鍼灸治療では保険で訪問することも増えているようですが、訪問で多い疾患は脳血管疾患の後遺症や大腿骨骨折後の方が多いようです。私自身も脳血管疾患の後遺症や大腿骨骨折の方の治療をすることがあるのですが、大腿骨骨折後の患者さんから言われた言葉があります。
「股関節が冷たい」
治療をするまえに、こんな言葉をもらったことがあります。股関節の置換を行うと、屈曲・内旋が危険になるので運動制限がありますが、構造的には問題がなく、動ける状態になっていると思いますが、感覚的には異物だと感じているのだなと思いました。
大腿骨頭部から血流が入ってきているのですが、股関節の置換を行ったことにより、その部位に血流が流れていないことで感じているのかなとも思いました。ただ、人工関節も身体の内部にあり、体温で温められているはずですが、流れているものとの違いがあるのだと思いました。
この状態を東洋医学から考えていくと、骨の中には髄が入っているとし、骨を栄養する働きがありますが、人工関節になることによって、骨の栄養が不足し、冷えという感覚が発生しているのではないかと思いました。
股関節の置換術を受けた方は、痛みや動きが完全になることはないのですが、治療をすると痛みや冷えの改善がみられ、施術前後で動作の改善もあるので、治療は受けておくと、関節可動域の低下が生じづらくなるので、患者さんにも案内をしています。
施術に関しては、全身状態を把握して行う方法以外では、私の中では数パターンを使い分けるか、まとめて使うという方法で行っています。
流注を使って施術
骨ということで腎
髄ということで懸鍾
流注を用いる場合は、辛い部位を伺って、前・横・後で分け、前なら胃経、横なら胆経、後ろなら膀胱経を中心に治療を行います。置換術を受けている方は、下腿のだるさや冷え、その他の症状を訴える場合もあるので、足背部を使っています。
骨ということで腎というのは、年齢的なものもあるし、骨が弱くて骨折したのであれば、腎を治療しないといけないと考え、湧泉や太渓を使うことが多いです。骨で骨会の大杼もいいのですが、私自身はまだ凄い効果があったという実感がないので、湧泉から治療を加えることが多いです。
骨は髄が栄養を与えるので、髄から治療を行うと効果的かと考え、懸鍾を使っていることが多いのですが、先ほどの流注の治療ということで、胆経として考えることも出来るので、使う頻度が高いです。
手技で対応するということもあると思いますが、その際は、足底・足背からアプローチをして、懸鍾に進むことが多いです。治療を行っていくと、股関節が温まるという話しもあるので、硬結の変化だけではなく、感覚として違いも出たかを確認しながら施術をしています。