公孫穴は足太陰脾経の絡穴であると同時に奇経八脈の一つである衝脈の八脈交会穴になるので、治療で使われる頻度が高い経穴の一つではないでしょうか。
東洋医学で重要視をされる中国古代の皇帝でもあり、神の黄帝(こうてい)の姓が公孫といわれているので、黄帝の名前と関係をすることから重要な経穴の一つだと言えます。黄帝は国に居て、その力は四方にも届くことから公孫も全身への働きかけが強い経穴と言えます。
脾は飲食とも関係をして身体の気血津液精の生成にも関与をしているので、身体の中への繋がりが深いと言えます。衝脈は会陰から生じて、上行する奇経であり、生殖器との関係が密接になるので、衝脈の八脈交会穴である公孫は消化器系、婦人科系に効果が高い経穴と言えます。
衝脈とセットとして使われる奇経には陰維脈があり、陰維脈の八脈交会穴である内関と組合せて用いていくと、胸部・胃部に対する治療に効果があると言われているので、消化器系の疾患であれば、公孫だけではなく、内関も使った方が効果は高いと言えます。
食事をしてお腹が張って苦しいという人には内関と公孫を組合せて使って、置鍼をしていくと、10分程度で落ち着いてくることも多いので、飲食の問題が強い場合は、私も良く使っている組合せの一つです。
公孫は切皮痛が出やすい場所の一つなのですが、これは皮膚の硬さが影響をしていると言えるのですが、押手を構えにくく、まっすぐに鍼管を当てようとしてもずれてしまうことが多いので、痛みを生じやすいのではないかと思っています。
押手を構えるときには、示指と母指以外の指は足背・足底に絡めるようにして置くと、押手が安定をしやすいですし、鍼管も真っすぐに置きやすいと思いますよ。
公孫にお灸を使っていくこともできるのですが、火傷をしてしまうと履物に当ってしまうので、お灸よりも鍼を使っていくことが多いです。鍼をする場合は、5㎜程度の刺入でも響きが出ることが多いので、通常は切皮して鍼が立つぐらいで終わりにすることが多いですね。
足底の痛みが発生している場合には、そのまま鍼を刺入していくことがるのですが、響きが嫌いな人に取っては辛く感じてしまうので、足底の痛みが強い人には足底で痛みがある部位に透熱灸をすることの方が多いですね。刺入が大丈夫であれば、圧痛があるところに刺入をしてしまうことがあるのですが、足底の鍼は痛みと響きを感じやすいので、あまり使うことはないですね。
公孫は太白の後方にあり、陥凹があることが多いので見つけやすい経穴の一つだと思うのですが、公孫より足底側に強い陥凹が出ている場合は、通常の公孫ではなく、足底側にずらして使うこともあります。
足底側の構造は公孫のところは陥凹部で、その下部が母趾外転筋・足底腱膜があるので、力がない感じは、筋か腱なのだろうと思います。よく歩いたり、走ったりしている方は筋肉も発達していて、しっかりしているのですが、公孫付近の筋が弱っているようだと、運動が少ないのではないかと考えていくことがあります。
公孫の鍼をすると、ジワリと響きがでることがあり、足底の方に響きが出る人と、経絡の流れに沿って出る人もいるので、公孫を使ったときに、響きがどこに感じているかを確認していくと、経絡の理解にも繋がっていくと思います。
個人的には脾経を治療で使いたいときには三陰交を選択することが多いですが、もう少し作用が強いところということで公孫を使っていくことが多いですね。太白でもいいのではないかと思うかもしれないですが、私は太白よりも公孫の方が使いやすいので、公孫を使っていくことが多いです。
公孫は絡穴にもなるので、胃経にも影響を与える経穴になるので、消化器疾患でちょっと変化が出にくいなという感じのときに、内関と組合せて用いることが多いですね。
月経の問題が発生していて、三陰交で治療をしていたけど、効果が今一つだなと思ったときにも公孫を使っていくことが多いです。ツボを選ぶのはその人の趣味というか趣向が出るので、個人差が大きいものですが、いろいろ使っていく中で、仲が良いツボを作っていくのが大切なのかなと思っています。
公孫は私の中では、まだまだ片思いかもしれないですね。ツボの使い方は刺す方向や鍼の太さも関係するので、どれが正解と決めることが出来ないので、自分の中での使い方のルールは大切なのかなと思っています。