魚際

Pocket

 魚際は、肺経の滎火穴であり、数少ない手掌にある経穴の一つですが、手掌部は切皮痛も刺入痛も出やすいので使わない人が多いのではないでしょうか?

 魚際は、母指の第1中節骨の中央橈側で、手掌と手背で色が変わるところに取るツボで、母指の辺りが魚のお腹のようなので、魚のお腹の際(きわ)という意味で魚際という名前になっています。鍼灸師の人でも自分の魚際に何度も刺入をしたという人は少ないのではないでしょうか。

 

 手掌と手背の皮膚の分かれ目にあるとは言っても、刺入をしていけば、掌側に入っていくので、ひびきも痛みも非常に出やすいですね。痛みが出やすい原因は、手掌は物をつかんだりするのにクッションが必要なので、脂肪層が他よりは少し厚いので、切皮・刺入は技術が必要になっていきます。

 

 掌は、温度を感じたり、物を触ったりするところなので、ただでさえ感覚が鋭いところなので、痛みや響きはすぐに感じてしまいます。

鍼のひびきとは

鍼の響きが出る深さ

 

 滎穴は身体の熱を取る作用があるので、治療効果が高いところでもあるのですが、滎穴は他の経絡でも末端部にあることが多いので、どの滎穴も切皮と刺入に注意が必要なところです。

 

 局所としての効果は、手にあるツボなので、手の症状に効果があるのは当然なのですが、前腕・上腕の症状に対しても効果が出やすいです。肺経のツボなので、肺の働きは呼吸にも関係するので呼吸器系疾患があるときにも効果が出やすいところになります。

 

 知識としては分かっても痛みと響きが出やすいから使いたくないという人も多いのは事実でしょうから、診断点としての意味も書いてみたいと思います。

 

 魚際は肺経の経穴になるのですが、表裏は大腸と関係をし、肺の粛降という降ろす働きは大腸にも働きかけるものなので、大腸との関係が密接です。

 

 魚際の所は皮下静脈が見える人が多いと思いますが、お腹の調子が悪くなると魚際のところが青色や紫色になることが多いので、お腹の調子を見るのに優れた場所になります。

 

 顔面部の望診ではお腹の調子を見るのは、脾の領域や唇の辺りを見るだけでも分かるのですが、この魚際の色と合わせると、診断が確実になりやすいところになります。東洋医学の診断法は四診と言われています。「東洋医学の診断法

 

 体調がいいときは、掌全体が赤みを帯びて温かいことが多いでしょうが、体調が悪くなると末端部からどんどんと冷えていくので、手足の血行が悪くなりやすいです。その場合は、魚際のところも色が悪くなるのですが、その時に、胃腸に負担をかける食生活を行ってしまうと、体調不良につながってしまうことがあるので、日々、注意をして見ておくのがいいところになりますよ。

 

 これで少しは魚際に興味を持ってもらえましたかね。そしたら、鍼をしてみようと思いませんか?まだ思わないですかね。

 

 魚際は上手く使うと効果が高いだけではなく、実は心地よい場所の一つなので、是非、セルフケアにも取り入れてもらいたいです。

 

 手は一日中使っている場所で、疲労が貯まっているところなので、揉まれると非常に気持ちがいい場所の一つなので、魚際を静かに圧迫すると非常に気持ちがいいですよ。

 

 魚際の押方は、中節骨から橈側にはがすように押す方向と、手掌の肉を魚際の方に集めて押す方法があるのですが、後者の方がたまらない気持ち良さも出ると思います。

 

 鍼灸師は手先をよく使う仕事なので、手先は料理人の包丁のように日々メンテナンスを行わないといけない場所なので、手が空いたときに、自分の魚際を押しておくといいですよ。

 

 先ほども書いたように、お腹の調子を現すところにもなるので、日々メンテナンスを行っておくとお腹の調子も整いやすいですしね。

 

 お灸もいいのですが、透熱灸を行うよりも台座灸で温めるぐらいの方が心地よく受けられると思います。

 

 鍼を刺入する場合には、感覚が鋭いところなので切皮をして、しばらく置いておくと段々と響きが出てくることが多い場所になります。刺入に自信がなければ、切皮だけしてそのまま置鍼をしておくと、ジワジワと魚際の響きを感じられると思います。

 

 中節骨の方向に向けて刺入をすると1㎝もいかないところで、母指に強い響きが出るので、母指に症状が強く出ている人に取っては治療効果が発揮されることがありますが、ゆっくり刺入をしていかないと響きが強く残ってしまい悪化をしてしまうことがあります。

 

 手掌側に向けて刺入をしても同じように母指に響きがいくので、どの方向に刺入をしても母指に対する治療に効果的だと思います。肺に対しての刺入であれば、中節骨の裏側に入るようにすると効果を発揮することが多いので、治療目的によって刺入方向を変えるのがいいですね。

 

 どうですか、少しは興味がもてましたかね?

Pocket