近年、流行ってきているのは超音波で身体の対象物を見ながら、鍼を刺入していく方法がありますが、実際の所どうなのでしょうか。先日、たまたま超音波器具を持っている人に協力してもらって超音波鍼灸を行うことが出来たので、私が感じたことをまとめてみたいと思います。
1.超音波機器とは
超音波機器はエコーと言われることもあり、妊婦検診で胎児の診察、腹部の診察などでも使用されています。内部の構造を診ていくことができるので、非侵襲的に体内を診ることができるので、患者負担も少なく便利な医療機械です。超音波治療器とは違うので注意が必要ですね。
エコーは、薬機法で電子血圧計と同じ管理医療機器(ClassⅡ)に分類されていて、医療保険を使用しないのであれば誰でも使用することができます。医療保険を用いていく場合は、医師・看護師・臨床検査技師・診療放射線技師が用いていくことができます。
エコーでは画像を診ていくことで、身体の中の構造を診ることができますが、診断する権利は医師のみなので、例え、鍼灸師が何かを見つけたとしても、診断はできないので、注意が必要ですね。そのような場合は、○○がエコーによって疑われるという書き方で病院への紹介状を書き、「御高診、御加療」をお願いしないといけないです。
鍼は軟部組織に刺入していくので、軟部組織の状態を診ることができるのは、非常に便利ですし、刺入した先にどういった構造物があるかを確認することができるので、リスクを軽減していくことができます。
エコーは、面白そう、やってみたいと思っても簡単にはできないハードルが値段です。エコーは病院で導入されることが多いためなのか、値段の表示がホームページ上にないので、どれぐらいの値段がするか分からないのですね。
購入した人に聞くと、車一台分ということなので、100~数100万円の商品が多いみたいで、機能と値引きで値段がかわると思います。これぐらいの値段だと試してみたい程度の気持ちでは導入できないですし、一人院長でやっているような鍼灸院だと導入するのが難しいでしょうね。
整骨院だったら、人数も多く来院するし、骨折しているかどうかの確認をするために導入を検討するところもあるでしょうけど、それでも簡単に入れようとは思えない値段でしょうから、導入する上ではコストの問題が生じると思います。
2.エコー鍼灸の効果
エコー鍼灸では軟部組織の構造をみながら刺入していくことができるので、筋膜リリースやトリガーポイントに対しての治療として利用されることが多いのではないでしょうか。
手の感覚などで行うのと違い、エコーで見た筋肉を実際に動かしてもらえば、狙いたい筋肉がどこにあって鍼がしっかりと当たっているのかを診ていくことができるので、狙い通りに治療が行えるのは利点だと思います。
軟部組織を診ていくことができるので、神経・血管に対してもアプローチしやすいので、運動器疾患、痛み、血流障害がある場合に治療しやすいです。
3.エコー鍼灸をやってみた感想
一言、「面白い」でした。エコーだと深部の構造を見ることができるので、同一点にエコーを当てた状態で関節を動かせば、筋肉が層をなしている状態で、動く筋肉と止まっている筋肉が見ることができるので、深さで構造を理解していくことができます。
体表から指標となる烏口突起や大結節などはいつも触れていますが、エコーを当てて一点で見ようとすると、なかなか上手くいかないことも多く、エコーで内部構造を見るのに慣れていないと、鍼を行うまでに時間がかかり、かなり手間が増えるだろうなというところでした。
エコー自体は詳しくないので、深部で何が見えているのか分からなかったですが、大きな筋肉と筋肉の間、筋肉の中に何かの線が見えていて、動きによって圧迫され厚みが変化するので、解剖学の書籍や3D解剖学では学べない経験でした。
エコーを使用するためにジェルを用いているので、鍼を刺入しようとする場合には手にジェルがついてしまって鍼が滑りやすくなるし、助手がいなければ押手は構えられないですね。もし、構えたとしても、押手はジェルまみれになってしまうので、鍼は片手で操作しないといけないので、3番の鍼を使用しないと難しかったです。人によっては2番でも出来るという人もいるかもしれませんし、5番ぐらいないと難しいという人もいるでしょうね。
エコーで見えているのは全体を見えているのではなく、1点(線上)でしかないので、エコーで見えているところに適切に鍼を刺入していかなければいけないので、エコーの取扱、鍼の取扱、エコーのところまで刺入していくのが難しかったです。
4.エコー鍼灸で分かったこと
エコーを診ていくということは、見た物に捉われてしまうので、臓腑や経絡に対してのイメージが薄くなるのは確かで、運動器疾患に対する対処になりやすそうかなと思い増したが、慣れてきて、経験を積めば応用はいろいろと可能なのかなと思いました。
私の中で一番の収穫は、エコーで画像を出しながら目をつぶって鍼の操作をしてみました。せっかくエコーで見ているのに意味がないと思うでしょうが、エコーは自分で購入した訳ではないですし、普段の治療に生かすためには、手で感じているのはどのような構造物なのかを理解するためにやってみました。
いつも鍼を刺入していって鍼が止まるところで刺入をやめますが、その感覚と一致するものを画像で確認したところ、筋肉と筋肉の間、筋肉の中に見えた線、血管、神経などの構造物でした。
ということは、今までよく分からないまま、手の感覚に従って鍼をしていましたが、構造物を少しは見分けていたのだというのが分かりました。構造物の硬さの違いに関しては、血管・神経の方は力が強く厚い感覚で、筋肉に関する構造は弾力が弱く薄い感覚でした。
感覚だと分かりにくいですよね。例えるなら、血管・神経はゴムのような感じで、筋に対応するのは薄い紙ですかね。余計分かりにくくなってしまったらすみませんが、こればかりは上手く伝えきれないです。
鍼の響きですが、筋肉と筋肉の間、筋内に見えた線で生じやすく、神経はやはり電撃用かピリピリとしたものでした。血管は少しズーンと感じるかな。響きと刺入スピードは関係しそうですが、筋肉が鍼に引きつられて大きく動いているようなときも、響きが生じやすいので、無理なく、負担ない刺入だと響きを感じにくく刺せることができるのかなとも思ったので、技術と響きは関係性があるのかもしれないですね。
5.エコー鍼灸は普及するか?
結論としては、エコーが高いので個人院での導入は難しいでしょうし、普及するには、道具が安価にならないと難しそうですね。販売側からしたら、値段がどんどんと下がっていくのは嫌でしょうし、作るコストもあるので、一気に値段が下がるのはないでしょうね。
エコーで情報を得たら、機械で処理していくので、機械の性能が上がってくると、値段が下がる可能性がありますが、まだまだ先のような気がします。
やってみて思ったのは、エコーという見えることで刺すことがコントロールされるので、経絡を意識した治療をイメージするのが難しくなりそうなので、全身治療となると導入しない人も多いだろうなと思います。
局所に関しては動きが悪いところは、はっきりと見えるので、局所治療に特化をしたいのであれば、非常に有用性が高い物だと思いますね。
6.まとめ
今回は、ご厚意に甘えさせて頂いて、エコーを存分に触ることが出来ましたが、今まで見えない状態で刺入していたのが見られたので、非常に楽しかったです。毎日、通って練習したいところですが、先方の都合もあるので、また触らせてもらいたいなと思います。