風邪の開泄性と暑邪の開泄性―開泄性と昇散性

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 開泄性は発汗と関係をする用語として使われていき、風邪だけではなく暑邪にも開泄性があると考えることが出来ますが、それぞれの意味には違いがあります。

 開泄性ということについて考える前に、どのような状況でよく発汗をするのかを考えていくと、暑い季節には大量の汗が出るので暑の時期には発汗すると考えていくのが当然になりますね。

 

 開泄性を発汗させると言う意味で考えたときには、風邪だけではなく、暑邪にも開泄性が生じていると考えることが出来るのですが、実際に身体で生じている現象が違うので、風邪が開泄性で暑邪は昇散性という言葉になります。

 

 昇散性という意味について考えていくと、「昇」と「散」という漢字が含まれているので、暑邪の性質は、2つの働きによって成り立っています。まずは「昇」という性質は熱の性質と考えていくことが出来るのですが、火が発生すれば、上方に登って行く性質があるので、この熱が上へ向かうと言うことを「昇」としています。

 

 では「散」というのはどういう意味かと言えば、身体に熱が加わっていくと、体内に熱が停滞をしてしまうことになるので、「熱を散らす」ことが大切になってくるので、体温調節を行うために、発汗を多くして汗が出ることになるので、暑邪による発汗は開泄性ではなく、「散」の働きによって発汗をしていると考えられます。

 

 風邪の開泄性には2つの意味があります。人の身体の表面には衛気があり、外邪からの侵入を防ぐ働きをしていて、身体に必要な津液は対外に漏れないように衛気が管理・調整をしています。

 

 風邪は百病の長と言われ、外感病の先導者という言葉があり、これは身体を守っている衛気を壊して、他の外邪が入りやすい状態を作ることになるので、風邪は身体のバリアを破る開泄性があると言えます。

 

 身体のバリア機能である衛気を壊してしまうと、腠理(そうり:汗腺)の開闔(かいごう:開閉)をしている衛気がいなくなってしまうので、腠理が開きっぱなしになり、発汗をしてしまうことになるので、発汗をさせるという開泄性があると言えます。

 

 この2つの開泄性は相互に関係をしている物なので、通常は、開泄性と言えば、衛気を壊し、発汗をさせるということを同列で表現していることが多いのではないかと思います。

 

 暑邪は、昇散性によって発汗をさせていくことになるのですが、身体にある津液は陰であり、静であり、動きがない物になるので、通常は気が推動することで津液が循環をしているので、津液を失うということは循環をさせている気を失うことになってしまいます。

 

 この津液と気の関係は車で考えていけば、車という存在は津液ですが、エンジンは気になるので、車が失われるということはエンジンが失われるということにもなります。

 

 暑邪は熱の性質を持つので熱邪と言われている物の一つなので、熱が身体に影響を続けてしまうと、風が生まれることになってしまいます。自然の中で火が強くなると、周囲にある酸素を取り込むことになるので、火災旋風が発生していくので、熱邪によって風邪が生まれてしまうことは内風の状態になります。

 

 この熱により風が生じてしまうことを熱極生風になるので、暑邪の働きによって風邪が身体に発生をしてしまうことになるのですが、内風は身体に風邪が発生すると言っても、体内に風邪が存在をすることになるので、身体の表層と関係をする開泄性を持つよりも症状を移動させてしまうよりも、身体の内部で風邪が移動をしてしまうという遊走性が強く生じてきます。

 

 遊走性が強くなり出てくる症状は、しびれ、ふるえ、痙攣なので、熱性けいれんは暑邪によって熱極生風になり、風邪が全身に影響をしてしまったことによって生じていきます。暑邪は熱が強く、発汗をさせてしまうことで、体内の津液不足を発生させてしまい、津液が不足すると血の構成成分の不足になるので、血や津液によって滋養をされる筋の異常が発生をしてしまうので、けいれんが生じることになります。

 

 発汗に関しては、暑邪の場合は暑さが強いので、真夏のように大量に汗をかく傾向があるのですが、風邪による発汗は大量に汗をかくのではなく、しっとりと汗ばむ傾向があるので、発汗の量によって風邪か暑邪の違いなのかを理解できると言えるのですが、暑ければ暑邪が強いと言うことなので、考えるまでもないですね。

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