学校のときは、細い鍼を使って練習していたような気がするのですが、鍼を刺入するようになって気が付いたのは、鍼の刺入感覚の練習は太い鍼の方がいいだろうということです。
学生時代は、1番などの鍼をよく使っていて、卒業後も1番を利用することが多かったのですが、2番、5番、10番や中国鍼(34、日本式4番)をよく利用するようになってから、鍼先の感覚をより意識することが出来るようになり、その後に細い鍼を扱うと、今までと違うと感じるようになりました。
1.学校教育での鍼の選択
確か、学校では細く柔らかい鍼を上手く扱えることが重要だし、難しいから細く柔らかい鍼を使っていたような記憶があるのですが、教育という視点で考えると、最初の頃の鍼は痛く、技術も稚拙なので、細い鍼の方が痛みも少なくいいので利用されている面があるのかなと思いました。
日本式の治療をする人達は、細い鍼を利用する人も多く、浅い鍼を使っている人も多いので、学校側がそちらに合わせている可能性もありますが、多くの現場は、整骨院であり、局所が多いので、2番、3番などの鍼を利用している方が多いのではないでしょうか。もちろん、学校でも違うでしょうし、私自身も2~3年は2~3番を使っていたような気もするので、順番通りにやっているのでしょうね。
2.太い鍼の方がいい理由
長さにもよりますが、太い鍼は力を指先に込めていけば入りますし、曲がらないので必要以上の力をかけることが出来るのは悪い点ですが、太いということは抵抗も大きいので、何かの構造物や硬いものに当ったときに、抵抗をしっかりと感じやすいです。
刺鍼をしていく前には、前柔法として触診していきますが、触診で触れた硬結に対して鍼をしていくのでは、抵抗で鍼を止めるのが分かりやすいので、抵抗感が強い太い鍼だと止めやすいです。
細い鍼でも分かるのですが、初心者に取っては、押すのも曲がってしまうような鍼だと鍼先の感覚を身に付ける前に、鍼のたわみが気になってしまって、鍼先に意識を集中していくのが難しいと思います。
刺入をしていく手をつくるのはフォームを作るのと同じですが、あまりに微細な動きだと、フォームを意識する前に、崩れてしまうので、刺す手を作るためには、安定した道具と場所があった方がいいので、細い鍼よりも太い鍼の方がいいですね。
抵抗感が意識できるようになると、触診での押したときの抵抗感と鍼の抵抗感が一致してくるので、鍼が上手になっていくのではないでしょうか。
指先は、細い鍼ではなく、それなりの太さがあるので、皮膚面を押していくと抵抗感が強くなっていくので、手が出来てくると感じとるようになっていくことができます。太い鍼だと抵抗が大きいので、強引に力を入れていなければ、鍼は抵抗で止まっていくので、指の感覚と鍼の感覚を統合させやすいですね。
刺入方向が違う場合は刺鍼転向をしていかないといけないですが、筋層から外れ、皮下にきたときに、太い鍼だと、スルッと抜けた感覚を感じやすいです。細い鍼だと余程、意識を集中していかないといけないですし、真っすぐに抜く手が出来ていないと抜けた感覚も意識しにくくなります。
3.技術の習得過程を考える
技術の習得過程として日常生活であるものとしては、鍼で行うのは専門的な状況なので、自転車で言えば、繊細なロードバイクみたいなものです。自転車に乗ったことがない人が、ロードバイクに乗ろうとしたら、最初からロードバイクに乗るでしょうか?
もちろん、そういった考え方もあるとは思いますが、通常の自転車に乗って、ペダル、ブレーキの使い方をマスターしてから、より専門的な物になっていくのではないでしょうか?
形を作るためには、弱い物ではなく、しっかりとした物で作っていく方が簡単ですよね。
しっかりとゆるぎない形を作っていくのは、時間も大切ですが、硬さ・強さも重要ですよね。
スマホだって、丈夫だからフリックをしっかりとすることができますし、あまりにも敏感に反応してしまうと、微細な感覚で利用しないといけないので難しいですよね。
ということで、鍼の技術習得には太い鍼がいいという理屈でした。
4.まとめ
自分の中では、太い鍼の方がいいと思うのですが、違う意見もあるでしょうね。ただ、卒業してから鍼を上手くなりたいのであれば、どちらにしろ2番以上を使う人も多いでしょうし、そういった鍼を沢山扱った方が上手くなるので、鍼の技術をあげるいい経験だと思って欲しくて書いてみました。
私自身は、鍼が響きやすいので、学生時代、卒業してからも細く浅い鍼がいいと思っていた時期があったのですが、刺鍼の技術があがってくると、鍼という道具はどれでもいいのではないのかと思うようになりました。
現在は、太さによっても違いがあるのではないかという仮説を元に鍼を使うことも多いのですが、その考え方が出来るようになったのは、鍼の刺入感覚を理解するようになったからです。
ただ、学生時代のあのときに太い鍼だったら、お互いの技術が稚拙だったでしょうから、耐えられるのかなという疑問も出るので、細めから始めるのがやっぱりいいのかなとも思いますね。