手技や取穴では、知識や経験が大切になるのはもちろんですが、どういったところに注意をしていけばいいのでしょうか。
いろいろな方の治療や手を見ていくことによって自分なりに正しいのではないかと思ったのは、ただ触れる、押すのではなく、その中で探っていくことなのではないかと思うようになりました。
どういうことかというと、押す、取穴をする場合は、ここだと思う場所を触れるだけではなく、その先を考えないといけないです。
押すということは、触れた表面から中へ押していくことになるし、取穴をしたのであれば鍼を刺していくことになるので、表面から中へ刺していくことになります。大事なことなので、二度言いますが、場所を決定しただけではなく、進む方向が大切です。
鍼灸師に成りたての頃、ツボの中の形ってどのような状態なのだろうかと考えて、一時期は触っていたのですが、取穴の位置があっているのか疑問に思い、取穴の確認をするようになってからは、立体構造について失念していました。
手技をしているときに、圧の方向を少し変えたら、身体が大きく変化をすることがあって、方向を治療の中で意識をした方がいいなと思いました。その時に、そういえば以前にツボを立体で考えることをしていたけど、探ることをしなくなっているのが気付きました。
それ以後は、手技や取穴で表面だけを決めるのではなく、中を意識するようになってからは、自分の中で治療が変わっていくのを感じました。何が変わったかというと、「どの方向に押した・刺した」という基準ができたので、変化が出ないときには、「方向を変える」が出来るようになりました。
大したことではないかもしれませんが、治療で何を改善すべきかの基準ができたので、治療を変化させることも容易になったし、他の人と比べるとツボの立体構造で違いがあるかを考えられるようになったので、あの人と同じ治療をすると効果があるのではないかが具体的になりました。
表面だけではなく探るという視点ができた状態で、他の人の治療を受けてみると、やはり上手い人は触れた表面だけを考えて治療をしているのではなく、どの方向がいいのかをしっかりと診ているし、意識をしているのに気付くようになりました。
ツボは教科書や書籍では場所は示していますが、どの方向がいいのかについては書いていないですよね。ツボを治療で使う基本は直刺なので、まっすぐに刺激するのが基本でしょうけど、その場所でより効果を出すのであれば、何かの工夫は必要になってきますよね。
最近は、方向については意識することが全くなかったのですが、何人かで練習をしている際に、初心者と比べると探されている感じがする触診だという話が出たので、何が違うのかを考えなおして、いろいろと思いだしました。
最初の頃は意識して触らないと方向を考えることができなかったので、意識していました。いつしか、意識をしないでも方向を探すのが当たり前になり、自分の中では取穴の手順に組み込まれていたのですね。
考えながらでしかできなかったことが、考えずに出来るようになるのは、自分の技術として身についていることなので、いつの間にか出来るようになっていたようです。自分では全く気付かなかったので、人に言われなかったら分からないままだったかもしれないです。
治療家として日が浅い方、学生の方は、表面だけではなく、深部の方向も意識をして触るようにしてみてください。最初は分からなくても、継続していけば探る手ができるようになっていくので、診断スキル、治療スキル向上に役立つと思いますよ。