女性は生理があるので、「生理がこない」「生理痛がひどい」など生理不順による悩みを持つことが多いですよね。薬を飲み続けるのは心配だし、身体に悪影響が少なそうだから漢方薬を使っているという人もいますね。
漢方薬でも副作用は生じることがあるので、服用する場合は、医師、薬剤師、登録販売者に尋ねておいた方がいいですよ。漢方薬は東洋医学の考え方を使って服用する物なので、東洋医学と生理不順についてまとめてみたいと思います。
1.東洋医学で考える生理
東洋医学では、五臓六腑と気血で考えていくのですが、生理は五臓の中で、腎・肝・脾と関係をしやすいと考えていきます。生理は血が出ていく物なので、血が大きく関係をしていきます。
①臓の働き
腎は生殖器との関係が密接になるので、生殖器の発達や成熟は腎と大きく関係をしていきやすいので、初潮や閉経とも大きな関係があります。
肝は月経・排卵など生殖器が働くことと関係をしているので、生理周期と大きく関係をしやすいです。
脾は気血の生成、血が出血しないようにしておく臓になるので、気血が生成できない場合は、月経が来なくなってしまいますし、出血させないようにする力が弱くなってしまえば、月経時以外にも出血をする不正性器出血と関係をしやすいです。不正性器出血は東洋医学では崩漏(ほうろう)と言われています。
②その他の働き
血がないと生理という出血することができないので、血が不足をしている場合も、生理が来るまでの十分な血を蓄えておくことが出来ないと考えるので、生理が遅れやすい原因として考えていきます。
冷えが生じると気血の循環が悪くなることが多いので、冷えやすい人は生理が遅れやすいと考えていきます。
身体の中に熱があると考えていく場合だと、お湯が沸騰しているようなイメージの血熱という状態になりやすいと考えていくので、生理周期が早くなりやすいです。
2.生理不順と東洋医学
東洋医学で考える生理の状態を具体的な状況と合わせてまとめてみます。
①生理周期が早い
生理の周期が早くなる原因は、出血をさせないようにしている脾の働きが低下をしてしまった場合、生理を来させる指令を行う肝の働きが低下をしてしまった場合、熱が身体に停滞をしてしまっている場合を考えることが出来ます。
1)脾の働きの低下
脾の働きが低下をしてしまうと、生理だけではなく、食欲不振、軟便、腹痛が生じることが多いです。疲れやすさも出てくるのが特徴になります。生理の出血量は多い傾向になります。
2)肝の働きの低下
肝の働きはストレスとも関係しやすいので、ストレスが貯まってしまった場合、過度の緊張があったという場合は生理周期が変わってしまうことがあります。こういった方はストレス、緊張との関係もあるのですが、月経前に胸の張りが強くなりやすい傾向があります。
3)血熱
血熱は身体に熱が停滞をしてしまって、それが血に影響をしてしまったことで、血の流れが早くなり出血をしている状態と考えていくのですが、ほてりやすい、のぼせやすい、顔が赤いなどの症状が発生することがあります。他に原因があって、熱になってしまうこともあるので、様々な原因や症状が発生することがあります。
②生理周期が遅い
生理周期が遅くなるのは、生理を生じさせる肝の働きが低下をしてしまった場合、冷えがある場合、血が不足をしている場合を考えることができます。
1)肝の働きの低下
生理が早くなるときと同様で、肝はストレスと関係をしやすいので、ストレス・過度な緊張の場合は生理周期に影響が生じることがあります。
2)冷えがある場合
冷えが生じた場合は、水が凍ってしまい流れが悪くなったのと同様に、血も凍ってしまい流れが悪くなっているので、生理まで貯めないといけない血が充分に溜められないので、貯めるまでに時間がかかっている状態と言えます。冷えは手足の冷えなどが出てくるので、慢性的に冷えやすい人は生理が遅れやすいと考えることができます。
3)血が不足をした場合
血が不足をしている状態は、生理が生じるまでに十分な血を貯めることができないので、生理が生じるまでに時間がかかる傾向があります。血の不足は、手足がつりやすい、ケイレンする、まぶたがケイレンする、不眠があるという症状も発生しやすいです。
③生理周期が乱れる
生理周期が乱れやすい場合は、生理の根本と関係をしやすい、肝の働き・腎の働きが低下した場合と関係しやすいです。肝は今まで出てきた症状と関係をしやすいのですが、腎の場合は、耳鳴、足腰のだるさと関係をしやすいので、いつも腰がだるくなりやすいという人は腎の働きが低下をしているのではないかと考えていくことができます。
④生理痛が酷い
生理痛に関しては、生理前に酷く生理後に弱くなる場合は実(じつ)、生理前はそれほどでてもなく生理後に酷くなる場合は虚(きょ)として考えていきます。
生理で塊が多く出る状態は、東洋医学では血の流れが停滞し、邪魔な物になってしまった瘀血(おけつ)として考えることが多いです。
