麻杏甘石湯は気管支喘息の発作が生じているときに飲む漢方薬として昔から使われてきているもので、大人だけではなく小児にも使われていますが、どういった考え方で用いているのでしょうか。
麻杏甘石湯は、咳症状があるとき、小児ぜんそく、気管支喘息、気管支炎、風邪(かぜ)による咳のときに用いられていくことが多いのですが、甘草が含まれているので副作用にも注意をしないといけないので、医師や薬剤師などに相談をしてから服用する方がいいですよ。
1.麻杏甘石湯に含まれる生薬
麻杏甘石湯は、「麻黄(まおう)」「杏仁(きょうにん)」「甘草(かんぞう)」「石膏(せっこう)」の4つの生薬から作られている物で、4つの生薬の名前がそのまま使われています。
「麻黄」は「エフェドリン」という喘息薬と同じ成分を含んでいて、咳止めとともに、発汗・解熱作用があるとされています。「エフェドリン」は中枢神経を賦活する作用があるので、副作用として不眠、発汗過多、動悸、精神興奮が生じる場合があります。
「杏仁」は杏の実の核中の肉で、杏仁という漢字は杏仁豆腐で有名ですね。生薬では「きょうにん」、お菓子では「あんにん」と言われていて、生薬は苦杏仁(くきょうにん)、お菓子では甜杏仁(てんきょうにん)になります。咳止め、去痰、潤腸(便秘)にも使われていますが、咳・痰に対して使われることが多いです。
「甘草」は中和の働きをする働きとお腹の働きを整える作用があります。甘草は「グリチルリチン」と呼ばれる成分を含んでいるので、偽アルドステロン症を発症してしまうことがあります。
「石膏」は硫酸カルシウムで鉱物生薬になります。石膏は熱を取り除く漢方薬として様々な物に含まれています。古来の中国・日本では採取をしやすかったので使われるようになっているのでしょうね。
2.麻杏甘石湯と病証
麻杏甘石湯を用いる場合は、表実寒証に対してではなく、肺に熱がこもってしまった裏実熱証に対してであり、肺熱に対する処方になります。
風寒の外邪が身体に侵入をしてきて、発汗によって治癒すればいいのですが、上手く治癒をしないで、肺に侵入して邪熱となってしまい、邪熱によって肺の働きの低下と、津液が外に漏れてしった状態(発汗)になります。肺は水が豊富にないといけない臓なので、水の不足は肺の機能失調にも繋がってしまいます。
風寒が身体に影響をしているときには、縮まる作用が身体に働きかけてくるので、広げる力である宣発を強めていかなければいけないので、通常は陽の力を足さなければいけないので、麻黄と桂枝を合わせて使うことで熱性を高めていかなければいけないのですが、麻杏甘石湯の病証では熱邪になってしまっているので、熱性が強い物を処方してしまうと、肺熱を悪化させてしまうので、熱性を抑えるために石膏が使われていきます。
麻黄が陽であれば、石膏が陰になるので、陰の働きを強めることで、肺気上逆である咳嗽を抑えることになります。
3.咳嗽と処方の使い分け
麻杏甘石湯は咳嗽に対して用いられやすいですが、身体の状態としては肺熱に対する処方になります。肺寒によって咳嗽が生じている場合は温める働きが必要になるので麻黄湯(まおうとう)を用いることになります。
肺に湿熱が停滞をしてしまい、痰を喀出しにくい場合には麻杏甘石湯に桑白皮(そうはくひ)を加えた五虎湯(ごことう)という処方が向いていきます。
陰液不足による咳嗽の場合には、肺を潤す働きが必要になるので麦門冬湯(ばくもんどうとう)を用いていくことになります。
身体に痰飲という余分な水分が停滞をしてしまって咳嗽が生じている場合は、肺熱・肺寒でもないので、病態を強引に表現すれば肺水の状態になるので、肺水によって咳嗽が生じているのであれば小青竜湯(しょうせいりゅうとう)になります。
4.まとめ
今回、麻杏甘石湯とその他の漢方薬の違いについてまとめてみましたが、何となく、私の中で腑に落ちるところがあり、漢方薬を少し理解できたような気がしています。何が理解できたポイントなのかと言うと説明できないところがもどかしいですが、非常に勉強になりましたね。