防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)

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 防風通聖散は金元四大家(きんげんよんたいか)の一人でもある劉完素(りゅうかんそ)によって作られた漢方薬で、現在でもよく使われているものです。

 鍼灸学校を卒業しても漢方の勉強をしないので、漢方薬のことは全く分からなかったのですが、防風通聖散は患者さんから教えてもらった漢方薬になります。その時に教えてもらったのは、「いいダイエット薬があるけど使ってみたら?」という話でした。

 

 ちなみに、私はダイエットの必要がないのに、ダイエットの話を言われた理由がよく分からなかったのですが、ダイエットに漢方薬という話は聞いたことがあっても初めてまともに聞いたので、調べました。その後も何度か聞くことがあったので、知識として定着した漢方薬の一つですね。

 

 中国王朝の金元時代には、東洋医学の考えが成熟をしてくる時期で、その時に有名になって活躍した人たちを金元四大家(きんげんよんたいか)と呼ばれます。時代順で言うと、以下の通りになり、今回の劉完素の生没年は1120~1200年と言われています。

  • 劉完素(りゅうかんそ)
  • 張従正(ちょうじゅうせい)
  • 李東垣(りとうえん)
  • 朱丹渓(しゅたんけい)

 

 劉完素と張従正は外邪が中心と考えるので、治療方針としては似てくるので、劉張医学と言われることがあり、李東垣と朱丹渓は虚が中心と考えるので、治療方針が似てくるので、李朱医学と言われることがあります。治療の考え方としての虚実と外邪に関してはこちらのブログを参考にしてください。

「東洋医学における体調不良の考え方―虚実」

「気候変化と身体の関係」

 

 防風通聖散は八綱弁証では裏実熱証の人に用いる漢方薬なので、瀉法の漢方薬とも言えます。防風通聖散は名前の通り、風に対しての治療効果が強いので、外邪に対して効果的だと言えます。

「八綱弁証とは何か」

 

 外邪が身体の中に停滞をしてしまった場合に使われるので、外邪性の痛み、浮腫み、のぼせに効果があると考えられます。八綱弁証としては裏実熱証になるのですが、外邪には寒邪もあるので、裏実寒証にも対応できると考えられます。

 

 湿邪も外邪の一つであるので、湿邪が停滞して熱化をしてしまった湿熱証にも用いることができるので、肥満の人で湿や湿熱の場合には効果があると言えますが、虚証の人に用いると、熱を取って、水分を取ってしまうので、陽虚や津液不足(陰液不足)を生じてしまうことがあるので、細身の人には使わない方がいいと言えますね。

 

 そう考えると、ダイエット薬として使う場合でも体質分類をしていないと、体調が悪化してしまうことがありますね。防風通聖散が合う人は、太鼓腹で、便秘があり、高血圧、のぼせ、むくみがある人には効果が高いと言えますね。

 

 身体の中にある外邪を排出するのには、汗として出すか、口から出すか、便として出すかになるので、軟便・下痢の傾向がある人に用いてしまうと、軟便・下痢がひどくなってしまうことがあります。

 

 処方には様々な生薬が含まれているのですが、基本は外邪(風邪)を取る物、熱を取るもの、水の停滞を取るもの、脾胃(気血)を補う物という構成になります。

 

 外邪を取り除くときには、消化・排泄機能を高めるのが重要ですが、出すだけにしてしまうと、出すという力として身体の気血を消耗してしまうので、気血を補わないと体力がどんどんと低下をしてしまうのですね。漢方はよく考えて処方を構成しているなと思いますね。

 

 防風通聖散の効果を鍼灸でだそうとしたら、外邪を取り除く、脾胃に対して治療を行うので、経穴としては、陽維脈の外関や風門を使いながら、三陰交や腹部に対して鍼を行うと効果が似るのではないかなと思います。

 

 湿の影響が強いのであれば、脾・胃経を多く使った方がいいでしょうが、熱が強い状態であれば、大椎を使うのも効果的ではないかなと思います。湿の場合は、水と大きく関係をするので、水に関係する、・三焦・膀胱は効果が高くなりますね。

 

 三焦だと委陽も下合穴として使えるので、治療の幅が広がりますね。防風通聖散に戻りますが、寒邪にも使用できるのですが、処方構成から考えると、熱を冷ますものが多いので、熱があるときに用いる方がやはり効果的だと思います。三焦に関しては腑の働きを参考にしてください。

「腑の働き」

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