陰虚陽盛・陽虚陰盛

Pocket

 東洋医学の表現では、陰陽を中心とした言葉で表現していくこともできるのですが、慣れていないうちは、何を言われているのか分からないことも多いと思います。

 身体の状態は陰陽で考えていくことが出来るのですが、陰は冷やす力、陽は温める力になるので、陰陽のバランスが失調すると、のぼせ・ほてりや冷えが生じると考えていくことができます。

 

 陰陽のバランスが整った状態は、冷やす力と温める力が均一になるので、身体は暑くも寒くもない状態になります。

 

1.陰虚陽盛

 陰虚陽盛は、陰が少なくなってしまっている陰虚という状態だけではなく、陽盛も発生をしてしまっている状態になります。陰虚は冷やす力を失ってしまったことになるので、身体がほてる状態になってしまっています。

 

 陰虚の状態が酷くなると、身体の陰陽バランスでは陽ばかりの状態になってしまっているので、陽盛が発生をしていると考えていくことができます。陽盛は陽が多い(盛大)という意味になるので、身体の火照り具合が非常に強いということが分かります。

 

 身体が暑い状態であれば単純に陽盛だけでもいいのではないかと考えることもできますが、外の気温が暑くて、身体が暑いという状況も人が生きているときには発生をするので、火照りという身体が暑い状態が外からの影響なのか身体の中からの影響なのかが分からなくなってしまいます。

 

 外からの影響によって身体が暑くなってしまった。身体の中の阻滞が熱化をしてしまったことによって身体が熱を帯びてしまったというように、ほてりが発生している状態では、様々な原因を考えていくことができるので、陰虚が発生をしていない状況では、単純に陽盛として考えていくことが出来ます。

 

 陰虚が原因で陽盛になっているのであれば単純に陽盛とだけ言わずに、陰虚陽盛と表現することで、原因と状態を説明していることになります。

 

2.陽虚陰盛

 身体を温める働きは陽になりますが、陽が不足をしてしまうと身体が冷えてしまうことになります。陰盛の陰は冷える力ということになるので、冷えが強い状態になるので、陽虚陰盛であれば身体が冷えている状態になります。

 

 陽盛のときと同じように陰盛だけであれば、寒い状況に居ても身体が冷えてくることになるので、陰盛だけでは、原因までを特定することができないので、陽虚というのを前に持ってくることによって、身体の温める働きが低下をしてしまうことで、身体が冷えている状態になり、冷えが強いということがわかります。

 

 言っていることは難しいような感じがするのですが、陰陽、虚実、盛衰の単語を組み合わせていくと、様々な表現が出来るのだなと思っておくと、便利な言葉になりますね。

 

 私も最初に学習したときには何を言っているのか分からないと感じることが多かったのですが、一度、理解をしっかりしてしまえば、迷うことなく、身体の状態を理解出来る単語になるので、非常に便利な言葉だと思います。

 

3.陰虚陽盛・陽虚陰盛を正常な活動として考えてみる

 病能の鑑別として陰虚陽盛・陽虚陰盛を考えてみると非常に便利な単語として使っていくこともできるのですが、陰虚陽盛・陽虚陰盛は身体の正常活動として考えていくこともできます。

 

 身体のバランスというのは常に一定のものではなく、揺れている状態であるのが正常なことなので、陰陽・寒熱のバランスも一日の中でも増減すると考えていくことができます。

 

 例えば、身体の中の陰陽の量は変わる訳ではないので、もし身体が火照るという状態が発生したとしたら、陰陽のバランスが失調をしていることになるので、冷やす力である陰が不足をし、温める力である陽が強くなっている状況になるので、陰虚陽盛の状態が発生をしているとも言えます。

 

 または、どうも身体が冷えるような感じがするというのであれば、温める力である陽が不足をし、その分、陰が強くなってしまっているのであれば陽虚陰盛によって身体が冷えている状態になってしまうことになります。

 

 これらの場合は、病能として発生をしているということではなく、一日の中でも陰虚陽盛・陽虚陰盛は発生をしているので、身体の陰陽の正常な働きとも言えます。

 

4.まとめ

 陰虚、陽虚、陰盛、陽盛という言葉は複数を組み合わせて使うことも可能ですし、病能としての説明、正常な身体の状態としての説明にも使えてしまうので、慣れてくるまでは、なかなか理解できない単語になってくると思います。

 

 正常な状態で陰陽が変化をするのは、陰陽の消長と転化によっても成り立っているとも言えるのですが、これは陰陽論の考え方を理解していくことで見に付くことです。

Pocket