東洋医学の望診という視診では、舌診という舌の状態を観察する方法があります。舌は筋肉であり、表面から診られる場所なので、身体の状態を診察する場所としては適しています。
舌診を学習しようとするときに、まずは、舌根は腎、舌中は脾胃、舌辺は肝胆、舌尖は心肺という臓腑の配当を覚えていく必要があります。例えば、舌の中央に亀裂のような線が入っているのであれば、脾胃の調子が悪いのではないかと考えていくことができます。
舌に口内炎が出来ることもありますが、その場合もどの場所に出来ているのかを考えることで、臓腑との対応を考えていくことが出来るので、舌診の基礎として臓腑の配当が重要になります。
舌診をしていく上においては、舌の色、形、苔の色や厚さを見ていくのですが、舌は筋肉で出来ている物なので、長い間、舌を出した状態を続けていくと、血色を失ってしまい、色が黒くなってしまうので、5秒程度で観察をして、悩むのであれば、一度、時間を置いてから再度確認をしていく方がいいです。
舌の色や形と言っても多くの人を診ていかないと判断していくことができないので、出来るだけ多く診るようにしていくことが、舌診の上達に必要なことになります。
例えば、健康な人の舌は淡紅という淡い紅の状態になっているはずなのですが、熱があると鮮明な紅に変わるので、淡紅と紅は違う物になります。
数名の舌を診ると紅に感じる人がいるかもしれないですが、強い紅が生じている人を診たという経験があると、「舌質紅はこれだ」というのが分かるようになり、それまで「舌質紅」で診ていた人が「舌質紅ではない」というのが分かるようになります。
多くの人を同時に診比べていくのが、舌診の基礎を作る上で大切になるので、学生であればクラスメートの舌を診させてもらうのがいいと思います。ただし、クラスメートは健康に通える人が多いので、淡紅の場合が多いですが、20~30名いれば、「この人は赤さが強い」というのが分かるので、自分の中で紅の基準を作っていくことができます。
臨床の現場に出たのであれば、症状や病気に特徴がある方の舌を診させてもらうようにすると、正常舌と大きく違うことがあるので、舌でこんなに違いがあるのだというのが分かるようになると思います。
治療院では通える方が多いので、比較的身体が健康な人が多いですが、それでも病気を抱えていたり、特徴的な舌をしたりしている人もいるので、舌診に慣れるまでは、数をこなすことは非常に大切になります。
何だか分からなくても、舌の形であれは他の人とは違ったという印象がその後の知識の習得に違いが出てくることなので、それほど変わらないと思う場合でも、後で有効活用できることがあります。
違いがないということは正常舌を多く診ているということですから、大きな違いがない人を沢山診たという経験は、正常な舌をよく分かっているということにも繋がるので、違いがあったときに、はっきりと分かりますし、「これか」という衝撃を受けることもあると思います。
健康な人でも、歯痕、裂紋、舌尖紅は診られやすいので、特徴的な舌の形状などは頭に入れておくことが必要ですね。
もし、何も知識がない状態で診てしまった場合は、何かが違うけど、何なのか分からないということになってしまうので、見るポイントを押さえる上でも最低限の知識があった方がいいと思います。
舌診の基礎としては、舌の色であれば紅(熱)、紫暗・暗紅(血瘀であり瘀血)は知っておいた方がいいですね。舌の形状としては、歯痕(胖大もあれば陽虚、痰湿で胖大がないものは気虚)、裂紋(気血不足、陰虚)はみられやすいので覚えておいた方がいいですね。
舌に赤いポツポツが多いなと思えばそれは、点刺であり、とげ状の隆起が見られる物は芒刺(ぼうし)と呼びますが、紅いポツポツとした物があれば、身体が熱を帯びていると考えていくことが出来ます。
舌診をするときに舌を出してもらいますが、出している舌が震えてしまっている状態は顫動(せんどう)と言われ、肝風内動、風、気血不足、心神の異常でみられることがあるので、舌の震えは意識した方がいいです。
舌下静脈が太いようだと瘀血・血瘀を考えていくことが出来るので、舌裏静脈は必ず確認をした方がいいです。舌の色が紅いなというのと、紅で暗い感じは見分けるのが最初は難しいので、舌裏静脈を診ていくことで、熱か瘀血・血瘀かを鑑別することができます。
舌苔に関しては、苔が膩か腐かというのは鑑別するのも必要なのですが、苔が多いか少ないかぐらいでも基礎としては十分なので、苔が厚い・薄いは見比べることが大切です。苔が厚い場合は、痰湿という水の停滞があることによって発生してくるので、苔は重要になります。
苔に黄色がついているようであれば熱があると考えていくことができるので、湿熱・痰火などを考えていくことが出来るのですが、苔は飲食によって色がついてくることもあるので、飲食の状態を確認する必要があります。
舌診は書籍だと色が見にくい場合もあるのですが、こちらの書籍は症例トレーニングも入っているので分かりやすいと思いますよ。
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