ヨクイニンと薏苡仁湯(よくいにんとう)

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 連日の漢方薬ブログになっていますが、気になったのが続いてしまったので、仕方がないですね。

 漢方薬を調べている中で出てきたのが、ヨクイニンと薏苡仁湯です。違いはカタカナと漢字ですね。何が違うのかが分からなかったので、調べてみたら、ヨクイニンは薏苡仁単体のエキスを抽出したもので、薏苡仁湯は漢方薬の処方で複合処方になっています。

 

 ヨクイニンは、イネ科のハトムギの種子で、種皮をつけたままのものがハトムギで、種皮を除いたものがヨクイニンと言われます。ハトムギははとむぎ茶とかでスーパーでも見かけるので名前はなじみが深いですよね。

 

 ヨクイニンは肌の調子を整えるのにも使われることが多いので、肌のことを考えると、日常的にハトムギを摂取するのもいいのかもしれないですね、生成過程も違うので、しっかりと生成されたヨクイニンと比較をすると成分に違いがあるようです。

 

 日常的に飲む物で効果が高過ぎれば、薬と同じで危険性が増してしまうので、仕方がないですが、全く意味がないという物でもないので、肌の調子を考えてハトムギを飲んでいる人もいるのかもしれないですね。

 

 ヨクイニンはタブレットなどでも市販をされていますが、いぼや皮膚のあれに対して効果があると言われています。漢方薬の売れ筋ランキングでも上位にあることが多いので、肌の調子を整えるのによく使われているのが分かりますね。

 

 神農本草経では上品にランクをされているので、日常的に接種をしてもいいと言われるものなので、身体の滋養強壮にも優れているのが分かります。神農本草経に関してはこちらのブログを参考にしてください。

「東洋医学三大古典と東洋医学五大古典」

 

 ヨクイニンは薏苡仁と漢字で書かれていて、利尿、排膿、鎮痛、強壮の働きがあると言われています。脾や肺との関係も深い生薬になるので、脾・肺の機能を高める時には用いることができますね。

 

 脾・肺は身体の水分代謝に関係をする臓になるので、水分が停滞した状態を改善する働きがあり、水が停滞して生じる痛みに対しても効果的なので、運動器疾患でも適応となることがあります。肺は皮と対応をするので、やはり皮膚疾患にも効果的だということが分かります。脾や肺についての話に関してはこちらのブログを参考にしてください。

「脾の働き」

「肺の働き」

 

 薏苡仁が含まれる漢方薬には、麻杏薏甘湯(まきょうよくかんとう)・薏苡仁湯(よくいにんとう)・参苓白朮散(じんれいびゃくじゅつさん)などがあります。麻杏薏甘湯は表証のときに用いるもので、風邪のときに出てくる咳がある場合に使うと言われています。

 

参苓白朮散は脾の気陰両虚のときに用いるものとされています。麻杏薏甘湯も参苓白朮散も脾の問題が発生していると言えるので、薏苡仁の効果が発揮をされています。

 

 薏苡仁単体だと、肌トラブルに対して用いることが多いようですが、薏苡仁湯になると薏苡仁だけではなく、当帰・麻黄・白朮・勺薬・桂枝・甘草が含まれていき、水の阻滞による痛みやしびれに効果があると言われています。水の阻滞による痛みに関しては痹証と呼ばれる状態の一つです。

 

痹証は風寒湿という外邪が阻滞することによって発生する痛みとしびれで、風の問題が強いものを行痹(風痹)、寒の問題が強いものを痛痹(寒痹)、湿の問題が強いものを著痹(湿痹)、熱の問題が強いものを熱痹といいます。薏苡仁が効果的だと言われるのは水の問題が中心になるので、湿痹に対する処方になります。東洋医学的な身体の中の水という概念は津液であり、停滞した場合は痰湿と表現をしますが、津液に関してはこちらのブログを参考にしてください。

「身体の中の水分―津液の話し」

 

 麻黄と桂枝は身体を温めて水の流れをよくする生薬で、風邪のときに用いられやすい物の一つですね。当帰と勺薬は血と関係をしやすい漢方薬になりますが、何かが身体に影響をしたときには、身体の内側まで問題が生じるので、内側である血に対しての生薬が含まれていくことがありますね。

 

 白朮と甘草は脾胃の働きを助けるものになるので、生薬がしっかりと消化・吸収するために働きかけると考えられます。ヨクイニンと薏苡仁湯では使う目的が変わっていますが、ヨクイニン単体で使う場合は皮膚、薏苡仁湯で使う場合は湿痹と覚えておくと便利ですね。

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