刺鍼練習器としてぬか枕はいいのか?

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 ぬか枕は刺鍼練習機として利用されていきますが、本当に練習器としていいのでしょうか?

 私は使ったことがないですが、持っている人に触らせてもらったことがありますが、いい点と悪い点があるなと思ったので、まとめてみようと思います。

 

1.ぬか枕

 ぬか枕は、米ぬかを固めて作る刺鍼練習器になります。ぬかはそのまま利用してしまうと、虫が湧いてきてしまうことがあるので、炒るという作業が必要です。色としてはキツネ色になるまでしっかりと火を通して、ぬかの水分を飛ばします。

 

 ぬか枕を刺鍼練習機として利用するのは、押手をしっかりと構えないといけないので、押手をしっかりとおける大きさの器を用意しないといけないです。ただ、しっかりとぬかを入れて硬くしないといけないので、硬さがある状態を作るのに詰めて、押して、詰めて、押してを繰り返していかないといけないので、大変な作業だと思います。

 

 ぬかの量が少ないと、硬さが無くなってしまいますし、刺鍼している間にぬか枕もずれていってしまうので、硬い物を作るのが大変でしょうね。ぬか枕は、1974年の『鍼術秘要』という書籍に図が載せられています。

 

 今は、ネットでいろいろな書籍をみられる状況になっていて、京都大学貴重資料デジタルアーカイブでみることができます。

「ぬか枕」(『鍼術秘要』)

 

2.その他の練習法

 鍼の練習方法としては、ぬか枕で押手を構え、鍼を扱えるようになったら、今度は、硬物通し(硬い物、桐板などを鍼で刺す練習)、浮き物通し(水に浮かせた果物などを刺入する練習で押手の力を抜く練習)、生物通し(動物に対して痛みをなく刺入する方法)を行って人体への刺入になっていきます。

 

 現在は、動物への刺入は獣医にしかできないので、鍼灸師が行うことができないので、練習方法としては、ぬか枕、硬物通し、浮き物通しがあるので、鍼を扱う訓練はいろいろと分けて行うことが必要になります。

 

 硬物通しは、硬い物を鍼で刺していくので、段々と鍼が入っていく刺入力の訓練として非常にいいですね。鍼の扱いも雑にならずに、曲がらないように行っていくことができますね。板などは私もやってみたことがありますが、銀鍼だと時間がかかりますし、雑な扱いで旋撚をすると、鍼根のところで切れてしまうので、鍼の扱いは丁寧になるでしょうね。

 

 浮き物通しは、浮いた物に手を置いて鍼を刺入していくのですが、浮いた物を強く押してしまうと、水が外にあふれてしまうので、押手の力加減を練習するのに適しているでしょうね。

 

 鍼灸での押手の重要性に関しては過去のブログにも書いているので参考にしてみてください。

鍼灸の押手の重要性

 

3.ぬか枕のいい所と悪い所

(1)いい所

 ぬか枕のいい所はサイズもいろいろと作ることができますし、手を置いて鍼をまっすぐに押す、切皮の叩き方や叩く場所を決めるのに、痛みも出にくいし、入りやすいのでいいのではないでしょうか。

 

 押手を十分におきながら刺入できるので、鍼に慣れていない初心者に取っては、手を置く訓練として非常にいいのではないでしょうか。高さや丸さも融通が効くので、作るのに慣れれば自分の手にあった物を作れるのではないでしょうか。

 

 作るのに慣れるということは、鍼の分野に入って時間が経っている状態になるでしょうから、その時には、生体での練習の方が実地に近いのでいいと言えますね。

 

 初心に戻って練習するのもたまには必要なので機会があったら作ってみて、患者さんへの紹介、触れてもらうのはありかもしれませんね。

 

(2)悪い所

 悪い所と書きましたが、道具は使いようなので、そのままの、ぬか枕でも悪い訳ではないですが、ぬか枕への工夫という言葉の方が近いかもしれないですね。

 

 ぬか枕は、中身が「ぬか」だけになってしまうので、鍼を刺していく感覚に変化がないので、生体での刺入感覚の練習にはなりにくいと思いました。実際にぬか枕に刺入したことがありますが、多少の硬さは感じても、生体にあるような何層もある抵抗感がないので、刺す技術が向上していくと、中の感覚を理解していくのは弱いなと思いましたね。

 

 刺入感覚も鍛える刺鍼練習としては、ぬか枕の中に、紐や木材を入れたりすると、鍼先の感覚が研ぎすまされそうですが、どこに何が入っているか知っている、どの深さにあるのかはっきりと分かるという状況じゃない限り、本当に当ったのか分からないので、異物をぬか枕に入れるのは現実的ではないですね。鍼の刺入感覚についてはこちらのブログも参考にしてみてください。

鍼の刺入感覚とフルーツゼリー

 

 現在は、刺鍼練習器として硬さが違う物がメーカーによってあるので、そちらを利用した方が、鍼の構えだけではなく、硬さの違いという刺入感覚も練習できるので、道具の方が応用範囲は広いですね。

 

 ぬか枕は身近にある物で作れると言えますが、ぬかも枕に利用する適量を手に入れるのは苦労するでしょうから、その労力を使うのであれば、時間は費用とも置き換えられてしまうので、道具を購入した方がより練習に時間を使うことができますね。

 

 もちろん、自分で作った物なので、愛着が湧いて練習できるとも言えますが、一生使うということはないでしょうから、自分の目的にあった練習をするのがいいでしょうね。

 

 と言っても、学校によって違うので、最初の段階の練習は、学校のやり方に従うのが現実的になりますね。

 

4.まとめ

 ぬか枕は刺鍼練習器として使われていますが、押手を安定させて、鍼の刺入姿勢を作るのには非常にいいと思いますよ。特に初めて鍼を持つ時は、手をどうしていいのか分からないですし、切皮の力加減も分からないので、練習としては非常にいいでしょうね。

 

 物は痛みを感じないし、いくらでも出来るので鍼の練習で道具を使うのはいいですね。私は、鍼を指すようになってからは、ベッドや床に鍼をしてみました。

 

 ベッドはタオルが重ねてある状況だと、切皮は簡単でも、その後のベッドの合皮が硬いので、刺入感覚が変わるのを理解できるのでお勧めですが、折鍼してしまうとベッドに鍼が残ってしまうので、鍼の取り扱いはもちろん注意しないといけないです。

 

 身の回りの物は硬さが違うし、大きさもバラバラなので押手、刺入感覚が鍛えられます。実際の身体でも、背中、お腹という大きい場所だけではなく、前腕、手指、頚部などの細かいところがあるので、いろいろと実験してみるのがいいですね。

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