肩貞(けんてい)

Pocket

 肩貞は手太陽小腸経の経穴で、肩関節の後ろで、腋窩横紋の上方1寸にあります。筋肉は三角筋、小円筋、上腕三頭筋長頭と関係しているので、筋枝は腋窩神経・橈骨神経と関係し、皮枝は上外側上腕皮神経になります。

1.肩貞の名前の由来

 肩貞の「肩」は「かた」ですが、「貞」は「正しい」という意味があります。肩にある経穴なので、名前もひねりがなく、そのままという感じがしますね。「正しい」という意味から、肩の根本、肩の運動の根本、肩を動かしても移動しないという意味もあるようです。

 

「正しい」という意味があるので、邪正と対比して考えることが出来るので、熱という邪が肩に停滞して、痛みや麻痺して腕を挙げられないような人に用いるというのが『銅人腧穴鍼灸図経』に載っているようですが、確認はしていません。

 

2.肩貞の位置

 肩貞は、腋窩横紋の上方ですが、取穴をするときには三角筋後部線維の下端ギリギリのところなのではないかなと思います。三角筋の上から刺入するより、三角筋後部線維ギリギリの方が効果は高いのではないかと思っていますが、経穴の図などを見ると、三角筋の上に記載していますね。

 

 三角筋の上から刺入するようだと、深部に棘下筋と上腕三頭筋が対応しやすそうですね。三角筋の後部下端であれば、小円筋、上腕三頭筋に関わりやすそうです。もちろん、鍼の刺入は三次元で行うことができるので、対応しやすそうだというのは、体表面から直刺で刺入した場合の話しなので、実際は刺入方向を気にしないといけないですね。

 

3.肩貞の穴性

 穴性としては、手太陽小腸経に対する経絡走行に対する治療や外邪を取り除く働きがあるようで、肩の症状に対する治療が出てきていますが、その他はあまり記載がないようですね。

 

 肩の症状にしても、肩貞だけではなく、他の経穴でも対処できるので、どちらかというと、局所治療を行わない限りは、日の目を見なそうな経穴ですね。現代医学的な治療、局所治療をする人に取っては当たり前でも、遠隔や体質治療を中心にする人に取っては忘れられそうな感じですね。

 

4.肩貞の使い方

 肩貞は比較的好きな経穴の一つなので、肩の治療だけではなく、背部痛、肩凝りにもよく利用していきます。手太陽小腸経は肩・頚部・顔に走行している経絡なので、経絡にゆがみが生じているようであれば、肩・背部・顔にもひきつれが生じやすいでしょうし、経絡的に考えても利用する価値があると思います。

 

 もちろん、もっと遠隔でもいいのではと言われればそれでもいいと思いますよ。

 

 現代医学的に考えれば、三角筋、小円筋、上腕三頭筋と関係しているので、肩貞に刺激を行うと、これらの筋肉が緩むことになり、肩甲骨の動きがスムーズになりやすくなると思います。

 

 個人的には、首肩こりがあるような人、肩周りの動きが悪い人に鍼を行うと、筋肉の躍動・跳動が起こりやすいような気がします。躍動穴という単語はないみたいですが、跳動穴と言う単語は中国サイトで引っかかるので、中国では概念としてありそうですね。

 

 跳動を起こすのは、普通に刺入をしていっても発生することが多いですが、少し刺入スピードがある方が発生しやすいかなという印象があります。ただし、跳動が発生しやすい場所に触れるようにしないといけないので、深さとスピードも大切なのではないかと思います。

 

 ゆっくりでもポイントに当れば発生することがありますが、何度も起こすのは難しいので、跳動が発生した深さを覚え、少し引き抜いてから、そのポイントに当てると再現することが多いですね。跳動が出るとすっきり感が生じることも多いですが、何度もやると重くなり過ぎてしまうので、跳動の練習は鍼灸師同士で行うのがいいですね。

 

 ということで、私は肩貞は治療としても好きな場所になりますが、跳動の練習をするのにもいい場所だと思っているので、個人的には好きな経穴の一つですね。

Pocket