身体を触る時に意識をすべきこと

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 鍼灸に限らず、手技でも身体を触れていくときに意識をして、注意しなければいけないことがあります。

 身体の構造は、基本的には体表面から皮膚、皮下組織、筋組織、骨組織があり、筋肉は何層にも重なりあっている状態であり、何か一つだけということはありません。そうなると、身体を触れるときには必ず何を触れているのかに意識を集中していく必要があります。

 

 私は最初の頃は、深層の筋肉の話をされても、関節の話をされても触り分けることも知識もある訳ではないので、分からなかったのですが、臨床を積み重ねていくにつれ、触り分けが非常に大切だなと思うようになりました。

 

 いろいろなところに治療を受けていってみても、上手な方は触り分けが上手いし、何をしているのかが具体的だなと感じることが多くあります。

 

 皮膚の問題が生じていて、皮膚に対して治療を加えたいのであれば皮膚のみを触れるようにして、筋組織であれば筋のみを触れるようにして、骨組織は関節と関係しやすいので関節を触れるときは、その関節のみを触れるようにしないといけないです。

 

 触り分けるために必要なのは圧加減と方向が重要で、圧加減が少しでも強いと目的とした物を触ることができないですし、方向が少しでもずれると、目的とした物を触れることができなくなってしまいます。

 

 最初のうちは、触診のスキルがない状態になるので、どうしても強く押しがちで、表層に近いものを触りにくい状態になってしまいます。強く押してしまうと中の構造も触れにくくなってしまうし、関節を動かし過ぎてしまって、周囲の関節にも動きが出てしまうために、目的とした関節を的確に触ることができなくなってしまいます。

 

 さらに身体の構造に対する知識も少ないと、関節はどうやって動くのかイメージしにくいので、的確に関節を動かせないです。臨床が長くなると、教科書のような正確な知識でなくなったとしても、この関節はこの方向に動き、これぐらいの角度までは楽に動くことが多いというのを手で理解していくことが多いですが、手で理解するためには、治療の中で集中をしていかないと身につきにくいです。

 

 例えば、手のDIP関節の屈曲角度は80°になっていますが、PIP関節が軽度屈曲している状態であればスムーズにDIP関節は屈曲できますが、PIP関節の屈曲がない状態だと、DIP関節は屈曲しにくい状態になるので、DIP関節のみを動かしたいと考える場合は、PIP関節の動きが誘導されない状況で行うべきか、PIP関節の動きも誘導して行うかは分けて考えることができます。

 

 動物の動きは一つの関節だけが動いて成り立つことがないので、その他の関節の動きにも注意をしないといけないので、治療で関節にアプローチをしていく場合は、対象としている関節だけではなく、その他の関節にも注意を向けないといけないです。

 

 もちろん、関節だけではなく、筋肉も同様、一つだけで動くことがないので、一つの筋肉にアプローチをしているときにも、その他の筋肉についても注意をしていかないといけないことになります。

 

 身体は円形・楕円形をしていて、さらに太いところ・細いところがあるので、身体の構造をしっかりと理解しておかないと、方向がすぐにずれてしまいます。漫然と身体を触れていると、ずれているのが分からなくなってしまうので、圧を加えたときに、皮膚のずれがないかを確認しておいた方がいいですね。

 

 皮膚のずれがなくなるだけでも、身体を触れる感覚は大分変ってくるので、最初のうちは押したときに皮膚を牽引していないか目で確認をした方がいいと思います。

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