めんげん(瞑眩)

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 めんげん(瞑眩)は好転反応とも言われ、東洋医学ではよく言われる表現で、整体などでも利用されている言葉です。瞑眩は治療後に生じる不快感やだるさ、下痢などの好ましくない症状も出ることがあるので、瞑眩で生じる症状の定義がありません。

1.鍼灸治療の効果

 鍼灸治療では、身体のツボを刺激することで自律神経に作用し、血流がよくなり、全身へ影響していきます。自律神経は、内臓や血管の働きを調整しているので、呼吸や心臓、血管、体温調節、排便、排尿などの生命活動に深く関与しています。生命活動に関与する自律神経に働きかけるので、鍼灸治療の適応は非常に広くなりますし、影響も多岐にわたります。

 

 例えば、冷え症があるような人に対して鍼灸治療を行うと、自律神経に働きかけ、血流を増大して冷え症をよくしていきます。身体のメカニズムは非常に複雑になっているので、個人差もありますが、鍼灸治療は自律神経を介して治療するので、その刺激が全身にも及ぶことになります。

 

 治療をしているとよくあることですが、例えば、肩凝りと冷え症があって、冷え症の方が辛いので鍼灸治療をしていたら、肩凝りがよくなって、排泄・睡眠がスムーズになったけど、冷え症はもう一息ですというように、効果にも個人差が生じることがあります。

 

 自律神経は交感神経と副交感神経があり、交感神経がアクセル、副交感神経がブレーキとも言え、交感神経があることによって身体が活発に活動することができ、副交感神経があることによって休息や栄養を取ることができます。どちらも非常に重要なのですが、日常生活では交感神経の方が強くなりやすいので、治療をすることで、交感神経と副交感神経のバランスを調整しています。

 

2.瞑眩とは

 瞑眩は中国古代の文献である『書経』(しょきょう)に書かれている言葉です。『書経』は時代によっては『尚書』(しょうしょ)とも呼ばれている書籍です。瞑眩の言葉としては、薬を飲むと瞑眩し、瞑眩がないとよくならないと書かれています。

 

若薬弗瞑眩、厥疾弗瘳。若跣弗視地、厥足用傷。瞑、眠見反。眩、熒絹反。跣、蘇典反

 

 瞑眩で生じる症状は、発熱や下痢が生じてしまったり、症状が酷くなってしまったり、だるさが強くなってしまったり、貧血になってしまったりと様々な物が含まれるので、一般的には治療が終わった後に生じる好ましくない身体の反応や症状と言えます。

 

 瞑眩は、数時間から数日と人によって違いがあります。治療を受けた人にとっては好ましくない反応が多いので、鍼灸や漢方、手技治療では瞑眩に対する説明がよく行われています。瞑眩自体は、どのような症状が出るかを完全に予測するのは不可能なので、初めての治療では、加減をしながら行っていくことが多いです。あまりにも辛い瞑眩が生じてしまったら、患者さんも辛いですからね。

 

3.瞑眩は何故起こるのか?

 鍼灸治療は自律神経に作用することで全身の状態を変化させ、身体の状態をよくしていく治療です。鍼灸以外の手技療法、漢方でも同じような働きをするので、瞑眩という言葉が広く使われています。

 

 鍼灸治療では自律神経に働きかけるので、痛みや症状がある場所だけではなく、影響は全身に及びます。そのために、症状以外の反応が現れることがあり、好ましい反応であれば、眠りにくかったのが眠りやすくなった、便秘だったのが正常になったということもあります。どんなことでも、いい物だけではないので、好ましくない反応も一つの変化になるので、好ましくない反応のことを瞑眩と呼び、身体が変わっていくサインとして捉えていきます。

 

 例えば、凄く美味しい物は高いことが多いので、美味しい物を食べるのであればお金を失いますが、満足感は高いですよね。美味しくない物は高くないことが多いので、お金は節約できても、満足感は低くなりますよね。

 

 身体は一日で完成するものではなく、時間をかけて変化していくのが正常なので、緩やかな変化であれば何も感じないので、身体に出てくる症状も日々、年月の積み重ねになります。それだけ積み重ねた物を一気に変えていくので、身体に取っては大きなストレスでもあるので、好ましい反応・好ましくない反応がともに生じてしまうことがあります。

 

4.瞑眩はよくないのか?

 瞑眩は好ましくない反応になるので、身体が変化していくサインだとしても患者さんに取ってみれば辛い状態になるので、治療者は調整していくことが多いです。ただ、私もありますが、ここで大きく変化をさせておかないといけないという場合は、瞑眩が生じても大きな変化を狙うことがあります。

 

 例えば、来月に非常に大切なイベントがあり、そこまでに身体を整えておかなければいけないのであれば、回復までを考えると大きな変化を狙っていけるのは1~2週間で、微調整に1~2週間として考えると、最初の2週間は大きな変化を狙うので、瞑眩が生じても仕方がないかなと考えるときがあります。

 

 こういった場面で多いのはスポーツ選手で大会前にしっかりと整えたいというのがありますが、どのような人でもありえます。他には、冬になると症状が変化しにくくなるなと思えば、その前に治療でしっかりと身体を整えたいと考えることがあるので、瞑眩は出ても仕方がないかなという考え方になるときは治療者として持つ人は多いのではないでしょうか。

 

 もちろん、瞑眩で辛い症状が出てしまったら苦しむのは患者さんなので、どこまでの瞑眩を予測するのかは治療者に取っては非常に大切なのですが、全身へ影響していくので完全な症状予測は非常に難しいところです。

 

5.まとめ

 私自身は、瞑眩はない方がいいとは思っていて、治療では刺激に注意することが多いですが、自然と、瞑眩までいくところまで治療して、患者さんに説明しているときがあるので、瞑眩はダメだとは言えないです。

 

 瞑眩の出方も含めて治療だと考えてゆくのはいいことだと思いますが、治療者も患者も人間なので、100%はありえないことですから、やはり瞑眩の説明と瞑眩への理解は重要なのではないかと思っています。

 

 私自身は、瞑眩はあまりない方ですが、治療を初めて受けたときは、とてつもない眠気、下痢、だるさが生じたことがあります。継続して練習や治療を受けているので瞑眩が生じることは、ほとんどなくなりましたが、練習でやり過ぎると、下痢をしてしまったり、頭痛が生じてしまったりすることは今でもあります。そういう時は、休んで身体が変わっていこうとする声を聞くようにしています。

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