発声の東洋医学的メカニズム

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 発声のメカニズムは肺、腎、脾、心、宗気が関係をしています。

 発声は、息を出すときに行われるものなので、呼吸と関係をしやすく、呼と関わる肺の働きが重要になります。発声の状態が悪ければ肺の問題と考えるのが通常ですが、呼だけでは成り立たないので、吸と関わりやすい納気の腎とも関係があると言えます。

 

 腎の働きが弱いと、吸うことができないので、呼という出すことも出来なくなるので発声も弱くなります。ということで肺腎が発声に関与すると表現することが出来ます。腎の働きが弱いと発声は肩で息をするように辛い状態になります。

 

 肺の働きが弱いと発声の出す方が出来なくなってしまうので、ぼそぼそという感じに聞こえます。吐くのが苦しいに関係しやすいので、呼吸困難に似ていると思います。肺・腎の病証では呼吸困難が発声しますが、両臓とも呼吸に関係をしていくからになります。

 

 発声に関しては、舌の動きが重要になります。舌には経脈としては、心、脾、腎が関係をするのですが、五行との関わりも考えると心の働きが重要にもなります。発声と関係する呼吸(肺腎)が大丈夫であっても、発語が上手くいかない場合は、舌の異常で、心の病証と考えていきます。

 

 他にも押さえておかないといけないのが、発声に関係する宗気になります。宗気は身体機能だけではなく、呼吸や発声にも関係するので、発声の異常に関しては宗気の問題が生じていると考えることが出来ます。

 

 宗気の問題と考えた場合には、宗気は肺と脾によって生成されるので、肺と脾の問題があるとも言えます。最初の印象で、発声がおかしいと思ったら、発語であれば、心、苦しそうな感じであれば肺・腎、宗気と考えていくことになります。

 

 宗気は身体機能とも関係するので動きの低下が生じていれば、宗気の問題で肺と考え、加齢や体力低下が著しい場合は、腎の問題ではないかと考えることができます。

 

 宗気の異常だと判断して、肺の問題と考えることはできますが、宗気は肺と脾によって生成されるので、脾の病態としても考えることが出来ます。脾の病態として生じるのに多いのは、湿が絡んだときになります。

 

 歌を仕事としている方は、声が重要だと言われて、乾燥から喉を守ることに注意をしますが、これは肺が燥を嫌うので、湿度を与えて燥が侵入しないようにし、肺の機能を守ることによって声を守っていると言えます。

 

 もう1点が見過ごされやすいのですが、飲食の問題によって声を傷めてしまうことがあるので、発声・宗気・脾の問題です。飲食は湿と関係が深いものが多く、湿を多く摂取してしまうと、脾は喜燥悪湿であり、湿は脾の働きを損傷しやすいので、宗気の生成に影響が出ます。

 

 酒やけした声、ハスキーボイスという表現がありますが、お酒は湿熱と考えられ、湿が脾の働きを低下させ、宗気の生成を阻害し、発声に問題が生じるだけではなく、湿を生成すると、固形化した痰は貯痰の器である肺に阻滞してしまい、発声に大きく関わることになります。

 

 それ以外にも熱があり、熱は炎上し乾燥させる働きがあるので、燥邪が発生し、肺を損傷しやすいだけではなく、水の上源であり、水が十分にないといけない肺の機能を低下させてしまいます。

 

 歳と共に、声が出なくなってしまうのは、その部位の気血の巡りが悪くなるだけではなく、臓腑の働きの低下、病理産物の停滞によっても生じます。歌手で声が出なくなってきた人が生活習慣を変えたら復活という話しもありますが、これは、脾、肺、湿、熱という複合した病能を生活習慣の改善によって変化をさせたと考えることが出来ます。

 

 お酒を飲んだ次の日は声の調子が落ちますが、常時、飲酒をしている人は、休肝日の次の日の声の調子を知っておくのは大切だと思います。

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