3.生理不順を生じやすい原因
生理不順は疾患と関係することもあるので、注意が必要な場合もあるのですが、東洋医学で考える場合も含めて簡潔にまとめてみます。
①思春期や更年期
思春期や更年期は生理周期が不安定になりやすい傾向にあるので、生理不順が生じやすい時期とも言えます。大きな病気というよりも、ホルモンバランスによって生じやすいと言われています。
東洋医学で考えていくときには、肝と腎の働きと関係をしていきやすい年齢でもあるので、肝と腎を考慮する必要があります。
②子宮内膜症
子宮内膜症はひどい生理痛と出血量が多いという特徴があります。子宮内膜症による生理痛は生理を繰り返す毎に酷くなるとも言われているので、かなりつらい状態ですね。
出血量が多いので、脾の働きが低下をしてしまった状態と関係をしやすいので、疲れやすさや食欲不振、軟便も生じているようだと脾の問題として考えられます。
③子宮筋腫
子宮筋腫は良性の腫瘍(しゅよう)になるのですが、強い生理痛や出血量が多くなることもあります。子宮筋腫は大きくなってくることがありますし、一つではなく、何個も出来てくることも多いですね。
子宮筋腫は鍼灸治療の中でもよく対応する疾患の一つですね。東洋医学では瘀血と関係をしていると考えることが多いと考えやすいです。生理で塊が多く出て、生理前に下腹部に刺される痛みが出ているようだと瘀血があると疑うことが多いです。
4.生理不順と漢方薬
生理不順で使われる漢方薬は身体の体質として考える証(しょう)と関係してくるので、腎、脾、肝、血、寒、瘀血の状態を考慮しながら用いられることが多いですね。漢方薬は副作用もあるので、医師・薬剤師・登録販売者に相談をした方がいいです。漢方薬の中でも危険性が高いと言われているのは甘草(かんぞう)と柴胡(さいこ)なので、生薬として含まれている物は確認した方がいいです。
①当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
当帰芍薬散は、東洋医学的な血の不足を補う働きがあるとされている漢方薬なので、東洋医学の生理不順の考え方では、血が不足して生理が遅れやすい人に用いられることがあります。
血が不足をして生じるのは、不眠、夢をよく見る、手足がつりやすい、顔の血色が悪い、肌や髪が乾燥をしやすくなります。足がつりやすいと言うと処方をされやすい漢方薬なので、患者さんで服用している人も多いですね。当帰芍薬散は虚実では虚に対応しているものと考えられます。
②加味逍遙散(かみしょうようさん)
加味逍遙散は更年期障害の方に処方されることが多い漢方薬になるのではないかと思います。東洋医学的には肝・脾・熱に関係をしやすいものです。加味逍遙散には柴胡(さいこ)が含まれてくるのですが、柴胡は副作用を生じる場合があるので、他の漢方を飲んでいる、薬を服用しているという人は、医師・薬剤師・登録販売者に確認をした方がいいです。
③桃核承気湯(とうかくじょうきとう)と桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
この2つの漢方薬は瘀血がある人の用いていくことが多いものですが、桃核承気湯は便秘傾向の人で、体質的に強い人に用いることが多い物になります。桃核承気湯は腹痛を起こすこともあるので、下剤を飲むと腹痛や下痢がしやすいという人は注意をした方がいいと言われています。
桂枝茯苓丸は桃核承気湯よりも働きとしては弱いのですが、温める働きがあると考えられるので、手足がほてりやすいような人はよくないと言われています。この2つの漢方薬は実に対応しているものと考えられます。
④温経湯(うんけいとう)
温経湯は不正出血がある方に用いられやすい漢方薬になるので、生理不順に対しても使用されることがあります。東洋医学的には血の不足と瘀血の停滞に対する漢方薬と考えられています。
手足のほてり、唇の渇き、足腰の冷え、不眠の症状があるときに使用をされることがあり、月経不順、月経困難、おりもの、更年期障害の方に使用をされることがあるようです。
⑤六味丸(ろくみがん)と八味丸(はちみがん)
腎の働きが低下をしているときには六味丸・八味丸が使われることがあり、六味丸は身体がほてりやすい、のぼせやすい人に用いて、八味丸は身体が冷えやすい人の用いるという違いがあります。
体質という証(しょう)に合わせて服用しないと改善していかないと考えるのが東洋医学なので、自分の証を知ることが大切になりますね。
5.まとめ
生理不順と東洋医学の考え方だけではなく、使われやすい漢方薬もまとめてみました。生理不順は鍼灸で対応することも多いので、お近くの鍼灸院に尋ねて頂くのもいいのではないかと思います。
月経に関しては、過去のブログでも簡潔にまとめてありますが、内容的には専門的になるので、興味がある方は参考にしてみてください。