折鍼の時の対処法

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 鍼灸の治療の中で起こしてはいけないものに折鍼がありますが、世の中には100%はないので、万が一の時にどうすればいいのかを考えておくのがリスク管理の上で大切なことになります。

 折鍼を起こす原因には、無理な鍼の操作と患者さんの体動がありますが、細い針でもかなりしっかりとしているので、曲がるだけで済むことが多いと思います。曲がった鍼は抜けなくなることが多いので、抜鍼困難になる状態になることが多いと思います。抜鍼困難に関してはこちらのブログを参考にして下さい。

「鍼が抜けなくなったときの対処法」

 

 抜鍼困難に対する対処をしても抜鍼することが出来ないと、焦りも出てきて、鍼に強い力を加えてしまうことがあるので、そういった状況で折鍼してしまう可能性があります。

 

 体内に鍼が残ると、非常に小さいものなので、その後にどこに移動してしまうかが分からないと言われているので、どの部位で折鍼が発生したのかが分かるように、ペンなどでマークを付けておく必要があります。

 

 折鍼した鍼の先が見えているようてあれば、手で取ろうとせずにピンセットを使う方がいいという話があるので、鍼灸を行う治療院ではピンセットを置いておく方がいいですね。

 

 折鍼した鍼は 画像診断で分かるのではないかという思いも出てきますが、折鍼した鍼は小さいものなので、どこで起きているのかが分からないと、画像を撮ることも出来なくなってしまいます。

 

  特に皮膚や筋肉はちょっとしたことでも実際にはかなり大きく動くものなので、折鍼が起きたらすぐにどこの場所でどのぐらいの深さなのかを把握して、病院で伝えることが必要になると思います。

 

 もちろん、患者さんが動けば折鍼した鍼が体動によって移動をしてしまう可能性があるので、折鍼したら、患者さんには姿勢を変えずに身体を動かさないようにしてもらう必要がありますね。

 

 いつ取れるか分からないものなので、折鍼した鍼が取れるまで、同じ姿勢を長く続けないといけないので、せっかく治療にきてよくなったとしても、悪化をしてしまう可能性も高いので、当たり前ですが、折鍼は患者さんのためにも起こさないように気をつけないといけないことですね。

 

折鍼が起きたら、すぐに取れるという事例もあるみたいですが、中に入り込んでしまえば、筋層なども切開して探すことになるので、たった数ミリのものでも身体を大きく傷つけてしまうことになります。

 

 切開となれば、小さいものでも手術になりますし、傷がつく範囲が大きければ、快復するまでも時間がかかるので、患者さんの生活にも影響を及ぼしてしまいます。

 

 折鍼はそれだけ重大なことになるので、日々、折鍼を起こさないように注意をしておく必要がありますね。もちろん、全ての鍼灸師が経験をするものではないですし、本当にまれなケースではありますが、万が一、治療中に大地震でもあれば、折鍼をしてしまう可能性もあるので、起こしたらどうするのかは知っておいた方がいいと思います。

 

 折鍼を取り除くために行った治療に関しては、災害などのどうしようもない状況もたしかにありえますが、基本的には治療者側にあります。患者さんの方で故意に折鍼をしたなら別ですが、自分から鍼が折れるようにしたい患者さんは普通いないですよね。いたら困ってしまうところですね。ただ、その場合は何故という原因もしっかりとまとめておくことが大切ですし、治療した部位・刺入深度なのに関してしっかりとカルテに書いておくのがいいと思います。

 

 折鍼を取り除く治療費、休業補償に関しては、鍼灸師側で用意する必要があるので、かなりの額になることも多いでしょうから、自分のためにも患者さんのためにも、鍼灸師の賠償責任保険に入っておく方がいいと思います。

 

 賠償責任保険には、保険会社にもよるでしょうが、勤務型・開業型と別れることもあります。勤務型の場合は治療自体に対して保険対象になりますが、開業型だと院内設備などに関しても保証の対象になるので、勤務型よりも高い傾向があります。

 

 例えば、治療が終わってベッドがガタついてしまって、患者さんが転んで怪我をしてしまった場合は、治療内容ではなく院内設備の問題になるので、開業型が保証をすることになります。

 

 治療院に数人のスタッフがいたら、院長は開業型、スタッフは勤務型に分けて加入することになります。賠償責任保険に関しては、会社からの支払いではなく、個人で支払って入ることが多いですね。

 

 会社が払ってくれればいいのにという意見を聞いたことがあるのですが、会社からしたら鍼灸師が鍼灸業務を行うのは当然なことで、事故が起こらないという前提になっているので、会社から支払うことは少ないと思います。それに鍼灸師のメリットとしては、患者さん以外の親類や親戚の治療をすることもあり、その治療に関して事故があった場合に、個人で行ったのに事故が起きたら会社から支払いをしている保険を使うのはおかしなことになるので、通常は個人で入りますね。

 

 賠償責任保険には、鍼灸、柔整、無資格などいろいろな形や組み合わせがあるので、自分が行っている治療内容と照らし合わせて加入する必要があるので、賠償責任保険に加入するのであれば、複数の団体から資料を取り寄せて、疑問点をしっかりと尋ねてから加入をする方がいいと思います。大体、どこの保険でも年間1万円前後で加入できます。

 

 事故に対する保険の支払いも決める必要がありますが、いくらがいいのか分からないこともあると思いますが、最悪の状況を考えて決める必要があります。例えば、一人の障害年収は2億と言われているので、若い人の死亡事故が発生したら2億と考えると、1~2億の保証はあった方が安全ではないかと考えることができます。

 

 鍼灸で亡くなるということは、極度の両肺気胸を起こして放置をしないと発生しにくいことなので、自分が行っている治療がどのぐらいのリスクがあるのかをしっかりと考えておくのが重要だと思います。

 

 鍼の危険性は刺入深度とも関係が深い物ですので、どれぐらいの深さに刺入をするのかは絶えず考えた方がいいですね。過去のブログの中で刺入深度をどうするのかというのを書いていますので、参考にしてみて下さい。

「鍼治療で刺す深さはどう決めるか」

「鍼の響きが出る深さ」

 

 事故は未然に防ぐことが非常に難しいですが、ハインリッヒの法則というのがあり、重大な事故が起こる前には、いくつかの小さなミスがあると言われるので、普段から“危ない”という経験がないように心がけることが大切ですね。ハインリッヒの法則に関しては、こちらのブログで書いています。

「鍼が抜けなかった経験はありますか?」

 

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