鍼灸の保険適応が拡大するか?

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 現在の日本では、特定の疾患に対して医師の同意書をもとに、保険適応が認められていますが、今後、保険適応が広がっていくのでしょうか。もし、広がるとしたら、どういった状況を考えていくことができるのでしょうか。

1.現在の鍼灸の保険適応疾患

 現在、保険適応になるのは、「神経痛、リウマチ、腰痛症、五十肩、頚腕症候群、頚椎捻挫後遺症」であり、限られた範囲のみになっています。治療院で保険適応を行う場合もありますが一部の治療院であり、訪問では保険がよく取り入れられています。

 

 保険適応の場合は、鍼のみ、灸のみ、鍼灸と3つに分かれ、鍼灸で電気も併用した場合は、初診が3210円(平成30年10月1日)で、2回目以降は1550円になります。1回の治療料金としては、自費診療で受ける鍼灸よりは安いですが、働く側から考えていくと、1550円だと15分程度の時間しか使えなくなりますね。

 

 道具の費用もこの値段から出さないといけないので、保険で治療する場合は、数をこなす必要が出てくるので、治療院では行わないところも多く、保険で行う治療院の場合は局所だけにするところが多くなります。

 

 訪問で多くなるのは、往療という料金が加算されるので、距離によりますが1800~4110円が増えます。最低の1800円だとすると、治療の値段と合わせると最低で2350円となれば、1時間で2軒いければ、一時間で4700円なので、これならばやっていける料金になるので、訪問の方が保険適応で行うことが多いのです。しかも、訪問がメインであれば、治療院は大きくある必要もないですし、1階でなくてもいいので、訪問に行く治療院自体の家賃が下がりますしね。もちろん、訪問に行くための電車、自転車、原付などの費用がかかりますが、家賃に比べれば格段に安いです。

 

2.保険治療の特徴

 既に上記に書きましたが、保険適応の場合は、時間当たりの料金を上がられないし、値段も安いので、治療時間は短く、鍼も少なくして行う必要が出てくるので、自由度が少ない治療にもなります。

 

 鍼灸で使っていくのは東洋医学の考え方であり、東洋医学は全身に経絡が走行しているので、全身を使って治療していけるのが大きな特徴と言えますが、保険だと部位、時間に限りが出来てしまうので、治療としては難しいのですよね。

 

 昔からある整骨院のように、痛みの処置をして数を診ていくタイプの治療院であれば保険を利用しやすいのですが、そうでない場合は、保険を使うと自由度が低くなりやすいですし、保険請求をする事務の手間も出てくるので、保険を使っていくとどうしても、治療時間は短縮化していく傾向になってしまいます。

 

3.保険とは

 医療で用いられる保険は、普段、健康な人でも調子が悪くなると医療を受ける必要が出てきますし、高額になってしまうために、本人以外である、他人、国などが支援するシステムと言えます。

 

 医療を受ける人が多くなれば、支援する方が倒れてしまうので、受ける人が少なく、支援する人が多ければ成り立つシステムですが、現在の日本の状況では、医療を受ける高齢者が多く、税金などのお金を負担する現役世代が少ないので、しっかり管理しておかないとあっという間に破綻してしまいます。

 

 そのため、医療費を抑制したいという思惑もあるので、保険取扱になる物には慎重になりますし、保険取扱になったとしても、財政が厳しくなれば保険取扱も出来ないような状況になることも考えられます。

 

4.他国での鍼灸や保険

 他国の状況を全てわかる訳ではないので、聞きかじった内容のまとめになりますが、先進諸国では、通常の医療を受けるのにも制限があるので、医療費の増大を抑制している状況なので、鍼灸を保険に取り入れていっているところもあります。

 

 例えば、日本では、ちょっと風邪をひいたから市販薬でもいいけど、病院にでも行くかとなりますが、他国の状況だと、病院で診察を受けられるまで日数がかかることが多いので、ちょっとした症状であれば市販薬で対処するのが当然となります。こういった状況であれば、医療費を抑制することができるので、新しい物も医療保険制度の中に取り入れていくことが可能になります。

 

