腎精と腎陰・腎陽

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 腎は精を蔵している臓であり、精が陰気・陽気に変化をしていくので、腎精は腎陰・腎陽に化生をします。

 腎精は腎陰・腎陽に化生をしていく性質があるので、腎は陰虚と陽虚を起こしやすい臓になります。

 

1.腎精と腎陰

 腎陰は元陰、真陰、腎水とも言われ、腎精から化生された血と腎によって調整された津液の働きのことになります。精と血は互いに補い合う関係にあるので、精は血に変化をしやすいです。血は陰陽では陰に属する物になるので、腎精は腎陰を生じていると言えます。

 

 歳を取るということは精が不足をしていくことでもあるので、加齢は腎陰の不足を生じやすくなります。赤ちゃんは身体の水分量が多く、潤いがありますが、加齢により肌の乾燥が強くなり、身体の水分量が減少をしてしまうので、身体の状態から考えたときも、水分である陰気の不足が加齢と言えます。

 

 腎陰は心陽が熱化をしないように抑える働きがあるので、この状態を心腎相交と呼びます。腎陰が不足をしてしまうと、心陽が亢進し、心陽を抑えることが出来なくなってしまうために、心陽が強くなってしまい、心が熱の状態になってしまいます。この状態は心腎不交と呼び、陰虚と心火が混在している病能になります。

 

 腎陰は心陽を抑えるだけではなく、身体が熱くなりすぎないように冷やしている働きがあるので、腎陰が不足してきてしまうと、虚熱の状態になってしまい、心以外の他の臓腑へも影響を与えてしまうことになります。

 

2.腎精と腎陽

 腎陽は元陽、真陽、命門と言われ、腎精から化生した元気(原気)の温煦作用によってなりたっています。元気は身体や臓腑の機能と関係をしているので、元気が減少をしてしまうと、身体を動かすのが辛くなる倦怠感や無力感が発生しやすくなります。

 

 歳を取るということは精が不足をしていくことでもあるので、加齢は腎陽の不足を生じやすくなります。加齢によって段々と身体の動きが悪くなってしまいますが、これは気が不足をしてしまうことにより、身体を動かす力が失われてしまう状態になります。

 

 命門は腎と言われることもありますが、命門は腎陽のことを現すとも言えるので、腎陽と命門は関係をしやすい単語になります。

 

 腎陽は気と関係をしやすいものであり、気は活動と関わりやすいものになるので、腎の水の調節は腎陽によって成り立っていると言えます。身体の中の水は、陰陽で言えば陰に属するものであり、陰は静かで動かないものになりますが、気が陰陽では陽になり、陽は動くということに関係をするので、腎陽があることによって、水の調節である排泄を管理していくことができます。

 

 排泄せずに再利用する水分は、腎陽の働きによって、上へ昇らされ、肺に送られることになります。肺は水を全身に輸送する働きがあるので、水の循環には、肺と腎陽の働きが重要になります。

 

 膀胱の開闔(開閉:排尿)の働きも腎陽によって管理をされており、腎の気化とも表現していくことができ、膀胱の気化とも言われていきます。

 

3.腎陰と腎陽

 精は腎陰と腎陽に化生をして全身の働きに関与をしているので、精は腎陰・腎陽に関わるだけではなく、全身の状態にも大きく関係していきやすいものになります。

 

 陰気は身体を冷やす働きがあり、陽気は身体を温める働きがあるので、陰気の不足は熱の状態になり、陽気の不足は寒の状態になるので、身体の寒熱バランスには腎陰・腎陽が重要になっていきます。

 

 他の臓腑で陰気・陽気の不足が生じた場合は、精から作られる腎陰・腎陽がバックアップをする働きがあるので、腎は寒熱バランスの根本とも言え、陰陽の根本とも呼ばれていきます。

 

 他の臓腑の陰虚や陽虚では腎陰・腎陽の不足が生じることがありますし、陰気・陽気の不足では腎を使うことが多いのは、腎が陰気・陽気との関係が密接なためになります。

 

4.まとめ

 腎の働きには陰陽の根本という表現や、陰虚・陽虚では腎経の経穴が入ってくるのは、腎精が腎陰・腎陽に化生をし、腎陰・腎陽が全身の陰陽バランスを整えるために大切になってくるからですね。

 

 少し分かりにくいところではありますが、腎精と腎陰・腎陽に関して理解できるようになってくると、治療においても幅が広がっていくのでいいですよ。

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