半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)

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 半夏厚朴湯は有名な漢方薬の一つですが、一般的には梅核気に半夏厚朴湯と繋げている方も多いのではないでしょうか。漢方薬や東洋医学の証によって処方されていくので、梅核気だから半夏厚朴湯で絶対という訳ではないです。

1.半夏厚朴湯の証

 半夏厚朴湯は理気降逆・去痰に効果がある漢方薬になります。用語に慣れていれば理気降逆・去痰だけで身体の状態が理解できるのですが、最初のうちは理解するのが大変だと思うので、もう少し言葉を噛み砕いてみます。

 

 理気降逆という治療方針は、理気が肝鬱気滞に使われやすい治療方針になるので、理気という言葉が書かれているのであれば、肝鬱気滞が絡んでいることになります。降逆というのは、気の働きが悪くなり、上に昇ってきてしまっている状態を表すので、上に症状が生じているということが分かります。

 

 去痰は痰と取り去るということになるので、これは言葉の通りですね。

 

 病態として組み合わせて考えていくと、肝鬱気滞と痰が発生してしまっているので、肝鬱気滞を取りながら、痰を取り除くことになります。痰は肝鬱気滞という気の動きが阻滞をしてしまったために発生することもあれば、同時に発生をしてきてしまうことがあるので、気滞と痰湿の状態を確認した方がいいでしょうね。

 

 中医学的な弁証では肝胃不和であり、胃気上逆が発生をしていて、痰飲を上逆させてしまっている状態とも言えるので、悪心・嘔吐や愛気(愛気:げっぷ)、吃逆(きつぎゃく:しゃっくり)が出やすくなり、上腹部に膨満感やつかえが生じることがあります。

 

 改善しないと上逆している痰飲が肺に影響を与えていくので、咳や喘息、呼吸困難などの肺気上逆に移行することがあります。

 

2.梅核気

 梅核気はエヘン虫と言われることもありますが、喉につまりを感じる状態で、現代医学では、咽頭喉頭異常感覚症やヒステリー球と言われることがあります。絶えず喉につまり感を生じてしまう場合や、話そうとすると喉につまり感が発生をして話しにくい状態が生じることがあります。

 

 東洋医学の考え方では、痰湿と気滞が同時に発生をしている状態になるので、痰湿の治療だけではなく、気滞に対する治療が必要になっていきます。

 

 梅核気については、過去のブログの中でも治療について書いていますので、参考にしてみてください。

「エヘン虫の原因と治療法―梅核気」

 

3.半夏厚朴湯の生薬

 半夏厚朴湯には様々な生薬が含まれていきますが、メーカーなどによって内容が異なることがあります。半夏厚朴湯には半夏(はんげ)・生姜(しょうきょう)・紫蘇(しそ)が含まれていきますが、これらの働きはお腹の働きを整える働きがあるとされているので、腹部系疾患の中で使われることがあります。

 

 半夏は痰湿を取り去る働きがあるとされているので、痰湿がある病態には使用されていきやすいです。伏苓(ぶくりょう)も痰湿に対する作用があると考えられているので、相互に助けあいながら効果を発揮すると考えられます。

 

 厚朴(こうぼく)は脾胃の働きを助けるだけではなく、痰湿が上逆してきている状態にも用いていくことができます。腹部膨満感と下痢に対して使用されることもあるものです。厚朴は乾燥させる働きが強い生薬と言われています。

 

4.半夏厚朴湯で注意する証

 東洋医学では証に対して漢方薬が決まっていくので、適応する症状が合っていたとしても、証が違うと効果が激減するだけではなく、悪化をしてしまうことがあります。

 

 証を簡単に言えば、その人の現在の体質と言えるものになります。

 

 半夏厚朴湯は乾燥させる働きが強いと考えられているので、身体を冷やす働きがある陰が不足をしてしまって、身体に熱があると考えられる陰虚の人は注意が必要です。陰虚証は五心煩熱(手足胸がほてる)、のぼせ、盗汗(寝汗)がある人になります。

 

5.半夏厚朴湯に似た漢方薬

 半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)は痰湿によって心窩部につかえがあるという点では同じなのですが、梅核気は発生することは少ないです。生薬についての理解が深まっていくと、こうした似たような働きの漢方薬についても理解できてくると思います。

 

6.まとめ

 漢方薬は現代医学的な考え方をもとにして使われていくことがありますが、東洋医学の考え方によって作られた物になるので、証という独特な概念を使って使用する場合を決めていきます。

 

 東洋医学の証によって漢方薬を処方されたい場合は、東洋医学的な考えで治療をしている病院、漢方薬局に一度、相談をしてみるといいと思いますよ。

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