鍼灸が普及しない理由

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 鍼灸は効果もあるし、熱意をもってやっている人も多いですが、普及していないですよね。以前と比べれば、美容鍼灸や情報発信している人が増えたので、鍼灸を知っている人も増えましたが、受療率からしたら普及しているとは言い難いですね。

 開業している治療院も多いですし、学校もそれなりにあり、高齢者の訪問鍼灸も伸びていて、若い人は美容鍼灸とジャンルが広がっているので、認知度は上がっているはずなのに、まだまだ受療率が低いのは何故なのでしょうか。

 

 さまざまな理由があると思いますが、鍼灸を受けない多くの理由が「わからない」ではないでしょうか。「わからない」だけでは「わからない」ですし、前に進めないので、何が「わからない」のか考えてみます。

 

1.効果がわからない

 鍼灸は効果があったという人もいるけど、あまり効果がなかったという人がいるので、効果がわからないと感じている場合があるのではないでしょうか。

 

 鍼灸は確かに効果的な治療だというのを私は理解していますが、それは、勉強をして知っている、治療をしてよくなっていく過程も知っているから、「わかっている」ということで、一般の人からしてみたら「わからない」ですよね。

 

 治療院などでよくなったという情報を発信したとしても、あくまで個人の治療院という点がマイナス材料になるでしょうし、逆に怪しいと感じてしまうのではないでしょうか。

 

 鍼灸を受けようという時点で現代医学の治療を受けているでしょうから、現代医学でよくならなかった物が簡単によくなると書かれても信じきれないですよね。

 

 鍼灸の効果が一回で出て、そこから劇的に改善したというのは確かにありますが、個人差があるので、絶対とは言い切れないところも、「わからない」ということに拍車をかけてしまうのではないでしょうか。

 

 例えば、ぎっくり腰のように歩けない状態から治療を受けたら歩けるようになったというのであれば効果を実感しやすいし、周りも理解しやすいでしょうが、全てが目に見える症状という訳ではないので、効果があったといってもわかりにくいですよね。

 

 その点で言えば、美容鍼灸は「顔」に特化した施術をして、はだつやという見た目と関わるので、認知度が上がってきたのではないでしょうか。

 

2.料金がわからない

 鍼灸の治療では自費治療が多く、一回の費用が3000~6000円ぐらいが相場でしょうか。個人対個人の仕事になるので、10分1000円の単価は必要になるので、他のサービスと比べたら高いわけではないのですが、食事や病院の通院と比べたら高いですよね。

 

 さらに安い料金で提供しているところ、サービス的に行っているところもあるので、値段がよくわからないのではないでしょうか。

 

 医療費全体で考えていくと、鍼灸治療は非常に安価な物ですが、個人の財布で考えていくと高いと感じるでしょうね。例えば、病院で負担割合が3割の人が3000円支払った場合、医療費全体としては10000円使っていることになり、7000円は社会が負担するので、税金などによって自分も支払うことになります。

 

 それから考えれば、鍼灸で支払った費用はそれで終わりになるので、10000円と比べたら半額ですよね。ただ、個人の財布から考えれば3000円の支払いと5000円の支払いの比較になると鍼灸って高いと感じるでしょうね。

 

 治療院によってのメニュー構成、単価の違いがあるので、一般消費者からしていたら、料金が分かりにくい業界でしょうね。

 

3.痛そうで怖い

 「怖い」が理由になっていますが、これも「わからない」ことからきています。以前のブログでも「怖い」ということや「わからない」ということには触れていますので、こちらも参考にしてみてください。

「鍼灸って怖い」

 

 治療を受けるということは、何かに困っていて、痛い・辛いという状態にあるので、さらに「痛い・辛い」のは耐えたくないという人が多いでしょうし、身体に突起物が刺さるのは痛いという経験もしているでしょうから、「痛くない」と言われても「経験」を超えるのは難しいのではないでしょうか。

 

