心と肝の関係

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 身体の中に臓腑があるというのが東洋医学の概念ですが、臓腑は相互に関係をしあって生命機能を成り立たせているので、人体は小自然や小宇宙という表現があります。

 各臓腑の働きが絡みあって身体の機能が成り立っているのですが、全てを説明するのは難しいですし、分かりにくくなるので、今回は心の働き肝の働きの関係について書いてみたいと思います。

 

 心と肝は五行では、火と木であり、木は火の母になるので、相互に影響をしあう関係があるということが分かります。火は炎上という性質があり、木は曲直という性質があり、炎上は上に昇る性質であり、曲直は木々が成長をしていく姿なので火と同じように昇る性質があるので、火と木は同じような働きがあると言えます。

 

 季節で考えたときにも春は木であり、夏は火になるので、非常に近い関係があります。では、生理機能ではどうなるかと言えば、心と肝は両方とも、精神と血に関係をしているので、生理的な働きも似ていることになります。

 

 心は主血という血の流れを調節する働きがあり、肝は血を貯蔵する働きと同時に量の調節に関与をしています。人の身体には気血津液という物が流れていると考えるのが東洋医学ですが、その中の血という働きに大きく関与をしているということですね。

 

 心の主血と肝の蔵血は相互に影響をしあって助け合う関係にあるので、血の運行に関しては、心が血を動かすという陽の働きを持つので心が陽、肝は貯蔵や動かないという陰の働きを持つので肝は陰と考えることができます。

 

 この関係が大きく関与するのが、活動時は陽の状態で睡眠時は陰の状態と考えていくことが出来るので、起きているときには、心に血が十分に行く必要があり、寝ているときには肝に血が十分にいく必要があります。

 

 血は身体を動かす力ではなく、栄養させる機能があるので、身体全体の栄養、精神の栄養と大きく関係をしやすい物になるので、血と身体の関係を知っておくと、心と肝の機能についても理解が深まると思います。

 

 活動時に血が心に行きすぎてしまうと、心の働きが活発になってしまい、神を興奮させてしまうことになるので、落ち着きを失ったり、睡眠障害になってしまったりします。この状態は、心と肝の働きに問題があったときに発生をすることもありますが、熱が身体に加わると液体成分である血は流れが加速をしてしまうので、特に心への働きかけが強くなるので、血熱は心に影響をしてしまうことが多いです。

 

 暑い時に眠れないというのは、血に熱という陽気が加わることで、血熱になり血行が加速をし、血の動きが強くなってしまっているので、心の機能を亢進させてしまうので、心火亢盛と呼ばれる状態になってしまうことがあります。

 

 この熱は外の熱だけではなく、身体の中で発生した熱によっても生じることがあるので、心火亢盛という状態になっているのであれば、熱はどこから来たのかを考えることが重要になります。

 

 睡眠異常は神と関係をするので、精神との関係が深いものなので、血の異常があるときに発生をしやすくなるので、心・肝との問題とも関係をしやすくなります。血の異常だと心・肝のどちらの問題が発生をしているのか分からなくなってしまうことがありますが、臓腑と関係する他の診断情報を使って絞り込んでいきます。

 

 例えば、難経系腹診を加えるのであれば、肝は左側腹部になり、心は心窩部になるので、どちらに圧痛があるのかで分けることができますし、舌診であれば、舌辺が肝、舌尖が心と分けることができますよね。他にも五行で関係するところ、臓腑の位置ということからも診断をしていくことが出来るので、その他の情報が大切になりますね。

 

 心と肝は血に対する働きで協調しているというのは理解できたと思いますが、血は精神との関係が密接になってくるので、心と肝は精神への働きかけでも協調している関係があります。

 

 心は神志と関わり、精神や意識と関係をしているので、人が生きているという状態を作るのに関しています。生きている状態に関係をしていることから、心は生の本と呼ばれ、君主という言葉で表されます。

 

 精神はあるだけでは人としての生活として正常な機能ではなく、外に感情として出せることが重要になり、この感情の調節が肝の働きになります。より詳細に言えば、心が精神、心包が感情、肝は感情調節になります。

 

 心の神志がなければ意識がない状態になってしまうので、肝の感情調節という働きが必要なくなってしまいますが、意識がないということは危険な場合が多いので、そういった状況ではとにかく生の本を治療として考えることが重要になります。

 

 人は社会の中で生きている状態になるので、自分の好きなようにし続ける訳にはいかないですし、人との関係を構築していくためにも感情を調節するという成長が必要になります。

 

 血があり、心と心包が機能をしていれば、感情が湧き出てくるので、その感情を外に出すかどうかを調整していくのが肝の疏泄になります。疏泄自体は、感情以外にも多くの機能があるのですが、心と肝との関係ということでは、精神との関わりが重要になっていきます。

 

 この精神の関係で考えていく場合には、心は内、肝は外と関係をしているので、先ほどの血で考えた陰陽関係とは逆になり、心は陰、肝は陽と考えていくことができます。陰陽論は、その時の状況によって、どちらが陰、どちらが陽かと考えていく物なので、こういう違いが生じてしまいます。

 

 このように心と肝の関係は昇りやすいという性質が似ていると同時に、血と精神で協調して働く性質があるので、血・精神の病証のときには、相互の関係を考えていくことも大切になります。

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