脱力感に対する治療

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 身体の状態が悪い人でたまにいるのが、力が入らなくなって脱力感が出てしまったという人がいますが、治療ではどうやって考えたらいいのでしょうか。

 鍼灸治療ではいろいろな状態を治療していくことが多いですが、拘縮という硬くなってしまった状態は変化を出しやすいのですが、脱力感という力が入らなくなってしまった状態は治療が難しいかなというのが私の印象です。

 

 硬い場合は、硬いところに鍼をするだけでも硬さが変化をしますし、動きも改善をすることが多いのですが、脱力という弛緩に関しては、直後の効果も強く出ないことが多いので、治療が難しいかなと思っています。

 

 それでも、脱力感を訴える患者さんはいるので、対応をしていきますが、脱力感に限らず、どんな症状でも、若い人の方が改善は早いなと思います。一時期、脱力感を訴える方が同時期に何名か居たのですが、若い方の方が改善は早く、よくなっていきました。

 

 脱力感は全身性に出てくることもありますが、手足の脱力感が比較的対応しやすいと思っています。手足に力が入らなくてだるいという状態は東洋医学的に考えていくと、髄、湿、脾、血の問題によって発症をしていきやすい傾向があります。

 

 髄は骨の中にあり、骨を栄養しているものですが、髄が不足をしてしまうと、骨のだるさだけではなく、下肢のだるさが生じてくるので、下肢でだるさを伴う脱力感が生じている場合には髄を考えることがあります。ただ、髄はだるさと関係しやすいので、脱力感と密接な関係がある訳ではないですね。

 

 湿は下肢に停滞をしやすい傾向があり、停滞してしまうとだるさが生じてしまうので、四肢の重だるさによって脱力をしてしまうようであれば、湿の影響を考えていくことがあります。湿は重だるさと関係をしやすいので、髄と同様に脱力感と密接な関係にある訳ではないですが、湿の停滞によって、気血の流れ悪くなることがあるので、関係が深い場合もあります。

 

 脱力感は、現代医学的な考え方でいえば、神経・筋肉の異常として考えていくことになると思いますが、東洋医学で動きを考えると筋になるので、筋を栄養している血の働きが不足をしていくと、筋の異常が発生するので、脱力感は筋の問題ではないかと考えると思いますが、通常、筋の異常は、けいれん、ふるえ、しびれとして現れてくるので、脱力感とは少し違いがあります。

 

 手足の力が入らないという状態は手足の軟弱と言われる状態なので、手足の軟弱は、脾と関係をしていると考えていきます。これは、脾は肌肉と関係をしていくのですが、肌肉は身体の太さや充実と関係をしているので、脾の働きが低下をしていくと、肌肉のやせや手足軟弱・手足無力が発生をしていきます。

 

 東洋医学は自然との関係があり、身体の循環とも関係をしていくと考えるのが基本なので、脱力感の場合でも筋、血、湿、髄を考えていくことは非常に大切になっていきます。

 

 ただ、どこが中心になりやすいのかという視点で考えたときには、四肢軟弱は脾の病証として考えていくことが出来るので、脾を治療の中心に据えてみて、身体や症状がどのように変化をしていくのかを見ていくことで、病態の把握を再度行ったり、治療を変えたりしていきます。

 

 身体の体質としては脾を中心に施術を行うというので効果が見られることがありますが、脱力感が、どの場所に生じているのかを把握することによって、経絡を考えていくことが出来るので、脱力感がどの経絡と関係をしているのかを確認しておくことが必要です。

 

 例えば、胸から母指にかけて力が入りにくいという状態が発生しているのであれば、肺経の異常が生じていると考えることが出来るので、体質としては脾の治療を加えながら、経絡の変調としては肺の治療を加えていくことになります。

 

 肺の治療は経絡を中心で考えていくことが出来るので、経絡の始まりと終わりを使って治療すれば、経絡の走行上を治療していることになるので、肺経の循環改善を考えた治療にすることができます。

 

 体内流注や接続まで考えて行うのであれば、肺経は中焦から発生するので、腹部の治療を加えるということも可能なので、どこから治療をしていくのかを考えておくといいですね。

 

 先ほどの、胸から母指にかけての脱力感であれば、脱力感は脾として治療を行うと同時に肺経として考えて施術するのであれば、腹部に対する治療は脾と肺を共に治療することになるのでお腹の治療が重要だと言えますね。

 

 肺経だけの問題で大腸経の走行上に異常がないのであれば、大腸経・肺経の絡穴を使っていくことで、表裏のつながりを強め、肺経の問題を解消していくことが出来るので、表裏を考えていきながら治療をすることも可能になります。

 

 肺経の問題は肺とも関係をすると考えるのであれば、肺兪や胸部も治療対象になってくるので、治療の範囲はいくらでも広げていくことが可能になります。ただし、どこでも使えるという状態になった場合は、どこが一番、効果があったのかが分からなくなりますし、せっかくよくなろうとしているのに、刺激が多すぎたために、改善に繋がらないということもあるので、身体の状態を確認しながら刺激量を調節していくことが大切だと思います。

 

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