臓腑は互いに連携をし合いながら働いているので、相互の関係があるのですが、今回は肺と心について書いてみたいと思います。
肺と腎は水(津液)に関わる臓であり、五行の関係では、金は水を生むということで、肺は腎の母になります。2臓に共通しているのは、水に関する代謝、呼吸、肺腎の陰気という3点があります。
1.呼吸
肺は呼吸を行う場所であるので、肺の働きは呼吸と関係をしていきますが、臓腑の機能は相互に助けあって存在しているので、肺の呼吸は腎が助ける働きがあります。腎の働きでは納気という吸気と関係する息を吸い込む働きがあり、肺の吸う力を助ける働きがあるので、肺は呼、腎は吸に関係すると言えます。
呼吸活動は気とも関係をしているので、肺と腎は気とも関係が深い臓になります。肺は宗気を生成し、身体活動に関与し、腎は腎精から原気を生成するので、2臓は気との関係が深いという共通点もありますね。
宗気は上焦、原気は下焦、肺は上焦、腎は下焦に存在するので、呼吸という活動により、気が上下をして、宗気と原気が身体に流れていくことになりますが、これは肺と腎が協調して働いている結果になります。
2.水液代謝
肺の働きには宣発と粛降という広がる働きと集めて下降する働きがありますが、水に関する宣発と粛降の働きは通調水道と言われています。脾の働きである運化は水を生成し運ぶ働きがあるので、生成された水は肺に送られることになります。
肺に送られてきた水は通調水道の働きによって三焦を通路として全身に巡ることになります。三焦を通じて全身に輸送された水は汚れてしまったものも出てくるので、不要物として汗や尿として排泄していきます。
※三焦:新教科書では全身の隙間全てが三焦
尿として排泄していくためには、腎の働きである主水の機能になるので、主水によっていらない水は膀胱に貯えられ、排泄されます。体内にある水は循環しながらいらないものを排泄しているので、排泄されない水は腎の機能によって肺に送られることになります。
水は陰の物になるので活動性がないものですが、腎陽が温めることによって水に陽気を与えることで動きを出すので、肺まで上る力がでます。腎陽が不足をすると、水を温めて上に送ることができないので、尿として排泄するしかなくなるので、尿量が増えることになります
水が全身に輸送されていくためには、肺の通調水道が必要ですが、腎陽によって水に活動性が与えられないと循環をしていかないので、肺と腎は相互に協調をしあいながら、水分代謝を行っていることになります。
3.肺陰と腎陰
肺は水が豊富にあるのが正常な臓であり、水は陰陽では陰に属するので、肺は陰気が強い臓になります。肺は宗気の生成を行っているので、気は陽に属するので、肺は気を生成していることから陽気は低下しにくい傾向があります。
水に強く関係することから肺は陰気が強い臓になり、陰陽を補うのは腎が陰陽の根本になるので、肺陰の不足は腎陰によって補われる働きがあります。
肺陰が不足をすると腎陰が補わないといけないので、腎陰が虚してしまいやすい状態になるのですが、五行の関係から金が弱くなると子である水も弱くなってしまうので、肺の機能低下は腎の機能低下を起こしやすくなります。
現象として理解するのであれば、肺は呼吸をする場所になりますが、肺の機能が低下をして十分に呼吸が出来なくなってしまえば、納気も十分に働けないですし、腎まで清気を取り込むことができないので、腎の機能低下が生じやすくなってしまいます。
2臓は水という陰気と関係をしやすい性質があると同時に、肺の水が腎に送られ、腎から肺にも送られることになるので、水を相互に循環をさせています。肺から水が下りてこなければ、腎は水の不足を生じてしまいますし、水の循環という点でも肺は腎よりも主の関係になるので、肺陰の不足は腎陰の不足をきたしやすく、肺の機能低下は腎の機能低下を起こしやすくなります。
4.まとめ
それぞれの臓は特徴的な働きがありますが、一つの臓で機能を成り立たせているのではなく、他の臓との協調関係によって、生命機能として成り立っているので、似たような働きがある臓に関しては何度も照し合せて考えていくことが大切になります。
1つの臓の理解から、2臓の複合を理解して、3、4、5臓と増やしていけば東洋医学的な生理学が理解できるようになるので、一つずつ積み重ねていくことが大切になりますね。