湿温潮熱(しつおんちょうねつ)―身熱不揚(しんねつふよう)

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 湿温潮熱は、湿温という湿熱によって生じる潮熱のことで、昼過ぎに熱が出るのが特徴で、身熱不揚も発生します。身熱不揚は、熱感を訴えるが、術者が触れても感じにくい、または手を置いていると熱く感じてくる場合のことをいい、一見では熱があるのが確認できないことです。

 午後に発熱をするのであれば、陽明潮熱と言われる日哺潮熱(にっぽちょうねつ)と同じなのですが、発生する原因と身熱不揚が鑑別の要点になります。日哺潮熱は、15~17時頃の発熱のことで、腹部の張りや乾燥便が発生します。

 

 湿温潮熱も同様に午後に発熱をしますが、身熱不揚や腹部系の症状があらわれます。腹部系の症状は悪心、嘔吐、食欲不振、泥状便になるので、脾胃に関係する症状が多くなります。日哺潮熱は胃熱と関係をするので、胃の症状が主になるので、違いがあります。

 

 湿温という単語自体はそれほど聞くものではないかもしれませんが、長夏~初秋にかけて生じやすい急性熱病になります。急性熱病なので温病(うんびょう)の範疇になるのですが、温病の概念が確立するまでは、傷寒の病の一つとして考えられていたようです。

 

 長夏~初秋は、湿温という湿と熱の外邪が存在している時期になるので、身体に湿と熱が停滞をしやすく、湿温として身体を障害しやすくなります。湿の特性は脾の働きを損傷していきやすいので、脾の働きが低下をしやすくなります。

 

 飲食の影響も受けやすいので、長夏~初秋は、過労、生冷を過食してしまうと、脾の働きを低下させやすいので、湿温に障害をされやすくなるので、脾胃を労わる生活をしていく必要があります。

 

 湿と温は陰陽で分類をしていくと、湿は水がもとになるので陰になり、温は熱とも関係をするので陽になるので、湿温は陰陽が合わさった特殊な病能になっていきます。

 

 湿邪は重濁・粘滞性の性質があり、そこに熱が加わってしまうので、水分がより少なくなり、重濁・粘滞性が強まってしまいます。そのために、病としてはなかなか治りにくい傾向があります。

 

 湿の性質は重濁・下注性という、重く下に落ちやすい性質があるので、頭部に影響をすれば、重だるい頭痛、身体の重さが発生をしてしまいます。肌表(きひょう)に影響をしてしまうと、肌表には気血が流れ、肌表を温める性質がありますが、湿が停滞してしまったり、肌表から深部に気血が押し出したりすることによって、肌を触れても熱感が無い状態になります。

 

 湿温という熱が身体に停滞をしている状態なので、本人は熱感を感じていますが、術者が身体を触れても熱を感じない状態になっているので、特殊な状態が発生をしているので身熱不揚があると言います。

 

 湿温の病は発症が緩慢で、初期に悪寒、身熱不揚、頭重感、身重、お腹の痞えが発生をしていくので、風邪(かぜ)だけど湿の症状のような状態になっていきます。湿は重濁・粘滞性があるので、経過が長く、治るまで時間がかかる傾向があると言えます。

 

 湿温の初期は湿の勢いが強く、熱が軽い傾向がありますが、湿が強くなったり、熱が強くなったりするので、湿と熱のどちらが強くなっているのかを見きわめることが大切ですね。

 

 湿は脾の働きを損傷しやすいので、脾の働きが弱っている場合は、脾に影響をしやすいですね。または脾の働きがもともと弱くなりやすい人は、脾に影響をして、脾の働きが低下し、湿がより重くなる傾向があります。

 

 熱が強い状態、停滞が強く出てしまえば、胃に影響をしてしまいやすいので、胃の症状が強くでて、悪心、嘔吐などの症状が出てくることになります。

 

 脾は昇る性質があり、胃は降ろす性質がありますが、湿は降ろす性質、熱は昇る性質があるので、脾胃の昇降を湿温の昇降が邪魔をしてしまうことになり、脾胃が協調して働くことができないので、症状も多岐に渡っていってしまうことになります。

 

 湿がよくならなければ、湿は陰でもあるので陰邪が身体に影響をすることになるので、身体の陽気が損傷をしてしまうことになるので、冷えが生じることもあります。脾胃のバランスで考えると、脾は陽、胃は陰なので、湿はやはり脾を傷つけやすいですし、脾陽の損傷に繋がってしまいますね。

 

 熱がよくならないと、熱は身体の陰液である津液や血を損傷させてしまうことが多いので、身体の陰液が損傷をしてしまい、陰虚となって、熱がまた発生をしてしまうので、外邪の熱と陰虚の熱により、ダブルで熱がある状態になってしまいます。

 

 湿温潮熱・身熱不揚は今まであまり知らない単語でしたが、調べてみて、自分で文章にしてみたら、大分イメージが出来るようになりました。秋頃の長引く風邪(かぜ)で消化器系にくる物は、湿温の病として考えてみようと思います。

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