乗侮と病証

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 五行は相生・相克という関係がありますが、相克関係をより細かく分けた物に乗侮という関係があります。

1.乗侮

 乗侮(じょうぶ)の乗は相克が強くなった状態を現し、侮は相克が逆になってしまった場合に用いられていくことになります。

 

 例えば、木は土を克しやすいので木克土と言われていきますが、木が強すぎて土を克し過ぎる状態を木乗土、土が弱すぎて木が克し過ぎる状態を土虚木乗、土が強すぎて木を土が克す状態を土侮木、木が弱すぎて土が木を克す状態を木虚土侮と言います。

 

 慣れない内は、乗侮は意味が分かりにくいですが、相克の方向に強く向かうのが乗、相克の逆方向に向かうのが侮になります。行きすぎる状況には原因があるので、虚と言う単語を含みながら説明をしている状態ですね。

 

 正常な身体は五行の相生・相克という働きで、どれかが突出している訳ではなく、相互に支え合っている状態が正常という考え方なので、相生・相克という関係があったとしても、どこに向いやすい、どこに影響をしやすいという程度になります。

 

 身体が異常な状態になってくると、臓腑の機能が失調してしまうために、相生・相克のバランスが崩れてしまうために、病の伝変と波及では乗侮の関係を考えていくことが必要になっていきます。

 

2.乗と病証

 乗の関係で生じやすいのは、木克土である肝気横逆になります。肝気横逆は肝気のうっ滞が強くなり、脾胃の影響を及ぼしてしまっている状態なので、肝胃不和・肝脾不和と呼ばれます。

 

 この場合の状況を考えてみると、脾胃の働きがもともと弱かったために、肝気が脾胃に影響を与えてしまった状態は、土虚木乗になります。脾胃の働きは問題なかったのにも関わらず、肝気のうっ滞が強くなってしまった状態は木乗土になります。

 

 乗の状況を理解していくことは、治療の病態把握に取っても大切になるので、単純に木克土だけで終わりにしてしまうよりは、乗の状況を把握することが大切になると思います。

 

 その他の臓でも乗の病証を考えていくことが出来るのですが、木克土よりは多くはないのではないかと思います。

 

3.侮と病証

 侮の関係も乗と同様に病証として発生していくと考えていくことが出来るのですが、病証としてはあまり多く書いてある訳ではないので、弁証名から考えていくと、肝気犯肺が侮の関係として考えていくことができます。

 

 五行の相克では、金は木を克するのですが、肝気犯肺では木が金を克している状態になります。この場合も、乗と同様に状態を詳細に見ていくことができるので、肝気が強い状態で、肺を損傷しているのであれば、木侮金と表現することができます。

 

 肺の機能が低下していて、木が結果的に克してしまっている状態は、金虚木侮と表現していくことができます。これで、どちらの問題から生じたのかを考えていくことができるので、病能の理解と治療に役立つことになります。

 

4.まとめ

 乗侮はあまり使う単語ではないですが、乗侮の状態を理解していくことは、病の伝変と波及を深く理解していくためには大切なのではないかと思いました。普段の臨床の中で捉えていた病能をもう少し見直してみてもいいのかなと思うようになったので、自分の中では新しい発見でしたね。

 

 まだまだ理解が完全ではないですが、他の弁証や身体の状態に対して乗侮を考えていっていたいと思います。

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