東洋医学の身体観

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 東洋医学は現代医学と違う身体の捉え方をしていくので、東洋医学を理解していくためには、東洋医学の身体の観方が重要になっていきます。

 現代の日本では、情報も多くあり、医療も普及をしているので、一般の人は現代医学の身体観が日常になっています。現代医学の身体観は、身体は部分の集合体として成り立っていると考えていくので、身体の問題があったら、問題がある部分を探していくことになります。

 

 東洋医学の身体観では、部分は探していくのですが、人間は一つの物であり自然であるというのが前提になっています。さらにその前提が何故あるのか考えると、人間という生命は分からないことが前提にあるのではないかと思います。

 

 動植物の生命はどうして存在しているのか突き詰めて考えていくと、明確な理由を述べることは非常に難しいので、物がありのままの状態で存在している・本来そうであるという「自然」という状態が正常で、その「自然」を維持するためとして「気」が存在していると考えていきます。

 

 そのために、東洋医学は「気の医学」と言われていきますが、この前提がスムーズに頭に入ってこないので、なかなか理解しにくいものになるのだと思います。

 

 気の医学で考えていくと、身体は気のおかげで存在し、病気は気のせいで生じていると考えていくことができるのですが、生命の発現、変化、消退は全て気のせいということになってしまうので、言葉としての説明としては優秀ですが治療としては、大ざっぱ過ぎる内容になってしまいます。

 

 細かく考えていくためには分類していくことが必要になっていきますが、分類するということはルールが必要になります。この分類するためのルールとして東洋医学が使っているのが、陰陽説と五行説になります。

 

 陰陽説は物事を2つに分ける考え方であり、五行説は物事を5つに分ける考え方であり、この2つを使うことによって、東洋医学は身体を細かく考えていくことができます。他には、3つに分ける天地人三才思想が利用している状態です。これだけだと意味が分からなくなるので、一つずつ説明していきます。

 

 気だけでは病態を理解していくことが難しいので、陰陽を加えて考えていくと、気を陰陽に分けて考えていくことができます。例えば、上半身の問題が生じているのであれば上の気、下半身の問題が生じているのであれば下の気、身体の外側に問題が生じているであれば外の気、身体の内側に問題が生じているのであれば内の気と分けられます。

 

 こうした組み合わせを使っていけば、身体の上と外の気が問題だということが分かれば、身体のどこの場所に問題が生じているかを分けて考えていくことができます。さらに、上・下・外・内の気に名前を付けていき、どこから治療できるかを考えていけば、治療についても分けていくことができます。

 

 陰陽という2つに分ける考え方は、物自体を2つに分けることができるので、生命を成り立たせていくための活力は陽であり気、生命を成り立たせていくための栄養する力は陰であり血として考えていくことができます。さらに、気と血で陰陽を分けて考えていくことをしていけば、東洋医学の重要な概念である虚実を気血に対して使用していくことができるので、病態をより細かく鑑別していくことができます。

 

 東洋医学は現代に作られた医学ではないので科学技術も稚拙な時代なので、解剖学の知識が少ない状態ですが、戦乱なども多くあった時代なので、遺体を目にする機会は多かったと思うので、現代ほどではないにしろ、解剖学の知識はあったと思います。

 

 血は身体の中を流れている物なので解剖学の知識が中心と言えますが、気は目に見ないものなので解剖学の知識とはつながりにくいですね。身体には、水が存在しているという解剖学の知識は入っていたはずなので、気血だけではなく、津液(しんえき)という概念も作られていきます。

 

 東洋医学は気血水の学問と言われることがありますが、身体の中に3つの物があるという思想が背景にあるのですが、これは現象・解剖として得られた知識と天地人三才思想という思想を合わせて使われている状態になります。

 

 気はさらに陰陽そのままの表現を入れた、陰気・陽気という寒の気、熱の気という概念も加えられていきます。ここまでくると、東洋医学を少しでも勉強していない人に取っては段々と理解しにくくなっていくかもしれませんが、基本は気であり、陰陽という分類していくことを加えたことによって、用語が分けられています。

 

 五行という考え方は東洋哲学の思想においては大切なもので、自然は五行から成り立っていると考えているので、人体も五行で出来ていると考えていけます。五行に対しても気を加えていくことができるのですが、それぞれに名前をつけてイメージしやすく、使えるものにするためには、解剖学の知識と現象を加えていかなければいけないので、東洋医学は臓腑という概念を使用していきます。

 

 臓腑は現代医学と似たような用語を用いていますが、完全に同じ訳ではないというのが、東洋医学を学ぶときに悩むポイントの一つにもなります。考えてみれば当たり前なのですが、東洋医学は解剖学の成立以前から存在している物なので、現代医学が東洋医学で用いている単語をそのまま流用したので、分からなくなっているところでもありますね。

 

 東洋医学では、臓腑の名前に気をつければ、五行で気を考えていくことができるので、5つのタイプに分けて考えていくことができます。さらに、陰陽を合わせて考えていくことができれば、5×2になるので、10タイプに分類を広げていくことができます。

 

 こうやって、東洋医学は、「身体は自然で気である」という「一つ」の概念から分類を加えていくことで、身体の状態を細かく分け、治療をしていきます。治療の最終目的としては、「一つ」に対して行うというところですね。

 

 臓腑や気血津液で分類をし、陰陽の分類を合わせて考えていくと、「一つ」であるものがどんどんと細分化をされてしまい、まとまりがなくなってしまうのですが、「経絡」という繋ぐ思想を加えていくことで、全身は繋がっていると考えていくことができます。

 

 ひとつひとつの物は別でもあるのですが、同じ物でもあり、繋がりがあると考えていくのが東洋医学の身体観なのですが、どうしても理解しにくいポイントになってしまうのは仕方がないところなのかと思います。

 

 何故なら全体の用語を知ってから、用語を繋げていくようにしないと、全てが繋がっているというのは理解できないので、理解していくためには、それなりに時間がかかりますし、一部だけを理解しても、全体像がイメージしにくいのですよね。

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