悪寒と畏寒の違い

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 悪寒(おかん)と畏寒(いかん)は寒いのがダメというので共通していますが、悪寒は温めても寒く感じるもので、畏寒は寒がりで温めると緩解するものになります。

 悪寒と畏寒はともに、陽虚という身体を温める陽気が不足をして冷えが生じている場合か、単純に身体が環境の影響によって冷やされてしまっている状態を意味する単語です。

 

 畏寒は寒いのが嫌だけど、温めればよくなるということで、どんな方でも体験をするものだと思います。例えば、寒いところに長くいれば温まりたいと思うでしょうし、温まると冷えがなくなるので、この状態を畏寒と言います。

 

 悪寒は風邪(かぜ)をひいたときに経験がすることですが、寒気が強くなって、温かい物を飲んだり、厚着をしたり、布団にくるまったりしても、寒くて仕方がないと感じる状態です。風邪のときは寒気がして、がたがた震える状態になることがありますが、これは悪寒という寒気とがたがた震える戦慄(せんりつ)が同時に出た悪寒戦慄(おかんせんりつ)と言います。

 

 悪寒戦慄は風邪(かぜ)をひいたときに生じることが多いので、悪寒戦慄は外感病因と関係をすると言えます。

 

ほぼ全ての人は風邪(かぜ)をひいたことがあるはずなので、何となく寒いという畏寒から、身体が寒く感じるという但寒不熱(たんかんふねつ)の状態になり、悪寒戦慄になって、悪寒発熱、熱が高くなって身体が熱いという但熱不寒(たんねつふかん)になって、風邪(かぜ)が治るという経過を経験した人が多いと思います。

 

 風邪(かぜ)をひくと、熱が出て発汗するとすっきりとよくなるというのは体感したことがある人が多いでしょうし、汗が沢山でたらよくなるよという話しが多いですよね。悪寒戦慄の後に発汗をするのを戦汗(せんかん)と言います。

 

 汗が沢山でるということは、身体の気血津液の巡りが強くないと出せないと考えるので、悪寒戦慄の後に戦汗が生じるのであれば、身体の正気が外邪に打ち勝ったことになるので、よい徴候だと考えていくことが出来ます。

 

 汗が出てもすっきりと良くならない場合は、外邪によって正気の働きが弱まってしまい、身体の中にある正気が負けて外に出されてしまった状態として考えるので、よくない徴候になります。

 

 汗が出るか、出ないかだけではなく、発汗後によくなるか、よくならないのかも重要な指標になります。

 

 気の種類の話しも交えて説明をすると、外邪が身体に影響を与えてしまうと、身体を守る衛気の働きが活発になるので発汗になりますが、衛気は身体を温める働きがあるので、外邪によって身体を守ることに集中すると温める働きが低下をしてしまうので冷えやすいです。

 

 外邪は風邪(ふうじゃ)が先に侵入をしてきますが、風邪(ふうじゃ)は他の外邪を連れてきやすい性質があるので、寒邪を連れてきてしまうことも多いので、冷えは生じやすいです。

 

 外邪によって衛気が戦う状態になってしまうと、身体を守るバリアー機能が低下をしてしまうので、風邪(かぜ)に当るのを嫌がる悪風(おふう)という状態が出ることがあります。

 

 風邪(かぜ)をひいたときをイメージしてもらうと、ぞくぞく寒気がして、熱っぽいし、とにかく布団に入って風(かぜ)にも当たりたくない状態になりますが、これを悪風と言います。

 

 風邪(かぜ)をひいたときは、但寒不熱、畏寒、悪寒、戦慄、悪風、発熱、但熱不寒と単語が並んでいくことになりますが、病能がころころ変化するのが、風邪(ふうじゃ)の性質ですし、症状が変化をするということは身体の状態が変わっていくので、治療もその時々で変化をさせる必要があります。

 

 風邪(かぜ)の患者さんが来るようになったら一人前という話しはどこかの書籍で読んだような気がしますが、症状がコロコロと変わっていくし、対応も変わるので、難しい疾患とも言えますね。

 

 風邪(かぜ)のときには、家で寝ているのもいいでしょうし、意識が朦朧(もうろう)としながら治療院に来るのは大変なので、私は家でゆっくり寝ていて下さいという話しをしてしまうことが多いですが、症状の変化から正気と外邪の状態を的確にとらえられるのであれば、積極的に治療をした方が早くよくなると考えられますね。

 

 自分の治療は難しいのですが、一度だけ風邪(かぜ)の治療で上手くいったときがありますが、その時は、畏寒→悪寒→戦慄→発熱→発汗→治癒が24時間以内だったことがあります。

 

 ただし、その時は、こまめに治療をできたのがよかったのではないかと思います。それ以外のときは、だるくて治療もする気がおきなくてタイミングを逃したことが多いですね。

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