十味敗毒湯と皮膚疾患

Pocket

 ニキビって、顔に出来ると見た目が悪く感じてしまいますし、水虫も辛い痒みが続きますよね。肌トラブルはすぐに効果がみられる場合もありますが、気を付けているのになかなかよくならないので、気持ち的にも辛いことが多いですよね。

 そんなニキビや水虫に対して利用されることがあるのが十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)という漢方薬になりますが、一体、どのような物なのでしょうか。

 

 十味敗毒湯は華岡青洲(1760~1835年)が作った漢方薬になります。華岡青洲は世界で初めて全身麻酔を用いて乳がんの手術を成功させた人ですね。ただ、麻酔薬を作るために、人体実験が必要だったので、実験に協力した母を失い、妻は失明という状況になってしまいました。

 

 医療は危険を伴うものなので、大丈夫かどうかの実験が必要なので仕方がないことにはなるでしょうが、華岡青洲含め家族も凄い覚悟で行ったのですね。華岡青洲が作った処方は、鍼灸師ならお馴染みの紫雲膏(しうんこう)というお灸の火傷で使われやすい軟膏もあります。華岡青洲については小説があり、ドラマなどにもなっていますね。

『華岡青洲の妻 (新潮文庫)』

 

 十味敗毒湯のもとは、荊防敗毒散(けいぼうはいどくさん)と呼ばれるもので、荊防敗毒散は敗毒散(はいどくさん)を少し変化させたものです。漢方は中身に変化があると、名前が変わるだけではなく、対象となる人や症状が変わるのが大変なのですよね。

 

 敗毒散は、小児に対して作られた漢方薬とされますが、風寒湿という外邪(外からの影響)によって生じた、いわゆる、かぜに対して利用されるものです。老人、産後、大病後にも利用されていたようです。寒えの状態になるので、熱によって生じている場合は使ってはいけないとされます。

 

 荊防敗毒散は、外からきている風寒という外邪を取る働きが強い傾向があります。荊防敗毒散になると、皮膚が腫れて膿が出ている状態に用いられ、体力がある人に用いられやすい処方になります。

 

 十味敗毒湯は、湿疹や蕁麻疹でも化膿傾向の場合に用いられやすいとされていますが、荊防敗毒散とあまり変わらないという表現もありますね。枳殻(きこく)と羗活(きょうかつ)の代わりに桜皮(おうひ)や生姜(しょうきょう)が使われているとされますが、何故、代えたのですかね。

 

 手に入りやすい、入りにくいで生薬を変えたのか、効能で違いが出るから変えたのでしょうか。もちろん、作った本人ではないですし、理由は軽く調べてみても出てこないので分からないですね。

 

 十味敗毒湯は荊防敗毒散とあまり変わらないということですが、身体への働き方は、熱を加えて発散させる働きがあります。状態としては、風寒湿などの外邪によって、身体の表面の気の働きが低下したことにより、身体の表面の気の動きが停滞することで、表面の障害として肌障害が発生しているときに、表面の気の働きを活発にさせ、外邪を取り去る働きがあります。

 

 身体にある気を動かすことになるので、気が不足している人は、気を動かすと、体力が低下して疲れてしまうので、体力がある人に対して用いることになります。

 

 こういった体力のある人、体力のない人という処方の出し方は、漢方の特徴とも言え、鍼灸にも応用できる考え方ではないでしょうか。一般の方からすると、自分の身体が疲れやすいのかという体質を考えながら選ばなければいけないので、東洋医学の知識や考え方がないと、イメージがつきにくいでしょうね。

 

 現代医学の薬は、体力がある、体力がないというので決定するのではなく、症状に薬が対応しているので、現代医学の薬で慣れている人ほど、意味が分からなくなるのでしょうね。

Pocket