鍼の治療を受けて、お腹が痛くなるという人がたまにいますが、治療としては良い反応として考えられることが多いです。
もちろん、あまりにも辛くなってしまう場合は問題なのですが、それだけ鍼灸でも身体に変化が起こるということなので、治療する側は相手の状態をしっかりと診ながら治療をしなければいけないと思っています。
私は初めて鍼治療を受けたときは、お腹がグルグルとなり過ぎて、数日の間はかなりの便が出た記憶があります。治療を受け慣れる前までは、お腹がグルグル鳴り過ぎることや、便が出過ぎて仕方がないこと、血行が良くなりすぎたからなのか血管性頭痛が生じることが多かったです。
受け慣れるまではどういう状況になるのかが分からなったので、何でそういう状態になったのかが疑問でしたが、今から考えると、その状態になるのも当然とも言えるのだと理解できるようになりました。
身体の調節は現代医学で考えると、交感神経と副交感神経によって成り立っていて、運動、興奮、集中は交感神経によって成り立っています。副交感神経は、これ以外の状況なので、回復、食事と吸収、リラックスに対応する神経になります。
治療を受けると、初めての治療で極度に緊張をしていれば、交感神経の働きが強くなりますが、多くの人が鍼灸や手技療法を受けているときに、気づかない内に少し寝てしまうことがあります。
この場合は、副交感神経のスイッチが入ることになるので、身体は回復しやすい状態になります。
副交感神経の働きが活発になると、胃酸などの分泌が増えて、内臓の働きが活発になるので、お腹がゴロゴロと鳴って、胃腸の蠕動運動が活発になります。胃腸の働きは消化吸収をすると同時に、入ってきたものを出す働きがあるので、副交感神経の働きが急激に活発になれば、蠕動運動が強くなり、腹痛として感じてしまうことがあると思います。
胃腸の蠕動運動が活発になるということは、腸内にある便の排出を高めるだけではなく、腸内の物を出すことになります。腸内には、飲食物だけではなく、口から入った空気がいくこともあり、食品の発酵や腐敗によってもガスが出てくることになります。以前のブログでも、鍼灸でおならがしたくなることがあるという内容を書きましたが、副交感神経の働きが活発になることによって生じるのです。
治療と身体の関係で言えば、治療中や治療後におならが出るのは当たり前と言えるので、遠慮なくして頂いて結構なのですが、やはりお互いに気になりますよね。その場合は、トイレをご使用して下さいね。
交感神経・副交感神経のスイッチは自然に入れ替わるのですが、緊張状態が続いてしまったときなどは、なかなか眠れないし、食欲が落ちてしまうことがありますが、これは交感神経の緊張が強くなり続けることによって生じています。
自律神経のスイッチが切り替わるのがおかしくなってしまった場合は、治療を行うのが難しいと言われていて、セルフケアとしては、自律訓練法という、一種の暗示をかけるものがあります。これは身体の感覚を意識して、副交感神経が働いているような状態をイメージしていき、身体のスイッチを切り替えるものですが、慣れるまでは大変だと思います。必ずリラックスを出来る状態を作ってから自律訓練法を行います。
自律訓練法
―――訓練法―――
- 手足が重たいと意識をして重くなるのを感じる
- 手足が温かいと意識をして温かくなるのを感じる
- 心臓が静かに打っているのを意識して脈が落ち着くのを感じる
- 楽に呼吸をしているのを意識してゆっくりと長く呼吸をする
- 額が心地よく涼しいと意識をして感覚の変化を感じる
―――復帰(消去)―――
- 両手を強く握ったり開いたりする
- 両手を組んで大きく伸びをする
交感神経の働きが活発になると、血管が収縮をした状態になります。副交感津液が活発になると、血管が拡張するので、身体の血流がよくなることになります。眠たくなってくると手足が温まることが多いですが、これは副交感神経の働きが活発になることによって、体表・末端部まで血流がいき、熱を放散していくことになります。
起きているときは身体を動かさないといけないので、体温を上昇させた状態が続いているのですが、眠るときには体温を下げないといけないので、副交感神経の働きが重要になります。
このため、治療を受けて私は血管性頭痛が生じたのは、頭部へ向かう血流が強くなってしまったことによって、頭痛が生じてしまったと考えられます。
鍼灸治療や手技療法を行うと、こういった自律神経のスイッチの切り替わりが、外部刺激によって行われることになるので、身体に様々な変化が生じると考えていきます。
そのため、鍼灸治療や手技療法を受けると、様々な変化が生じていく可能性があるので、治療者は初めての患者さんへ情報提供をしてあげることが大切ですし、患者さんの方では、身体のスイッチが切り替わったことなのだと理解をしてもらいたいことでもありますね。もちろん、強すぎる変化は身体に取っても、本人に取っても苦痛になることがあるので、どのぐらいの変化があったのかを知るのが、治療に取っても大切になります。