東洋医学で弁証を出す時には、八綱弁証、臓腑弁証、病邪弁証を出すにしても、気血津液弁証が出来ないといけないので、東洋医学の弁証では気血津液弁証がポイントになると言えます。
気血津液弁証では、気、血、津液、精、陰気、陽気の状態について考えるものであり、それぞれに虚実があるとして考えていきます。
- 気の虚実→気虚と気滞
- 血の虚実→血虚と血瘀
- 津液の虚実→津液虚と痰湿
- 精の虚実→精虚のみ
- 陰気の虚実→陰虚と陰実
- 陽気の虚実→陽虚と陽実
気の虚実は、気が少ないか多いかを判断するものですが、虚実を鑑別するのに簡単なのは、実があるかないかを決めてしまうことが大切です。気の実証は気滞証になり、気滞は肝のみに関係をするので、肝と関係するようなイライラ、ストレス、脹痛、胸脇苦満が発生しているときには、肝の病証が見られるので、気血津液弁証では気滞の可能性が高くなります。
胸脇苦満は特定腹証と言われる腹診所見で詳細は以下に書いてあります。
気虚は元気がないと表現をされる状態なので、分かりやすいのは疲れると症状や体調が悪化をしやすいというのがあるので、体調変化があるのかどうかを尋ねていくと気虚があるかどうかを判定する情報になります。気虚症状として特徴的なのは、自汗という「汗をかきやすい、汗が止まりにくい」というのがあれば気虚と判定をしてしまうことがあるのですが、その他にも倦怠感が出やすかったり、無力感が出やすかったりという、どうも元気がなさそうだなという人が該当していきます。
この他にも気脱(きだつ)や気閉(きへい)という状態もあるのですが、危機的状況と考えられるものなので、一般的な診察の中では、気滞と気虚が中心になると思います。気の問題によって生じる症状は、気の種類と作用が重要になるので、気についての理解が大切になります。
気の種類と作用については以下を参考にしてください。
「気には分類がある」
気虚は肝と心包を除く全ての臓にみられてくるものなので、臓腑を決定するのには、臓腑と関係する病証が必要になるのですが、気陥(きかん)は脾気が不足し、昇清作用が低下をしたものなので、脾の問題と断定できるものになります。脾の昇清作用などについては以下のブログを参考にしてください。
「脾の働き」
血の虚実を決定するのに簡単な方法は血の実証である血瘀があるかどうかを判定することが重要なので、血瘀についての知識が必要になります。血瘀は刺痛・固定痛・夜間痛と関係をしやすく、痛みが生じやすいものなので、痛みを強く訴えている場合には血瘀の可能性が高くなります。血瘀は顏色や舌の色が紫色になることが多いので、見た目で判断できるものの一つになります。さらに血瘀は瘀血という病理産物(ゴミ)を生じやすいと言われているので、少腹急結(しょうふくきゅうけつ)を発生させやすいと言われています。
少腹急結は特定腹証と言われる腹診所見で詳細は以下に書いてあります。
血虚は血が栄養する、筋・眼・精神に問題が現れることがあるので、筋のけいれん、ふるえ、眼精疲労、不眠、意識障害と関係をしやすい傾向があります。血は脾の働きにより生成され、血の不足は心と肝に問題を生じるので、血虚は、心血虚、肝血虚、心肝血虚を生じることがあります。
津液の虚実を決定するのには、津液の虚である不足の状態は、脱水状態と考えることができ、脱水と判断したら治療をして津液の生成を増やすというよりは、水を飲むことが先決になるので、津液の虚に対してはそれほど考えなくてもいいものです。
津液の停滞は痰湿と言われるのですが、外邪である湿が停滞してしまったものと大きく関係がしやすくなります。痰湿は、生痰の源と言われる、脾と関係をしやすいので、脾の働き不足によって生じやすく、肺は貯痰の器と言われるので、肺とも関係をしやすくなります。
湿邪と脾の働きに関しては以下のブログを参考にしてください。
「脾の働き」
「肺の働き」
精は、生命力と関係をするので、生命力が多すぎるというのは、ほとんどないので精の実に関しては考えることがないので、精の虚だけを考える必要があります。精の虚は生命力の低下と考えることができ、精は原気に変化をするので、気虚と関係をしやすいのですが、生殖や老化と関係をすると考える方がいいです。生殖機能と関係をするのは、不妊、月経、排卵の異常、老化に関しては成長不全、早期老化と言えるので、健忘や骨粗鬆症が発生している場合には精虚と言えます。
精は腎の蔵されているので、腎の病証と関係しやすい性質があり、脾の働きが低下したときには後天の精が生成をされないので、脾の働きが低下したときにも精の不足が生じてしまうことがあります。
精と腎の働きに関しては以下を参考のしてください。
「腎の働き」
陰の虚実に関しては、寒熱の虚実と関係をするものになります。陰は身体を冷やすという考えがあるので、陰虚は身体を冷やす働きが低下をしてしまっているので、ほてりが生じます。代表的な症状は、手足心熱(しゅそくしんねつ:手足がほてる)、五心煩熱(ごしんはんねつ:手足と胸がほてる)、盗汗(とうかん:寝汗)があります。
陰の実は身体を冷やす働きが強くなってしまっている状態なので、寒いときに身体が冷えてくるのが陰実になり、寒邪という外邪との関係が深くなります。原因があるので分かりやすい状態とも言えます。
陽の虚実は陰の虚実と同じように、寒熱と関係をするものになります。陽は身体を温めるという考えがあるので、陽虚は身体を温める働きが低下をしてしまっているので、冷え症が該当をします。
陽の実は身体を温める働きが強くなってしまっている状態なので、暑いときに身体が熱くなることが陽実になり、熱邪との関係が深くなります。これも原因があるので分かりやすい状態とも言えます。
陰虚と陽虚に関しては以下も参考にしてもらうと分かりやすいと思います。
虚実という考え方については以下を参考にしてください。
八綱弁証に関しては以下を参考にしてください。
「八綱弁証とは何か」