気の昇降出入

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 東洋医学は気の医学と言われるので、生命現象を気という表現を使って説明していますが、その一つに気の昇降出入があります。

 気の昇降出入に関しては以前のブログでも書いているのですが、頭の中が少し整理をされたので、新たに文章として書いてみようと思います。

「気の運動」

 

 人の生命現象を考えていくときに、どうやって人が生きている状態を続けることが出来るのかということを、“気”という言葉を使えば説明が出来るのですが、大まか過ぎて具体性に欠けることになるので、種類・作用・運動という3つの分野で説明をすることができます。

 

 学校だと最初の頃に習う内容だと思いますが、3つも気に関する話なので、何が違うのかがいま一つ分かりにくかったですし、理解できるまで時間がかかりました。今まで、そんなに考えることがなかったのですが、ブログを書くことによって、何がいいたいのかを考えるようになり、理解が深まったところですね。

 

 気の種類というときには、人が生きているのには、“何の問題か”という具体性をつけるために使われている物になります。例えば、生命力の低下であれば元気と考え、呼吸や発声は宗気と考え、栄養不足は営気と考え、風邪を引きやすい・回復力は衛気と考えていくと、ある人の身体の状態を4つに分類していくことができます。

 

 元気と宗気は上下という陰陽で対立していて、働きとしても対立をしているものです。営気と衛気は脈内・外という陰陽で対立をしていて、働きとしても対立をしているので、身体の働きを陰陽で4つにわけ、それぞれに名前をつけたのが、気の種類だろうと思います。

 

 分類が出来るということは、治療を試みようした場合、違う治療を選べるということになるので、治療の幅が広がっていきます。気の種類に関しては、過去のブログで細かく書いているので、そちらも参考にしてみてください。

「気には分類がある。」

 

 気の作用というときには、人が生きているのには、目に見えない働きによって成り立っているので、“どういう働き”があるのかという具体性を付けるために使われている物になります。

 

 人の身体には、気血津液などが流れているのが正常であり、流れが止まってしまうというのは死を意味するので、流れを作る働きを推動作用と言います。人が生きている、死んでいるという鑑別は身体が熱・寒で分けることが出来るので、生きているのは温かいので温める働きの温煦作用があると言えます。

 

 人は環境に対応して生きているので、環境適応能力のことを防御作用と呼んでいきます。人の身体の中には、気血津液などがあり、外に漏れないようにしていることで生命が成り立っているので、外に漏れないようにしている働きのことを固摂作用と言います。

 

 人が生きているということは、食べて栄養を摂取して、気血津液に変えていく働きがあり、身体の中に入った物は、排泄として便、尿、汗などになっていくので、この変化をしていくことに関して気化作用と呼んでいきます。気の作用に関しては、過去のブログでも書いているので参考にしてください。

「生命現象と気―気の作用」

 

 気の昇降出入という働きは、人の生命というものは、気血津液などが流れていることで生命が成り立っているので、気血津液などが流れていく“方向”についての働きのことになります。

 

 人の身体を一つの球体として考えてもらって、その中に何かが流れていると考えていくと、一方向だけに流れてしまうと、どこかに偏りが生じてしまうので、外に流れていく力があれば、反対の内側に流れていく力が必要になります。例えば、お風呂のお湯を熱くないように全体にかきまわすときに、手前に引いてくるようしますよね。手前に引くという方向に力を加えていますが、お風呂は閉鎖をされている物になるので、お湯が壁に当たり、手前から奥に向かう方向が出てきます。

 

 お風呂をかきまわすということで考えていくと、手を入れるということは上から下に力を加えることであり、内側からお風呂の外側に向けて力を加えているので、流れるということには、下・外という力が必要になります。下・外に力を加えるということは、閉鎖されている空間であれば、壁にぶつかり反対の力が加わるので、上・内という運動方法も発生しますが、これが気の昇降出入という内容です。

 

 顔色が悪くなった場合は、上に気血を昇らせる働きが低下をしていると考えることができますし、下に向かう力が強いと考えることができます。妊娠中では、この上下昇降に関する考え方が大切で、妊娠維持には昇の状態にする必要があり、出産時には降の状態にする必要があると考えていくことができます。

 

 内外は栄養摂取と呼吸がイメージをしやすいと思います。身体の中に取りこむ働きである消化・吸収が悪ければ、内への力が弱く、栄養を行き渡らせるのは外の働きになるので、食べているけど、栄養がめぐっていないときには、外への力が弱いということが分かります。

 

 呼吸であれば、吐くのは外への力であり、吸うのは内への働きになるので、呼吸でどちらの問題が生じているのかによって問題があるところを詳細に知っていくことができます。気の昇降出入だけだと治療に向かうことができないので、臓腑の働きや相互の関係というところにもつながっていくので、蔵象を理解することが大切になります。蔵象に関しては、過去のブログに書いているので参考にしてみてください。

「蔵象のまとめ」「蔵象とは何か」

 

 気の昇降出入は臓腑の考え方を合わせることによって、上への力が強すぎるときは、下への力が低下をしてしまうと考えていくことができるので、上への力は瀉法、下への力は補法というように治療の幅を広げていくことが可能になります。

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