打膿灸は親指大の艾炷を皮膚の上にのせて焼き切る方法で、火傷をさせた後に特殊な軟膏をつけて膿を出していく方法で、化膿灸や瘢痕灸(はんこんきゅう)と言われることがあります。
昔は多くのところで行っていたようですが、現在は、東京都墨田区の遍照院灸点所、大阪市南区の無量寺ぐらいでしか行っていない治療方法です。他に行っているところがあるのかもしれませんが、私は分からないです。
打膿灸は「弘法大師遍照院内遍照院灸点所」という名前から「弘法の灸(こうぼうのきゅう)」とも言われていますが、伝統がある治療法なので、家伝灸の一つとされています。身体にのせた艾が燃え切るまで数分かかり、しかも熱さが持続をするので、かなりハードな治療法になります。
鍼灸学校でも名前は紹介されますが、実際の実技として習うことはない物だと思います。やっている学校があったら、学生が逃げ出してしまいそうですね。もし、学校でやらなければいけないと言われたら、覚悟が必要ですね。
大きな艾炷をのせて火傷をさせ、軟膏を塗ることで膿を出し続けるお灸になるので、治療を受けた痕は、その後もずっと残ります。たまに高齢な方を治療していると、若いときに打膿灸を受けたことがあるという人に出合うことがありますが、打膿灸を行った後は丸い痕として残っているので、年を取ってもすぐに分かりますね。今までで数名お会いしたことがあり、お願いをして観察させてもらったことがあります。
打膿灸はいろいろな疾患に対して用いているのですが、お腹の調子が悪い、肩こりが酷いという人は多く受けていたようです。
何故、このような治療方法があるかと言えば、お灸で火傷をさせることで、火傷を修復している間は生命力が強くなると考えれば、大きな傷がつけばより持続効果が高いと言えますね。
昔は車、バス、電車がない状態なので、ちょっと治療を受けに行こうとしても歩けば数時間~数日かかるのは当たり前ですし、少し不便なところに住んでいれば、もっと時間をかけて治療院に行くことになるので、帰る間、帰宅してからも治療が続く方がよかったのでしょうね。
古代からの療法では火傷をさせる物としていろいろ存在しているようなので、打膿灸もどうにかして効果が持続できないかを考えた結果、生み出されたものなのでしょうね。
打膿灸を行ったことがある方に、その後の症状はどう変化をしたのかと尋ねたことがあるのですが、皮膚が治るまでは確かによかったような気がしたけど、膿が出て大変だったと言っていましたね。具体的にどうだったかは高齢な人が多いので覚えてないと言われました。
そう考えると、数週間~数か月は効果が持続したのかもしれないので、期間を開けて通う治療としてはいいのかもしれないですね。
現在は交通の便もいいので、数か月単位で治療を考えることは少ないでしょうし、治療として行うことも少ないでしょうけど、人の自然治癒力がどこまで影響するのかを考えさせられますね。
今まで伺った方は詳細なことを覚えていませんでしたが、治療前後の身体の状態を詳細に書き残していたら、実はいろいろな効果が発生していたのかもしれないですね。
多くの人は、過去に痛みや不調があったというのは覚えていても、どのような状況だったか詳細には覚えていないですし、数日前の夕飯だって忘れてしまいますからね。
現在でも残っているということは、需要があるということにもなるので、やってみなければ分からない効果も多いのかもしれないですね。または、何をしても改善しない人が試してみる治療になっているのでしょうか。
そう考えると、一般の人が考える鍼灸のイメージは私に取っての打膿灸のイメージのような状態なのかなと思いました。何だか分からないけど、痛くて熱そう、けど効果もありそうだけど怖いという感じですかね。
私自身は通常のお灸を使う治療が好きですし、自分でも出来るので、通常のお灸療法をこまめに行う方法を選ぶと思いますが、どうしようもない状況になったら打膿灸も考えてみるかもしれませんね。
打膿灸では膿が出続けるような特殊な膏薬を使用していくので、特殊な膏薬を使用しているので、簡単には行えないですね。打膿灸の膏薬は京都の「無二膏」を使うようですね。