アナトミートレインは現代医学的な考え方がベースで、経筋は東洋医学の考え方ですが、共通点が多くあります。
1.アナトミートレイン
アナトミートレインの考え方は1900年代の初めころにはあったようですが、2000年代に書籍として出版されて有名になった物です。実施に解剖学の書籍で全身の筋肉の走行を見ていくと、線維走行が似ている物があって、別の筋肉と繋がりがあるように見えます。
解剖学は部分として細かく分析をしていき、名前が付いていくものですが、人間の身体は、一つの筋肉で運動が行われるのではなく、複数の筋肉が連携しているので、同じような走行の筋肉があるのは当然ですし、助けあうのも当然ですよね。
例えば、立位を維持するためには抗重力筋が大切になり、下腿三頭筋、ハムストリングス、脊柱起立筋群は協調して働いています。繊維走行を見てみると似た方向になるので、繋がりがあるのではないかと考えていくことができます。
アナトミートレインの詳細は、著作権もあるものなので詳細は省きますが、筋の繋がりを色分けして示しているので、イメージとして捉えやすいと思いますよ。詳細は書籍やDVDを参考にしてみて下さい。
『DVD付 アナトミー・トレイン 第2版―徒手運動療法のための筋筋膜経線』
2.経筋について
経筋は『霊枢』の経筋というところで書かれているのですが、気血は経絡に走行して、身体の運動は経筋が支配していると考えていきます。知識的な学習としては経絡走行が分かれば、その付近の筋肉は経筋と呼ばれる物になるので、経絡を理解することが大切です。
経筋は、現代医学の解剖学と違い、経絡の走行と関係をしていくので、部分だけで捉えるのではなく、全体の機能として考えていくので、身体の運動とも大きく関係しやすいです。例えば、足太陽膀胱経は、足の第5指から下腿後面、大腿後面、殿部、腰背部、頭部まで繋がっているので、抗重力筋全体としての機能は足太陽膀胱経と関係をしていると考えることが出来ます。
経絡、経筋、皮部という概念に関しては、こちらのブログを参考にしてみて下さい。
3.アナトミートレインと経筋
アナトミートレインを見てみると、現代医学の内容が多く、患者さんにも伝えやすいし、筋肉なのでイメージをしやすいので、多くの方が受け入れやすい内容なのではないでしょうか。
経筋の考え方は経絡を理解していないとイメージしていくことが出来ないので、経筋は患者さんや東洋医学を知らない人には受け入れにくいのではないでしょうか。
内容的には似ているところが多いので、アナトミートレインを学ぶと経筋の繋がっていく状態をイメージしやすいでしょうし、経筋を知っていれば、アナトミートレインを経筋に置き換えてイメージ出来ると思います。
経筋は鍼灸学校でも多く習うものではないので、経筋を理解したいのであれば、アナトミートレインを理解して、それから経筋の学習をしていくと、知識を広げていけるのではないかと思います。
例えば、アナトミートレインで、身体の動作を理解し、似たような経筋を見ていくとより広い範囲で身体の動作が関連しやすいのが分るでしょうし、肺の経筋に関係しているのであれば、呼吸器系も弱いのではないか?風邪(かぜ)の後から症状が悪化をしたのではないかと考えていくことができます。
経筋は運動器と関係をしていますが、経筋のもとは経絡であり、経絡は臓腑に繋がっていくので、東洋医学の考え方を加えていくことができれば、病態の把握や体質の把握に役立つので、経筋をしっかりと理解していった方がいいと思います。
私は、経絡・経筋について少し理解している中でアナトミートレインに出合ったので、経筋と近いものだし、説明するのに便利だなと思っています。ただ、患者さんに取っては、現代医学でイメージしやすいと言っても、医療に関係する用語なので、普段の治療の中でアナトミートレインという言葉を出すことはありませんね。
それよりも、座るときには、殿部だけではなく、大腿部も腰背部も動きますよねと例え話を出して説明をしてしまいますね。
4.まとめ
東洋医学の概念は勉強してもなかなか理解できないことが多いですが、一度、理解をし始めると、応用することができるので、分からないところで諦めずに、継続して勉強を続けて欲しいですね。
経絡や経筋を使っていくと、部分ではなく全体へのアプローチしていくことができるので、ストレッチでも経絡・経筋を考えていくといいと思いますよ。経絡を使ったストレッチに関してはこちらのブログを参考にしてみてください。