麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)

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 麻黄附子細辛湯は風邪(かぜ)のときにも用いられるものですが、冷えに対しての漢方薬にもなるので幅広く使われることが多いものになります。

 麻黄附子細辛湯と同じような使い方をするものには、桂枝湯がありますが、桂枝湯は寒邪によって身体を障害されてしまった場合に用いる物なので、麻黄附子細辛湯も寒邪に対する治療薬と考えていくことができます。桂枝湯については過去のブログに書いてあるので参考にしてみてください。

「桂枝湯」

 

 八綱弁証で言えば、表実寒証と言うこともできるのですが、表虚寒証と言うこともできる病態に使うのが、この二つの処方です。表実寒証と表虚寒証では全く違う状態ではないかと思うかもしれませんが、何に注目をするかによって八綱弁証が変わります。

 

 寒邪が身体に影響しているということを考えた場合は、身体の外側から寒邪という外邪が影響をして冷えてしまっているという考え方をした場合には、表実寒証になります。

 

 発生している症状や体力を考えた時に、身体が弱っているということが前提になるのであれば、虚であり、原因として身体の外側から寒邪がきたことによって、虚の状態が悪化をしているのであれば表虚寒証として考えることができます。

 

 このように見る視点が変わることで八綱弁証が変わってしまうのはあることなので、違うのが疑問だというのにとらわれないで、どんな身体の状態に使うのかをというのを理解する方が大切だと思います。

 

 桂枝湯と麻黄附子細辛湯の共通するところは虚ということなのですが、虚の状態が強い場合は麻黄附子細辛湯が適応となります。

 

 麻黄附子細辛湯に含まれている附子はトリカブトのことです。トリカブトと同じということは、劇薬でもあり、危険ではないかと思うかもしれませんが、トリカブトに含まれているアコニチンが危険な物質になるのですが、火で炙ることで、毒性を低下させていますが、分類としてはトリカブトが含まれるので劇薬でしょうね。

 

 附子で有名なのは狂言ですね。ある家の主が出かける時に、桶に入っているのは附子だから近づくなという使用人たちに話して出かけるのですが、出かけている間に使用人たちが気になって桶に近づいて、舐めてみたら砂糖で美味しかったので食べきってしまい、主人に言い訳をするために、茶碗や掛け軸を壊して、罰を受けようとして附子を舐めてしまったという話をするのですが、帰宅した主人に追いかけまわされるという演目です。

 

 話がそれてしまいました。麻黄附子細辛では、麻黄(まおう)・附子(ぶし)・細辛(さいしん)が含まれており、3つとも身体を温める働きが強い生薬になります。

 

 古典的には、麻黄附子細辛湯は少陰病の発病初期で表証があるときに用いられるので、治療対象のイメージとしては、虚弱な人、高齢者で発生する風邪(かぜ)症状と言えるのではないでしょうか。

 

 麻黄附子細辛湯は桂枝湯よりも陽の虚が強い場合に用いるものでもあるのですが、陽の虚が強い場合には、他の漢方薬の方が効果的だと言えます。ですから冷えがあって、風邪を引いたという状態が適していると考えられますね。

 

 鍼灸で麻黄附子細辛湯のような効果を出すとなると難しいかなと思うのですが、お灸を使えば温める働きが強くなるので、多くのツボにお灸を使っていけば、麻黄附子細辛湯のような効果が期待できるのではないかと思います。

 

 私も冷えが強くて、風邪っぽくなってきたときには麻黄附子細辛湯を使うことがあります。風邪だったのかどうかが分からないのですが、鼻水が多く出て、冷えがあり、風邪かなと思っていたときに、喉が詰まるように息苦しいときがあったのですが、その時に、麻黄附子細辛湯を飲んだら、喉の苦しさが一気に改善をした経験があります。

 

 飲んで1分ぐらいで、喉が開くような感じが出てきて、苦しさがだんだんと改善をして、5分もかからずに症状が軽減をしたので、漢方は即効性もあるのだなと知ることができましたね。もちろん、たまたまタイミングがよかったのと、証が合ったというのが元でしょうけど、こうやって即効性を感じるようなことがあると、漢方薬の効果を理解できるのだと思います。

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