打ち抜きの灸―貫抜きの灸

Pocket

 お灸は艾を捻って艾炷(がいしゅ)を作り、身体の上に乗せて火を点けるシンプルな治療なのですが、シンプル故に応用も出来るものになります。

 例えば、お灸は大きな物にすれば、知熱灸として使っていくことが出来るだけではなく、艾球にすれば、灸頭鍼にしていくことも出来るのですが、単純なお灸はとにかく上手くなっていないと、いろいろな使い方が出来ないとも言えます。灸頭鍼と知熱灸に関しては過去のブログで書いているので参考にしてみて下さい。

灸頭鍼の効果と使い方

知熱灸の最適な大きさと治療効果

 

 打ち抜きの灸(貫抜きの灸)は最初に何で見たのかはすっかりと忘れてしまったのですが、面白いやり方だなと思って、自分で練習をしてみたことがあります。

 

 やり方としては、2点のお灸を同時に行って、熱刺激を同時に加える方法なのですが、場所は、外関・内関、三陰交・懸鍾がやりやすいと思います。大腿部・上腕部・体幹にも出来るのでしょうけど、かなり難しいので、前腕・下腿がやりやすい場所だと思います。

 

 2点に同時に行うのは、無理ではないかと思うかと思いますが、少し工夫をすれば、無理なく行っていくことができます。例えば、外関・内関に打ち抜きの灸を行っていく場合には、外関は高めの艾炷にして、内関は外関に置いた艾炷の高さの6割程度にしておくと、外関に点火をしてから、内関に点火をしても間に合います。

 

 艾炷の高さは変えても、低面の大きさを変えてしまったら、熱刺激量が大きく変わってしまうので、一定の太さの艾炷を作成出来るスキルは必要だと思います。打ち抜きの灸では緩和をやろうとしても2か所を同時にみていくのは難しいので、緩和をすることができないと思います。

 

 緩和をしないことになるので、艾炷の大きさと堅さにもよるでしょうが、火傷をする確率は非常に高い方法になります。

 

 私も行ってみたのですが、成功率は3割程度かなというところでした。練習をしていけば、確率はあがるのでしょうけど、火傷が付いてくるので、なかなかやれない感じではありますね。治療院に来る方で、よくなりたいけど、火傷は嫌だという人は多いですしね。

 

 火傷をさせないためには、片側ずつ行えば緩和も出来るので、火傷をさせずに、打ち抜きの灸を行っていくことが出来るのですが、実際の効果としては、緩和をさせない方が効果的ではないかと思います。

 

 友人と自分の外関・内関、懸鍾・三陰交で試してみたのですが、緩和をしながら片側ずつ行う方法は悪くはないのですが、本当に打ち抜くお灸よりも効果が低く感じました。打ち抜きで感じる熱さというか響きは外関・内関であれば、その中央つまり身体の深部に感じるので、あの感覚は独特の物だと思います。

 

 失敗をすると、外関が熱い後に、内関が熱くなって、前腕の両面が少しひりひりするような感覚だけが残りますね。内部に響きを感じることもありますが、通常のやり方だと、外関・内関から浸透をするという感じなので、ダイレクトに身体の深部という感じではないですし、外関・内関から浸透をさせるのはかなり時間がかかりますし、打ち抜きのようなすっきり感とは違うかなと思いました。

 

 私の成功率は3割程度なので、熱さが残るだけのことが多いのですが、成功をすると、その部分から末端が一気にすっきりするので、頑固な冷え・痛み・しびれの人には効果が高いだろうなと思っています。

 

 思っているということは、患者さんにはほとんどやっていない状態です。一応、使うこともあるのですが、火傷が大丈夫で、お灸が好きな人だけになりますね。

 

 成功率が3割と書きましたが、患者さんにやるときには、非常に時間をかけて艾炷の作成を行うので、成功率は8割ぐらいまであがるのですが、一瞬のタイムラグもなく、完璧なタイミングとなると、難しいですね。

 

 鍼には鍼の良いところがあると思いますし、お灸にはお灸の良いところがあると思うので、どちらも、いろいろな側面を知っておくと、治療の中でのイメージが膨らみやすいと思いますよ。鍼灸師であれば、一度は自分の身体で体験をするチャレンジをしてもらいたいところですね。

Pocket