同じような名前で働きが違う漢方薬というのはよくありますが、その中でも四君子湯と六君子湯は胃腸の問題で使われやすいものですが、働きが違います。
六君子湯と四君子湯は六と四の違いなので、入っている生薬の数が違います。
- 四君子湯:人参、白朮、伏苓、甘草、大棗、生姜
- 六君子湯:人参、白朮、伏苓、甘草、大棗、生姜、半夏、陳皮
入っている生薬の数が違うよということなので、同じような働きがあるけど、半夏と陳皮が入っているので効果が少し違うのかなというのが分かると思います。もう一つ、似たような漢方薬があるので、比較をしてみます。
- 四君子湯:人参、白朮、伏苓、甘草、大棗、生姜
- 六君子湯:人参、白朮、伏苓、甘草、大棗、生姜、半夏、陳皮
- 二陳湯 : 伏苓、甘草、 、生姜、半夏、陳皮
これから考えると、六君子湯は二陳湯に人参、白朮、大棗を加えたものだという説明もできますよね。ということで、六君子湯の中には二陳湯がそのまま入っているので、四君子湯と六君子湯の違いというのを考えるときには、二陳湯のことを知らないといけなくなります。
- 四君子湯:脾胃虚弱
- 六君子湯:脾胃虚弱、痰湿
- 二陳湯 :痰湿
お腹のトラブルで使われる四君子湯と六君子湯は、痰湿があるかないかによって使い分けをされるものになります。四君子湯はお腹のはりや、食欲不振、軟便の人に効果があると言えますし、六君子湯は四君子湯の効能にプラスして二陳湯の効能が含まれます。
二陳湯は、痰湿に使えるものなので、胃もたれ、お腹のつかえ、食べるとお腹が張りやすい、吐き気、悪心、嘔吐などに使われるものなので、お腹の調子がよくないといっても、四君子湯なのか六君子湯なのか二陳湯なのかを鑑別することが必要になります。
四君子湯と六君子湯は八綱弁証で考えると脾胃の弱りなので、裏虚寒と考えることが出来るのですが、裏虚寒である脾陽虚に対しても使っていくことができるとされています。八綱弁証の考え方と陽虚に関しては過去のブログを参考にしてください。
「八綱弁証」、「東洋医学で考える暑がりと寒がり―陰虚と陽虚」
気は陰陽で考えると陽であり、気の種類と作用の中で、気には温める働きがあるので、気の働きが低下をしてしまう気虚の状態だと寒がりの状態が発生することがあります。身体を温める働きが低下をして、冷えがひどくなってしまったものが陽虚と言えるのですが、気虚でも冷えが現れることがあるので、裏虚寒にも使えるということになります。気の種類や作用に関しては過去のブログを参考にしてください。
ただ単に、気虚と陽虚と別のものとして覚えてしまうだけだと、裏虚平・裏虚寒のどちらにでも使える物が出てきたときには混乱をしてしまうことがあります。ですから、気とはどんな働きがあるのかをしっかりと理解をしておくことが大切ですね。
陳皮は胃腸の働きを亢進することによって、気の昇降出入である、降の働きを強めることになるので、身体の中に停滞をしてしまっている、痰湿を大小便として排泄をする働きがあります。
半夏には、痰湿による咳や嘔吐を鎮める働きがあるので、気逆の状態に用いていくことが出来るものなので、これも気の昇降出入の降を強める働きがあります。
漢方薬を調べようと言うときに、いろいろな名前があって混乱をするのですが、同じような働きの漢方薬をまとめて、何が違うのかを理解するだけでも、漢方薬に対する理解が深まっていきます。
ここで紹介した四君子湯、六君子湯、二陳湯は、お腹の調子と関係をしているので、お腹の不調があるときには、使われやすいものになります。私も過去の患者さんで、お腹の調子がよくないと言う話をしたら、六君子湯を処方されたという人もいましたよ。
こういった話しを聞いたときに、六君子湯であれば、脾胃の働きが悪いだけではなく、痰湿の停滞が生じているので、腹部の張り、嘔吐などが発生しているのだなと症状と身体の状態を推測することが可能です。
六君子湯と二陳湯の違いは、六君子湯は脾胃の弱りがありますが、二陳湯では脾胃の弱りが発生していないと言えるので、飲んでいる漢方薬を聞くだけでも、弁証を導き出すことが可能になります。
ここで紹介をした3つの漢方薬は全て「脾の働き」に大きく関係するものになります。