風邪で発汗すると治るのか?―東洋医学と風邪の発汗

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 風邪をひいて熱が出てくると、汗が出たらすっきり治るという経験は多くの人がしているので、風邪をひいたときには、布団をかぶって眠るという人も多いのではないでしょうか。

 発汗をするとよくなるという経験をしている人が多いので、風邪をひいたら発汗した方がいいと思うでしょうが、熱が出ても発汗しないでダラダラと風邪が続く場合もありますが、何が違うのでしょうか。

 

1.東洋医学で考える風邪

 東洋医学では、風邪は外邪によって生じると考えることが多く、風邪(かぜ)は風邪(ふうじゃ)という読み方で使われます。風邪と書くとどちらのことか分からないので、東洋医学で考える風邪(ふうじゃ)は風と表現していきます。

 

 風は外邪の一つであり、身体のバリヤー機能を壊し、他の外邪を侵入させるように働く性質があり、上へ行きやすく、移動しやすく変化しやすい性質があります。上へ行きやすいので、喉に痛みが生じたり、顔が浮腫んだりしてしまいやすいですし、移動・変化は症状が変わったり、移動したりすることなので、風邪のときには、身体のいろいろなところが不快になりますよね。

 

 風は単体で身体に影響を与えることが少ないので、寒か熱かを伴うことが多いので、東洋医学で考える風邪の状態では風寒と風熱が多いです。他の原因も存在しているのですが、まずは風寒・風熱から生じる状態を理解していくことが大切になります。

 

1)風寒

 風寒は外邪の一つである寒を伴うので、風邪の原因としては冷えをあげることができます。寒いところに長く居て、風邪をひいたようであれば、風寒による風邪症状が出たと考えていくことができます。

 

 寒は身体を冷やしていく働きがありますが、それ以外では、身体をこわばらせ、気血の循環を低下させる働きがあります。身体の表面の皮も縮められてしまうと考えていくので、発汗をしようとしても出すことが出来なくなるので無汗が生じることになり、悪寒が強く生じ、発熱が弱い傾向があります。

 

2)風熱

 風熱は外邪でもある熱を伴うので、風邪の原因としては暑さをあげることができます。夏に調子を崩して風邪を引いたのであれば、風熱による風邪症状が出たと考えていくことができます。

 

 熱は身体を熱くしていく働きがあるので、悪寒は少なく、発熱が強く出て、汗が出やすい傾向があります。

 

2.風邪と漢方薬

 東洋医学では風邪の状態を風寒・風熱で分けて考えていくことができるので、風寒による風邪の場合は葛根湯(かっこうんとう)が使われやすく、風熱による風邪の場合は銀翹散(ぎんぎょうさん)が使われやすい傾向があります。

 

 冷えているときには温める治療で、熱が強いときには冷やす治療になるので、葛根湯は身体を温める働きが強く、銀翹散は身体を冷やす働きが強いと言えます。東洋医学では身体の状態である「証」を大切にしていきますが、状態によって治療が変わるために、その時の身体の状態を把握することが大切だとしています。

 

3.風邪と発汗

 風寒の場合は発汗が少なく、風熱の場合は発汗していく傾向にありますが、風邪で身体が弱ってしまうと、しっとりと汗ばむような状況もあります。この場合は、身体の発汗調節を行う気の働きが低下をしてしまうので、発汗しないように止めることが出来ないことで生じると考えます。

 

 この場合は、外邪に対する抵抗力が低下しているので、身体の力を補いながら、外邪である風寒・風熱に対処する必要があります。

 

 外邪が身体に影響をした場合は、身体の深部まで侵攻していくことがありますが、身体の持っている力によって、だんだんと抵抗して、体表部まで押し戻し、外邪を排泄すると考えていきます。

 

 外邪の排泄では発汗という状態で、水とともに熱を取り除くと考えていくので、風邪で生じる発汗はよくなっていく証拠だと考えていきます。

 

 風寒の場合は、冷えによって熱が内側に押し込められていき、内側の熱が盛んになってしまうので、発熱という状態になり、身体全体が熱くなっていきます。風熱の場合は、熱が身体の内側まで侵攻してくることで、内側の熱が盛んになってしまうので、発熱が最初から生じやすくなります。

 

 通常は、外邪が身体に影響することで、悪寒が発生して、ふるえである戦慄が生じ、発熱、発汗していくのが東洋医学の風邪の状態になります。発汗したことで、外邪を除くことができるのですが、発汗後に外邪が抜けきらない場合は、身体が持っている力だけを外に排泄してしまうことになるので、発汗後に熱が下がらない場合はよくない状況だと考えていくことになります。

 

4.風寒と風熱の治療

 風寒と風熱の治療としては、寒熱の調整を行えるのが陽維脈と考えていくことができるので、陽維脈と関係する外関が使用されることがあります。基本的にはどちらの状態も身体の外側から侵入をしてきているので、体表部への治療が使われやすいです。

 

 肩背部へ吸角や知熱灸を行っていくこともできるので、身体の状態によって治療内容が若干変わっていきます。

 

 漢方薬も葛根湯と銀翹散が違ったように、身体の状態が違うと治療内容が変化をしていきます。漢方薬はその時のタイミングが重要になっていくので、風寒・風熱の状態でも、症状が変わってくると使用する漢方薬が変わってくるので、詳しい人に相談しないと分からないと思います。

 

5.まとめ

 風邪をひいてしまうと、身体がだるくて仕方がないので、治療院に来ない場合が多いですが、自分の治療では、身体の状態を分けて、漢方薬を服用したり、鍼灸治療を行ったりしています。

 

 風邪だと思ってもインフルエンザなどの感染症の場合があるので、身体の状態をしっかりと把握し、不安があれば医療機関を受診しておいた方がいいと思いますよ。

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