相生(そうせい)と相克(そうこく)の使い方―鍼灸での使い方

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 東洋医学は陰陽五行説を利用していて、五行説には相生と相克という関係があり、身体の働きや病気の移り変わりや、治療としての考え方に利用をされています。

 五行は五材と言われる木火土金水が自然の中に存在し、全ての物は五行に分けられると考えていくものです。五行と言えば木火土金水と言われています。人の身体には臓腑と呼ばれる内臓が入っていますが、東洋医学では内臓も五臓に分類をしていくことで、内臓の働きをイメージしています。

 

 内臓は単体で働くということはなく、相互に影響をし合いながら、助け合いながら生命を成り立たせているので、その相互に影響をしあう働きは五行では相生・相克と言うので、東洋医学の内臓の考え方では相生・相克も含まれていきます。

 

 鍼灸師によっては五行の相生・相克を中心とした治療をする人もいるでしょうが、中医学や学校で習った知識では五行の相生・相克を使った考え方はあまり出てこないので、自分なりに理解をして使っていくことも大切ですね。

 

 五行の相生・相克を使わなくても治療として成り立ちますし、治療効果も出てくるので使う必要がないともいえるのですが、思わぬ拾い物になることもあるので、五行の相生・相克については忘れない方がいいと思いますよ。

 

 例えば、お腹の調子が悪く、軟便や下痢があるというのは脾と関連する症状になるので、治療で脾を使っていくと改善をしていくと考えるのが東洋医学ですし、シンプルなやり方だと思います。

 

 脾の症状が出ていて、相生・相克を使うのに有名なのは、木克土の話しですよね。木の失調によって、土を克する力が強くなってしまった場合は、土である脾の働きが低下をしてしまうので、脾の症状が出てくることになります。

 

 脾の治療をしても木である肝の治療をしても効果がみられなかったときに、五行の相生・相克をもう一度見直してみることが大切になります。この場合は、時系列で身体や生活の状態を尋ねておく方が理解をしやすいと思いますよ。

 

 例えば、昔に親族が無くなり、辛い思いをしたのであれば、心の働きが低下をした可能性があり、心の働きが低下をすると、心は火であり、土の母になるので、土に栄養を出来ない状態になり、脾の働きが低下をした可能性があります。

 

 土である脾が弱っているところに、さらに精神的なストレスがかかったのであれば、木克土が生じてしまうので、心から始まって脾、肝と連鎖をしたのではないかと考えていくことができます。

 

 こういった場合は、ふと思いついて治療にたどり着くこともあるのですが、心に対して治療を加えたら一気に改善をしていく場合がありますね。

 

 皮膚の症状が出ている場合は、肺の問題として考えていくことが多いですしが、五行の相生・相克を使っていくと、脾の働きが低下をしてしまったことにより、肺を生み出すことが出来なくなり皮膚の問題が出たのではないか、過剰なストレスにより木が土を克してしまった結果、肺を生み出せなくなったのではないか、心労によって火が強くなり金である肺を克し過ぎてしまって皮膚の症状が出たのではないか考えていくことが出来るので、皮膚で肺だから肺の治療とするだけではなく、他の臓腑から治療を広げていくことが出来ます。

 

 ただ、こうやって使っていくと、何回もぐるぐるとまわってしまい、終わりがなくなってしまうことがあります。例えば、金の問題は土が生み出せないからで、木が土を克したことによって生じているかもしれないけど、水が木を栄養し過ぎているのではないかというように意味不明になってしまいやすいです。

 

 相生・相克は円になっているのでいくらでも繋げていくことが出来るのですが、最初は一つ前や克しているところ程度にしておいて、慣れてきたら、他はどうなのか確認をしていくぐらいにした方がいいですよ。

 

 東洋医学を勉強し始めた頃は、五行の相生・相克で病の伝変と波及を考えていくと終わりがなくて、結局、どこかをやれば効果があるから、どこかをやればいいのだろうというところに落ち着いてしまいますが、しっかりと勉強をしていくと、繋がりやすいところ、繋がりにくいところが理解できるようになりますし、病能として繋がることは少ないのではないかと思うようになるので、その段階から五行の相生・相克を取り入れると治療の幅が広がると思います。

 

 私は、まだ使いこなせていないので、完全ではありませんが、少しずつ相生・相克の考えを広げて、身体の病態を理解してみようかと思っているところです。完全につながることはまだまだ少ないですが、それでも繋がって治療効果が今までよりもよかったときの嬉しさが忘れられないですね。

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