膈兪

Pocket

 膈兪は胃の六つ灸にも含まれていて、八会穴の血会でもあるので、重要な穴だと考えることができます。

 背中の膀胱経は臓腑と関係をする経穴が多く並んでいるので、臓腑と関係をする背部兪穴が多いところになりますが、膈兪は背部兪穴と同様、“兪”という感じが付けられているので、身体の内部と大きく関係をしやすいというのがわかります。

 

 では、膈兪の“膈”にはどんな意味があるのかというところですが、膈兪の“膈”は胸とお腹を分けるという意味があり、横隔膜のことをさしていると考えられています。確かに、前から見ると、肩甲骨下角より上は胸と表現をして、肩甲骨下角から下はお腹と表現しているので、膈兪の位置は胸とお腹の中間になりますね。

 

 そう考えると、経穴の名前についてもよく考えられているなと思います。さらに血会という意味が込められていますが、上には、心兪があり、下には肝兪があります。心は血の流れに関係をし、肝は血を蔵しているところなので、上下に血に関係する穴があり、中間として交わる場所なので、膈兪は血会という名前になったとも言われています。

肝の働き」、「心の働き

東洋医学の血と現代医学の血液の違いは?

 

 膈兪は横隔膜とも関係をしているので、横隔膜痙攣でもあり、胃気上逆の症状でもある吃逆(きつぎゃく)・呃逆(あくぎゃく)と言われる、しゃっくりに対しても治療効果があるとされています。

気逆という考え方

 

 膈兪は横隔膜と関係をしているというのは、先ほど書いた通りですが、治療としての使い方で考えていくときに、胃気上逆である吃逆・呃逆の治療に使えるという点と、胃の六つ灸に含まれているという点から、胸に対する治療穴というよりは腹部疾患に対する治療穴という意味が強いと思います。

 

 何故、そうなったのかは決めた古代の人に聞くしかないのですが、鍼の響きを感じたときにお腹の方に感じたからなのかもしれないですね。現代では神経の走行という知識もあるので、肋間神経は肋骨に沿って存在しているので、鍼の響きが神経走行とも当てはまったところがあるのではないかと思います。

 

 肋間神経の走行で考えた時にデルマトームと言われる皮膚文節がありますが、ヘソのところがちょうど第10胸神経と関係をしていて、心窩部の当りは第7胸神経と関係をするので、神経の走行で考えると、心窩部なので、胸部ではなく腹部に当るので、その感覚と治療で使った効果から腹部についての治療穴と考えたのではないでしょうか。

鍼のひびきとは?

 

 あくまで憶測なので正解ではないですが、経穴の由来や意味を考えてみるのは楽しいですね。

 

 膈兪は、ばね指(弾発指:だんぱつし)の特効穴としても有名なところになるので、指の疾患に対しても効果があるところになります。ばね指で用いるときは、刺入をしないで、その場所だけを刺激するような雀啄術を行っていきながら、mm単位で刺入をしていくと指に響きを感じることや症状が軽減をすることがあります。

 

 高齢な方では、ばね指を持っている人も多いので、治療としてはよく使っている経穴になりますね。ただ、刺入で考えるときには、深く刺入をしてしまうと、胸郭の中に入ってしまい、気胸を起こしてしまうリスクがるので、直刺で刺入する場合は1cm以下にしておかないといけないですね。

 

 1cm以下と言っても、押手で強く圧迫をしてしまえば、皮下脂肪・筋肉も圧縮をされて胸膈内までの距離が短くなってしまうので、5~8mm程度にしておくのが安全だと思います。

 

 通常、膈兪を用いるときは、内下方・内上方・内側に向けて斜刺で刺入をしていくのが基本ですが、水平刺で使うことも可能です。水平刺であれば、血に対する治療として、心兪と同時に使用したり、肝兪と同時に使用したりが可能になるので、自分が何の治療をしたいかによって刺入角度と方向を決めることが大切だと思います。

 「斜刺と水平刺のやり方」このブログのリンクに斜刺と水平刺の治療効果のリンクもあります。

 

 刺入をするのが怖いのであれば、膈兪と同じ高さの夾脊穴を使うのも効果的ですね。私は膈兪を使うときは、斜刺・水平刺を用いるようにしていて、直刺で刺入をするのであれば、夾脊にすることがあります。

 

 夾脊の取穴はずれてしまうと、胸膈に届いてしまうので、棘突起をしっかりと確認をして刺入部位を何度も確認することが大切になります。

 

 ばね指は筋が上手く働けない疾患とも言えるので、筋の動きは血の栄養によって成り立っているので、血を補うことが、ばね指の治療で大切なのかもしれないですね。

Pocket