かせば、鍼が筋層に入っているので曲がることが当たり前になってしまうので、抜鍼困難な状態を発生させてしまうだけではなく、場合によっては折鍼してしまう可能性があります。
抜鍼困難になってしまったときに、数分で抜ければまだいい方ですが、何時間もかかってしまう場合があるので治療の中では抜鍼困難を生じないようにすることが大切だと思います。ただし、何が起こるかは分からないので抜鍼困難が生じたときの対処法は知っておいた方がいいので、こちらのブログにまとめてあります。
運動鍼としての使い方ですが、例えば、膝や肩の痛みが全身治療をしても取れなかったときに、痛みが残っている場所や圧痛がある場所に鍼を接触か切皮をします。鍼が刺激をしている状態で動かしてもらうのですが、膝であれば屈伸運動をしてもらったりします。最初は痛みが少し消えたかなというぐらいなのですが、3回ぐらい屈伸運動をすると、痛みが大きく軽減し、完全に消失してしまうことがあります。
接触と切皮でも大きな効果があるところなので、その痛みにとっては効果的な場所とも言えるので、保険として円皮鍼や皮内鍼をその場所に貼付しておくと治療効果が持続することが多いです。円皮鍼や皮内鍼に関してはこちらのブログを参考にしてください。
これが一般的にも使われやい使われやすい方法で非常に簡単な方法ですが、これ以外にも遠隔から行う運動鍼もあります。
例えば、面口は合谷と言われるように顔面の疾患では合谷が使われるので、顎関節症が生じている人に対しては合谷の鍼も効果的になります。ということで、合谷に切皮をしてから顎関節を動かしてもらうと変化が出ることが非常に多いです。
顎関節を動かしているときには合谷は動かしていないので、この場合は刺入をすることが可能なので、遠隔で動きがない場所で運動鍼を行う時は刺入を使うことが多いです。ただし、変則のやり方として、合谷に刺入をして、手を握ったり、開いたりしてもらって、合谷に運動鍼として刺激をいれて、顎関節の痛みを軽減するという方法もあります。
この場合で刺入をしている人もいるようなのですが、先ほども書いたように、動かしている部位に刺入をしていると抜鍼困難や折鍼のリスクがあるので私はやっていませんし、お勧めはしないです。
合わせ技として顎関節症の人がいたら、合谷に刺入をして、顎関節部の痛みがあるところに切皮をして、顎関節を動かしてもらうというのも可能ですが、どちらが効果的だったのか分からなくなるので、一つ一つ行っていく方がお勧めですね。
遠隔を使っていく場合には、経絡、経穴、穴の効果を知っていないといけないので、知識や経験が必要な運動鍼と言えると思います。ただ、難しく考える必要はないので、最低限、経絡の流注を考えることが出来れば、使いこなすことは可能になります。
簡単で症状も劇的に改善をするので資格を取ってすぐにはよく使っていました。何故なら、鍼灸の技術も稚拙なので、全身治療をしてもすっきりとした効果が出ないこともあったので、とりあえず一番辛いところは楽にして帰ってもらいたかったからですね。
絶対に注意をしないといけないのは、ただの切皮で、響きや痛みが無かったとしても、鍼をして身体を動かしてもらうので、身体に対する刺激は強い部類に入るので、脳貧血を起こしてしまうことがあるので、鍼に慣れている人や様子を見ながら行うことが重要になります。
肩コリで痛みがある場合に運動鍼を行うと、痛みのある1点が改善しても、痛みがあるところが他にも出てきてしまうことあり、結果的に何点も行うことになってしまうことがあります。この場合も刺激量が多くなってしまうので、刺激量の管理はとにかく重要になります。
簡単な治療なので、頼りがちになりますし、私自身もよく使っていましたが、最近は運動鍼の出番が少なくなり、1点だけで用いることが多いです。その場合でも遠隔を使うことが多いですね。
使ってみてきた感想としては、運動鍼は伸展時痛には非常に効果的ですが、短縮時痛に対しては、治療効果が少し弱いかなと思っています。
簡単で効果的なので、多くの人に使ってもらいたいと思いますが、脳貧血、抜鍼困難、折鍼は徹底的なリスク管理が重要です。