 私も最初は痛くて嫌だと思っていましたが、痛いのは「技術が低い場合」や、「仕方がないとき」がありますが、痛みの度合いも分かっていて、それほど痛くないということを知っているので、今は怖くないし、痛みとしてはほとんど感じないですが、初めての人に取っては、やっぱり痛いと感じてしまうことは多いのではないでしょうか。

 

 鍼を刺入していくと、響きを感じることがありますが、響きも独特な感覚が多く、痛みのような物もあるので、痛みがないと言っても、受けたことがない人に取っては「痛い」と思うのではないでしょうか。

 

 こればかりは経験していく中で、「痛くない」というのを実感して、「痛み」があったとしても大したことがないという経験が必要なのではないでしょうか。

 

 一歩踏み出さないと理解できないというのは、やっぱり難易度が上がりやすいですよね。そう考えていくと、美容鍼灸は顔にたくさんの鍼を刺すことも多く、痛みを感じる頻度も高いのに試そうという人が多く、受けている人も多いのはすごいですね。やっぱり「美」を追い求めるのは凄いエネルギーがありますね。

 

4.何を信じればいいのかわからない

 鍼灸について知りたい、鍼灸を調べたいというときに、どうやって調べたらいいのかわからないのではないでしょうか。私は鍼灸を行っている立場で業界のこともある程度は分かりますし、論文なども読めばいいと思うし、情報を選り分けることができますが、一般の人には難しいので、ブログなどの情報しか触れられないのではないでしょうか。

 

 もし、患者さんから「鍼灸の効果・効能」、「鍼灸業界について」、「鍼灸のエビデンス」、「鍼灸業界が行っていること」を知りたいと言われたら、教えてあげられる問い合わせ先がありますか?

 

 例えば、医師であれば医師会と大学と単純に考えるでしょうし、外部からの問い合わせも医師業界全体であれば医師会、論文や教育であれば大学と考えるでしょうが、鍼灸にはあるのでしょうか。

 

 こういったことで分かりやすい外部で見れる行動は、人権などに関することで言えば、弁護士会が意見書をだし、医療に関することで言えば医師会が意見書を出すのではないでしょうか。鍼灸の場合は、以前にあった野球選手のときにプロ野球球団に意見書を出しましたが、9団体からですよね。

 

 私はそのニュースを見て9団体もあるのを知りました。というか多いですよね。回答書に関するニュースでは「鍼灸団体へ回答書」になっていますね。意見はもちろんまとめたのだと思いますがニュースを一般の人が見たら、どこの団体と覚えてもらえることはないのではないでしょうか。

 

 資格制度上、鍼灸はあん摩マッサージ指圧師の資格を持っている人も多いし、柔道整復師の資格を持っている人も多いので、資格で分類するのは難しいところがあるのは理解していますが、業界外からしてみたら、バラバラ過ぎて分かりにくいのではないかと思います。

 

 これだけ団体が多いと、鍼灸師の数が増えたとしても、団体ごとに分かれてしまうでしょうし、治療のやり方なども分かれていくので、どんどんと細分化され、数の利点が生かせなくなってしまうのではないでしょうか。

 

5.まとめ

 普及しない理由ということで、個人的見解をもとに書きましたが、やっぱり業界を代表する何かがないと、普及につながっていくのは難しいのかなと思うところがあります。

 

 例えば、業界を代表するような鍼灸の会社があって、それが全国展開をしていたら認知度、受療率は上がる可能性はより高まるのではないかと思います。

 

 無資格リラクゼーションは代表する会社がいくつかあり、全国至るところにあるので、認知度があがり、名前を知っている人もいて、受けたことがある人が増えているので、数の利点は認知度の向上に寄与すると思います。

 

 現在は、個人院が多く、個人個人の違いが多すぎて、受ける側からしてみたら、違いすぎて「わからない」状態になってしまうでしょうね。

 

 現在は、若い人たちが団体、流派を超えて活動している人たちも増えてきているので、その小さな点の動きが大きな線の動きに変化をして面になる可能性があるのではないかと感じています。

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