東洋医学で考える暑がりと寒がりー陰虚と陽虚

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 東洋医学では、暑がり・寒がりといった身体の寒熱バランスを考慮することが重要になります。気温変化によって感じる暑がり・寒がりというよりは、体質的なものを考えるために使っていきます。

1.身体と外気の陰陽

 暑いという状態を考えてみた場合、気温が高ければ暑いに決まっていますが、それでも人によって暑い・寒いという基準が違うと思います。32度でも暑いという人もいるでしょうし、35度までなら平気という人もいるので、これはその人の身体の状態と関係するとも言えます。

 

 冬の寒さも、人によっても違いが生じるので、その人の寒熱バランスを取る力と大きく関係をしていきます。このことを考えていくときに、陰陽論の言葉を使っていくことになります。

 

 暑いというのは陰陽で考えれば陽になり、寒いというのは陰陽で考えれば陰になります。そこで外気温が強くなり、暑い・寒いというのが生じる場合は、陽実(陽盛:ようせい)・陰実(陰盛:いんせい)と表現することになります。

 

 この陰陽という身体の暑い・寒い(寒熱)は外気温という外の影響もあるのですが、体内にも陰陽(寒熱)が存在しています。

 

 例えば、身体の陽が弱い人がいた場合、身体を温める機能が弱いと考えることが出来るので、寒いところにいけば、温める機能が弱いので、寒く感じやすくなります。逆に、身体の陰が弱い人がいた場合、身体を冷やす機能が弱い人なので、寒いところにいっても身体は大丈夫なことがあります。

 

 この身体の陰陽の相対的な量の違いが暑がり・寒がりに関係しているので、東洋医学では陰虚・陽虚という考え方が大切になっていきます。本来であれば、体温が一定で、外部環境の温度変化にも柔軟に対応できるというのが正常な状態として考えます。

 

 年とともに、身体の持っている力が弱くなってしまえば、この陰陽も不足をしていってしまうために、身体の寒熱を調節することができなってしまうので、体温調節機能が弱くなります。

 

 身体の持っている調節機能が弱い新生児や高齢者は寒熱による身体の影響が強いので、温度・湿度管理をしないといけなくなります。

 

 正常な状態の人であれば、寒い地域などに旅行などで行ったあと、戻ってくるとそれほど寒く感じないというのがありますが、これは寒(陰)の強い地域に行ったので、身体が熱(陽)を強くしないといけないので、陽がいつもより強くなっているためですが、短期間であればすぐにもとに戻ります。

 

 長期間であれば、体質にもなるので、身体の陰陽バランスというのは環境適応をすることができます。

 

2.陰虚と陽虚

 身体が何となくほてりやすいというのは陰虚のことが多くなります。陰虚は身体の力が弱くなっているので、全身が暑くてほてるという力がない状態にもなるので、手足がほてりやすいと言われます。

 

 手足のほてりと言われてもイメージがしづらいかもしれませんが、寒いところにいても手が冷えない、夜に何となく手足を布団から出して寝るというのは陰虚の傾向があると考えることができます。

 

 夜に身体がほてる傾向が強いので、寝汗(盗汗:とうかん)をかきやすいと言われます。盗む汗というのは、寝ているときに知らずに体内に水が奪われているという意味です。

 

 身体が何となく寒いというのは陽虚のことが多くなり、夏でも寒く感じることが多くあります。一般的に言う、冷え症の人が当てはまると思います。特徴的な症状や状態もあるのですが、寒いと身体がどうなるかというのを考えてもらえば、陽虚の症状にもなります。

 

 例えば、寒がりなので寒いのを嫌がるでしょうし、寒いとトイレにも行きたくなるので、小便の量や回数が多くなる傾向があります。寒くてお腹を下してしまうこともあるので、下痢が発生する場合もあります。

 

 この陰虚・陽虚を確認するのが治療においても重要になるので、最初は症状がスムーズに出てこなくても、暑がりか寒がりかというのを尋ねるだけでも何となく身体の寒熱(陰陽)イメージを作ることができます。

 

3.まとめ

 陰虚・陽虚というのは年齢とともに、発生していくものでもあるのですが、日々の生活の中でも陰陽(寒熱)の変調はあるので、自分の体調確認という面でも自分の陰陽変調は知っておくといいと思います。

 

 例えば、昔は寒さを感じなかったけど、寒く感じるようになったのであれば、熱(陽)の力が弱くなったのではないかと考えることができます。年とともに、陰陽の働きが減り、だんだんと暑がりで寒がりという状態になっていきやすいので、更年期障害で出てきている症状は陰陽の失調として考えることができます。

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