東洋医学の小腸と治療

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 東洋医学では、臓腑、気血津液精などの異常を合わせて治療を組み立てていくことが多く、治療でも病証としても臓で考えていくことが多いのですが、腑を治療の中心に考えてみるのも面白いのではないかと思って治療で使ってみています。

 腑は胆・小腸、三焦・胃・大腸・膀胱とあり、奇恒の腑は脳骨髄脈胆女子胞があります。どれも面白く、治療で使っていくのは楽しいのですが、今回は小腸について書いて見ます。

 

1.東洋医学での消化吸収

 東洋医学は検査器具がない時代に成立したものになるので、身体の働きや機能は外から推測し、実際の身体の構造、症状と合わせながらまとまってきたものです。現代の中医学は、現代医学の働きも合わせながら今まであった内容を上手く整合性を取っていると考えることができます。

 

 東洋医学と言える中医学では、口から入った飲食物は、胃に収まり、そこで原始的消化を行った後に、小腸に送り、小腸では清濁を分け、栄養素、液を吸収し、大腸に送ります。大腸では小腸から受けった物を大便として排泄していきます。

 

 消化吸収の働きでは、脾の機能も重要になってくるので、脾も関わることになります。食べた物は、栄養を取りだすのと、排泄することが必要になるので、栄養を取るのが脾、排泄するのが胃の働きになります。

 

2.小腸の働き

 中医学では小腸の機能は泌別と言われ、身体に要るものと要らない物を分ける働きがあります。小腸と大腸は管の状態で、形は似ていますが、小腸は大腸と比べ、曲がり度合いが強く、細く長い傾向があるので、飲食物の滞在時間が長いと考えたことで、出すだけではなく、何かの作業をしているということで分ける働きがあると考えたのではないでしょうか。

 

 食べた物を栄養としていくのには脾の働きが重要であり、心・肺に送らなければいけないので、脾は食べた物を上に送る働きがあります。小腸は胃の支配を受けながら、食べた物を大腸に送るので、小腸は食べた物を下に送る働きがあります。

 

 大腸でも水を吸収していきますが、小腸でも水を吸収していく働きがあるので、水を大きく関係することになります。教科書的には、大腸は津、小腸は液を吸収するということで、栄養素を含むような粘滞性があるものは小腸で吸収されることになります。

 

 水は吸収したら津液となり、三焦を通じて全身に輸送されます。排泄させる機能は腎が関わるので、小腸と腎は協調して働くとも言えます。

 

 小腸は飲食物から水と栄養素、排泄させる物を分けていくのですが、物を変化させて分けていくためには、熱が必要になるので、心と表裏関係になります。心の熱は下焦に向い、腎を温めると同時に小腸を温め、身体に入ってきた飲食物を水、固形物に分けていくことになります。

 

 日常生活のイメージが身体のイメージに利用されていると思うので、小腸の吸収と排泄は蒸留や濾過と同じようなイメージなのかなと思います。

 

3.小腸と病

 人間に限らず、動植物は栄養を取り込み、身体の栄養素にすることが大切で、不要な物を排泄させる機能があるので、人間にとって小腸は非常に重要な器官として考えていくことができます。

 

 食べるという行為では、要らなくなった物が出来上がりますよね。身体は活動していて熱を帯びていますが、身の回りで考えれば、燃やせば灰というゴミが出来上がるので、人の活動では必ずゴミが生成されていきます。

 

 飲食物によって発生するゴミ、活動によって発生するゴミはどこで処理されるかと言えば、小腸として考えていくと、小腸は非常に大切な場所になるでしょうね。解剖学的な位置では、臍を中心としたお腹全体に関わっていますが、東洋医学の解剖学的な考え方では、下焦に分類されているので、排泄と生命の根本としての機能があるのではないでしょうか。

 

 あくまで推測の域を出ないので、個人的な見解でしかないのですが、小腸の機能と身体と考えていくと、小腸から発生する病は、大小便の異常だけではなく、様々な病気の基本にもあり得るのではないでしょうか。

 

 川の流れが順調であれば、ゴミも流されていきますが、水の流れが停滞してしまえば、ゴミは貯まっていきます。

 

 東洋医学の蔵象で考えていくと、循環は他の臓腑も関わっていきますが、清濁を泌別するという機能は小腸にあるので、全身のゴミの排泄にも関与していると言えるのではないでしょうか。

 

 もちろん、小腸は吸収にも関係しているので、ちゃんとした物を食べているけど、身体の調子が上がらないという場合には、小腸の吸収の働きが低下しているのではないでしょうか。

 

 飲食の問題があると思ったら、脾胃を調節しようというのが一般的だと思いますが、小腸を使っていくと状態が大きく変化すると感じることが多いので、治療の中では小腸が面白いなと感じるようになりました。

 

4.まとめ

 小腸経に関わるツボは効果的なところも多く、昔から使っていたのですが、色々と肝がるようになると、やっぱり効果がよくていいのかなと思うようになりました。

 

 もちろん、鍼などの道具を扱うのが上手くなったので、今まで効果が出せていなかったのが、効果が出せるように変化したと言う可能性もあるので、個人の妄想だと思っています。

 

 個人の妄想でも、「こうだから」「これをして」「結果」が出るので、効果が出なければ、考え方、刺し方が違うと考え、さらに刺し方を深く考えていくことで治療技術が向上していくので、さらなる妄想に突き進みたいと思います。

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