 一人が医療を受ける医療費の考え方で言えば、現代医学は、医師を育成するのにも莫大な費用が必要ですし、医療を提供する器具も安全面を厳重に確認しないといけないので、莫大なお金と時間が必要になるので、とてつもないお金がかかっている状態と言えます。

 

 例で言えば、超高級レストランで、サービスを徹底的に学んだ人、料理を熟知した料理を楽しむことと同じですね。

 

 鍼灸の場合は、鍼という道具と人がいれば治療することができるので、鍼灸師を育成するのには、莫大な費用という訳ではなく、道具は鍼だけなので、大掛かりで費用もかかる器具が必要ではないので、部屋という場所さえあれば、鍼灸を提供することが可能です。

 

 例で言えば、外でも出来るし、室内でも出来るし、移動も速やかにできるので、屋台とも言えるのではないでしょうか。もちろん、治療院もあるし、屋台とは違うと言えるでしょうが、現代医学の設備はテナントを大きく改良する必要があるのに比べ、拘らなければ、ちょっとした手間でも出来てしまうので、全体としては費用がかからないです。

 

 ここで話している費用というのは、誰かが出すお金ではなく、その場所を作る、維持するのにかかる全体のお金です。

 

 こういった経済の観点から見ていくと、現代医学の施設を作り利用するのは、お金がいくらあっても足らないので、出来るだけ安く出来るものは安くするという視点からすると鍼灸は非常に便利になるのですよね。逆に言えば、安い鍼灸から試して、ダメなら病院という流れも出来るので、どうしても現代医学が必要な人に対して行うための関所という考え方もありですね。

 

 このように現実に動くお金という視点でも考えられているので、海外では鍼灸の保険適応しているところもあります。

 

 効果に対して、保険を支払うのであれば、均一でなければいけないという視点は非常に大切ですが、ある程度の結果がでるなら「あり」という視点がないといけないのかなと思います。

 

 そういった点では、どういった作用機序があるのかというよりは、「ほどほど効果があればいい」という視点でいいのでしょうが、医療者や数字を見る人からしてみれば、「確実性がない」からダメという言われ方もありそうですが、海外では、あまり細かく言わないのか、「ほどほど効果があればいい」という視点のような気がしています。

 

5.日本で鍼灸の保険適応が拡大するか?

 大分余談ばかりになってしまいましたが、医療保険制度というのは一つの物から出来ている訳ではなく、人、施設、教育、資金と様々な物が関わり合うので、何かを変更するのは非常に大変になっていきます。

 

 さらに、日本の現状は医療を受ける高齢者の人数が増えていっていて、現役世代が少なくなっているので、医療を支えるのが困難な状況になっています。

 

 海外の事例や内容を踏まえて取り入れていこうという動きはあるでしょうし、全体のお金からしてみたら、鍼灸の方が安いので、現代医学から鍼灸の方へ流そうと考える人もいるでしょうが、「鍼灸の医療的な根拠」という視点からすると解明するのは難しいでしょうし、医療財政的にはきつい上にさらに増えるのは難しいでしょうね。

 

 お金が現代医学から鍼灸の方へ流れるということは、現代医学に使われていたお金が減るということにもなるので、お金が減る方に取ってみれば損失になるので、こういった反対のところも考えておかないといけないので、保険適応の拡大は非常に難しいのではないでしょうか。

 

 代替案としては、保険適応にはするけど、使わない状況にして、高齢化社会が解消し始めるタイミングで入れていくのも数字上ではありなのではないでしょうか。そうすれば、現在の人に取ってはメリットがないですが、財政の破綻を抑えつつ、将来に今よりいい医療制度を作るのは国としてはいいことなのではないでしょうか。

 

6.まとめ

 完全に個人的な偏見に満ち溢れる文章になっているので流し読みをしておいてください。現在ある鍼灸の保険制度も尽力して頂いた方達がいることで、現在、訪問鍼灸として伸びているので、作った当時からすれば、拡大したので嬉しいことでしょうね。

 

 もちろん、支払う側からしてみたら面白くない部分ではあるので、批判もやはり多数出てくるでしょうね。

 

 保険制度が拡大したとしても、保険の不正請求という問題は残るので、疾患が決まったとしても、どうやっていくかを考え、修正していかないといけないので、もし、今後拡大するとしても、浸透するまではかなりの時間が必要なのではないでしょうか。

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