症例9の解説と治療ですが、肝血虚による皮膚の痒みと考えることができます。肝血虚から生風になり、痒みとして出ていると考えられます。
1.解説
皮膚系疾患では肺を疑うのが重要になるのですが、皮毛は血が栄養を行うものでもあるので、血虚や血瘀で皮膚の乾燥や痒みが発生することがあります。痒みや発赤は風と関係することが多いのですが、内風が生じる原因には、血虚・陰虚・熱極があり、血虚の場合でも発生します。
皮膚の痒みとあったら、風、熱、血と出てくるようにしておくと、病能を把握しやすくなります。肩こりは肝血の不足によって生じやすいので、昔から肝血が不足しやすい傾向があり、加齢によって血虚の度合いが進行してしまい、他にも症状として現れていると考えられます。
便秘に関しては、血が不足してしまった便秘のことは虚秘といい、排便時間の延長や便が硬くなることが多いです。血虚の便では兎糞と言われる、兎の便のようにコロコロしたものが出るという特徴があるので、コロコロと出ますかと尋ねると分かりやすいのではないかと思います。
年齢的には閉経の可能性もあるので、いきなり質問で聞くのは嫌がる人もいるので、月経に関しての最低限の質問は予診表に入れておく方がいいと思います。血虚は昔から見られているようなので、以前の月経は28日周期よりも長かった可能性もあるので、尋ねてみると、過去の状態も把握することができます。
2.治療
肩こりの治療や肝血に対しては以前も出てきているので、皮膚の痒みに焦点を当てて考えてみたいと思います。
皮膚病の治療で痒みが強いのであれば、肩髃が治療に使えます。肩髃は痒みの特効穴として皮膚系疾患ではよく用いられる場所になります。鍼よりはお灸の方がいいとは思います。
肩髃とセットで使われるのは、築賓になるので、同時に使うのも効果的だと思います。築賓にもお灸といきたいところですが、肩髃同様、火傷になってしまえば、両方とも痛みや痒みで辛くもなるので、注意は必要になりますね。
切皮置鍼で時間を長く使うというのも一つの方法なので、切皮置鍼をしながら、他の治療を行うのもいいのではないかと思います。
痒みは熱によって発症していると考えますが、熱は熱で制することが出来るので、熱を加える治療も効果的です。部分的な痒みであれば、透熱灸や知熱灸がいいのですが、広範囲になるとお灸を加えるのは難しくなるので、肩髃・築賓という全体の治療の方がよくなります。
例えば、こういう方でも痒みが強いところがあったりするので、その一部分だけでも行うだけでも効果的だと思います。痒みが完全に消える訳ではないですが、痒みの中心のようなものがあるので、そこを見つけて行うといいと思います。
見つけるのに技術は必要がなく、掻き壊していることがあるので、血が出たり、皮膚が薄くなっているところです。