裏急後重(りきゅうこうじゅう)の意味

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 東洋医学の学習では、漢字が中心となってきて、熟語のような状態になっていますが、裏急後重は有名な言葉なのではないかと思います。

 裏急後重は、しぶりばら・テムスネスとも言われ、便意を頻繁に催すのに排便が少量で、すぐにトイレにまた行きたくなるという状態です。ずっと、そうですかと思っていたのですが、そういえば、裏急後重はどんな意味なのかなと考えるようになりました。

 

  裏急は、腹直筋の異常な硬さであり、極度の疲労ということで、腹診の所見でもあるのですが、どういった意味内容が含まれているのかは漢字の意味を辿っていけば、分かるだろうと思ったのでちょっと調べてみました。「裏」は、身体の内側という意味が正しいのではないかと思います。排泄という行為は胃腸の働きが関係をしてくるので、身体の中からくる状態という意味になるのだろうと思います。

 

 「急」は急激や急行ということばがあるように、はやい、危険、緊急という意味があります。もともとの意味が何だろうと思って調べたら、「逃げる人の後ろから捕まえる様、おいかけてやっと届く、ゆとりがなく迫りくるような気持ち」ということでした。

 

 なるほど。テムスネスは確かに、迫りくるようなもので、ゆとりがないし、つかまったら逃れられない状況でもあるので、凄く納得できました。

 

 ということで、裏急は、身体の中のさしせまった、ゆとりがない、迫りくるようなものなので、確かにテムスネスは寄せては返す波のようで、逃れられない切迫感を伴うと言うことでいいのでしょうね。

 

 後重は「後」は後陰のことを言っていて、後陰が重く排泄をしにくいという意味なのだろうと思います。後陰は二陰の一つであり、前陰は小便口・外生殖器、後陰は大便口をさすものなので、後陰に重たさを感じるということだろうと思います。

 

 個人的には排便「後」に「重さ」があるという方が実感しやすいのですし、迫りくるあの感覚は裏急後重というので記憶しやすいのですけどね。

 

 裏急後重は現代医学に考えると病気がひそんでいる可能性があるので、注意をしないといけないのですが、東洋医学的にも様々な原因を考えていくことが出来ます。

 

 東洋医学では気血津液が流れている状態が正常なので、気血津液に異常が生じれば、裏急後重が生じることがあります。気の働きが悪い状態には、虚と実があるので、身体の持っている力が不足をすれば、排泄機能が弱くなってしまうために、上手く排泄できないので、裏急後重が生じることになります。

 

 気の実である状態は、気の巡りが悪くなるので、排泄機能を上手く働かせることが出来ないために同様に裏急後重が発生をしていきます。

 

 血の問題でも同様に排泄に異常が生じますし、血が不足をすれば陰虚になるので、陰虚でも裏急後重が発生をすることになります。

 

 津液の場合は、虚実を考えたときに津液不足は水を飲むのが早いので、津液の実証である痰湿を中心に考えていくことになるのですが、体力がある程度あり、大きく体調を崩していない人の場合は、痰湿や湿熱による裏急後重が多いのではないかと思います。

 

 病能によって治療するのを分けるのは大切なことなのですが、裏急後重が発生をしているときには、関元に透熱灸を沢山行うのが一番効果的なのではないかと思っています。私自身の臨床経験がまだまだ少ないので、それが正解なのかは分からないのですが、裏急後重や下痢の治療では、関元または下腹部のツボに多壮灸を行うのが多いですね。

 

 鍼でも効果があるのでしょうが、脾経や腎経にお灸も効果的だと感じているので、お灸は内科系の疾患に効果が高いのではないかと思っています。

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