郄穴と絡穴の違い―絡病と絡穴

Pocket

 ツボは、腧穴(ゆけつ)と言われ、作用が強い物は特定の名前がついていきます。五行でまとめられているのが五行穴(五兪穴)で、特徴的な原穴、絡穴、郄穴、兪穴(背部兪穴)、募穴は五要穴と言われています。

 五要穴の中にある絡穴は慢性病、郄穴は急性病に使えると言われていますが、どういった違いがあるのでしょうか。

 

1.絡穴

 経絡は経脈とそこから分岐する絡脈があり、全身くまなく分布をしている状態になります。経脈は正経に12あり、奇経が8ありますが、正経はそれぞれが繋がっていくことで全身を循環していることになります。

 

 臓腑には表裏という概念があり、表裏の結びつきを強めていくのは、経別という概念もありますが、絡脈も表裏を結ぶ働きがあります。絡脈は絡穴から表裏経に向かうので、絡脈を使用すると表裏経を同時に使用することになります。

 

 経別という考え方は、過去のブログで詳しく書いてあるので、参考にしてみて下さい。

「経別」

 

2.郄穴

 郄穴の郄という漢字の意味は、閉じる、しりぞく、隙間という意味が含まれていて、経絡の経気が深く集まる場所として考えられています。隙間という意味があるので、骨や筋の隙間にあるので、取穴をするときに、隙間を意識するといいですよ。

 

 郄穴だけではなく、多くのツボが陥凹部と関係をしているので、隙間を触れるように触診技術を高めていくことが必要なので普段から、触診技術が向上するように意識をしておかないといけないです。

 

 隙間を探すだけではなく、隙間がどの方向にあって、どれぐらいの深さがあるのかを考えるようになると、治療効果が上がっていくと思うので、ツボの中の状態を意識して触っていくことも大切になりますね。

 

3.東洋医学の病の考え方

 東洋医学では陰陽論を使用して物事を考えていく物なので、身体の外側から内側へ病が進行するという考え方があり、代表的な物が風邪(かぜ)ですね。寒さや暑さによって風邪(かぜ)をひき、咳が出たり、お腹の調子が崩れたりしていく状態を観察した結果ですね。

 

 その他の病気も進行していくと中に入っていくと考えていくのですが、どこに入るのかを考えていくと、身体の中には血という大切な物が流れていて、血が身体を栄養していく物で、血が多く出ると亡くなってしまうということで、病が血に入るという考え方があります。

 

 代表的なのは、温病(うんびょう)で使用される衛気営血弁証で、衛から始まり、血に病が進行していくという考え方ですね。こういった病が身体の中に進行していくという概念を提唱したのは、温病学(うんびょうがく)を創設した葉天士(1667~1746年)と言われ、久病は絡(や血)に入る(久病入絡:きゅうびょうにゅうらく)というのを提案しています。

 

 葉天子は著作を残していないのですが、門人によってまとめられたとされる『臨証指南醫案』巻四積聚のところでは、久病入絡についての考え方が出てきています。この考え方へ経絡の概念で考えていくと、病の最初は経脈に影響を与え、経脈が病むことで、絡脈や臓腑へ障害を引き起こしていくと考えていくことができます。

 

 この考え方からすると、急性期の病は経脈の病で、慢性期の病は絡脈の病ということになりますね。

 

4.郄穴と絡穴の使い分け

 郄穴と絡穴は病の進行とも関係をするので、郄穴は、経脈に問題が生じたときに治療するのにいい場所であり、絡穴は、経脈の病が進行して絡脈に入り込んでしまったときに治療するのにいい場所だということが分かります。

 

 郄穴は急性病、絡穴は慢性病という単純な分類がありますが、これは今まで病とはどういう状況で発生していくのかを考えた人達がいて、治療するのにどこがいいのかを考えた結果を我々は甘受をしていると言えますね。

 

 東洋医学では病について気や経絡などを中心で考えていくので、数値や画像で診られるものではないですが、病の状態について、経脈や絡脈をイメージしながら郄穴や絡穴を使っていくと、少しは身体に対するイメージが付くのではないでしょうか。

 

 急性期だと考えていたのが、実際は過去の障害によって絡脈によって引き起こされたのであれば、絡穴を使用しても効果があるときがあるかもしれないので、急性期だからと言って郄穴で終わりにするよりは、問診をしっかりすることで、病の状態を考え、絡穴でも対処ができると考えていくと、治療の幅が広がるのではないでしょうか。

 

5.まとめ

 郄穴と絡穴は急性期・慢性期という違いで何となく使用してきていたのですが、病の進行と合わせていくことで、身体の状態を深く考えることはやっぱり大切で、その人の時系列に沿った問診をしていくことも大切だなと思うようになりました。

Pocket